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25話 真相 その3
しおりを挟むネプト様の言葉……それはまさしく、犯人捜しをしているようなものと言えた。少なくとも、私にはそう感じられたのだ。ニーナ以外に黒幕が居る……? いえ、そんなはずはないと思うけれど。
「ノーム伯爵……大変なことをしてしまいましたね」
「国王陛下……」
「えっ、お父様……!?」
「えっ……!?」
ネプト様の一呼吸置いてからの第一声は……お父様に向けられていた。おかしい……だって今は、ニーナを責めている状況のはずなのに。どうして、お父様に話が向かっているの?
ネプト様とお父様……それなりの沈黙が二人を包み込んでいた。
ニーナも意外な人物に矛先が向かったと判断したのか、素っ頓狂な声をあげているし……。
「寂れた教会の屋根は当時から老朽化が進んでいました。ですので、立ち入り禁止区域ではあったのです。そして、子供達の遊び場になっていた……この辺りの情報は当時からお持ちだったでしょう?」
「そうですね……スラム街の情勢は今よりも深刻でしたし。その話の流れでそういった危険な場所があることは認知していました」
「なるほど……では、情報収集をしている間に、あなたの娘であるアーチェ嬢が、お忍びで通っていることもご存知だったのではないですか?」
「それは……」
「お父様……?」
「父上……?」
あれ? お父様はさっき、私がお忍びで寂れた教会に行っていたことを知らない風だったけれど……実は知っていたの? まあ、確かにバレていても不思議ではないんだけれど。私の傍に立っているアクリーがお父様に伝えたとかは、十分に考えられるし。
でも、崩落事件とはどのように関係してくるのだろうか?
「ニーナ嬢」
「は、はい! ネプト国王陛下……!」
「君は先ほど、ジョンという人物を驚かせようとしたと言っていたな? 具体的にはどのように驚かせようとしたのだ?」
「それは……」
ニーナはとても答えにくそうだった。まあ、当然だろうけれど……話を聞く限り、彼女は罪を犯してしまっている。その暴露は相当にキツイだろう。
「屋根のほんの一部を崩して、ジョンを驚かせるつもりでした……それで、この場所は危険だと思わせようとしたのです」
「ほう、それで……?」
「そしたら……想定以上に崩落が起きてしまって……」
「なるほど……それで、ジョンという少年は巻き込まれてしまったということか。まあ、私本人なんだが」
「うっ……も、申し訳ございませんでした……! で、でも……ネプト国王陛下のお話では、元々、細工がされていた形跡があったと伺いましたが!?」
「そうだな……まあ、そんな話があったことも事実ではある。そして……」
「こ、国王陛下……」
嘘……? まさかお父様が細工を施した張本人だと言うの? いえ、直接的にはしていないとしても……命令を下した可能性がある……?
「現国王である私に対しての殺人未遂……ニーナ嬢」
「お、お待ちください、国王陛下……! 私は本当にジョンに対して怪我をさせたかったわけではなくて……! 驚かせようとしただけで……!」
「ほう、その理由についても詳しく話して貰えるか? 君の口から直接な」
「は、はい……」
ニーナは完全に固まってしまっていた。自分に掛かってくる罪の重さを想定して、耐えきれなくなっているのかもしれない。
「……」
「……」
……? ネプト様とお父様は目配せをしているような……どういうことだろう? さっきも多少の沈黙時間があったけれど。そんな時、フォルセが早口気味で口を開いた。
「ち、父上……! なぜこのようなことを……!?」
「フォルセ……?」
「落ち着くんだ、フォルセ。お前は将来、ノーム家の当主となる男なのだぞ?」
「これが落ち着いていられますか? 話を考えると……父上が屋根の細工をした本人ということになってしまう!」
フォルセの言葉は核心に迫っているようだった。私もそうなのではないか、と感じていたのだから。聡明な弟が気付かないはずはない。
「……」
ニーナは少し微笑んでいるようにも感じられる。自分の罪が軽減されると思っているのか……。
でも私としてはこの時、お父様とネプト様の二度に渡る目配せや沈黙が気になっていた。
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