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20話 ネプトとアーチェ その1
しおりを挟む「ネプト様……?」
「アーチェ、急に入って来て申し訳なかったな。君がジョンのことについて、そこまで悩んでいたのは……少し驚いた」
「……? は、はあ……?」
いきなり応接室に現れたネプト国王陛下……彼の言っている言葉の意味を私は理解出来ずにいた。ただ、あの寂れた教会での事件のことを知っている限り、もしかしたら、ネプト国王陛下もあの場所に来ていたのかもしれない。他の子供達も当時、あの教会は秘密基地として利用していたはずだから、不思議ではない。
「ど、どういうことでしょうか……? ネプト国王陛下が、あの事件のことを知っていらっしゃると……?」
流石のニーナもネプト国王陛下の出現には驚いているのか、まともに言葉が出ていないようだった。
「もう何年前になるのか……本当に懐かしいな。アーチェは私の顔を見ても思い出さないか?」
「えっ……どういうことでしょうか……?」
ネプト国王陛下にとっては失礼に当たるかもしれないけれど、意味を理解することは出来なかった。
「申し訳ございません……分かり兼ねます」
「いや、その点については気にしなくて良いが……そうか、あの時の変装は想像以上に上手くいっていたようだな」
「えっ……?」
どういうことだろう……? ネプト国王陛下はあの時のことを、詳細に知っているような気がする。どういう意味かしら……? 私はあの時、ジョン以外とはそれほど仲良くしていなかったと思うけれど。当時はお父様に内緒で向かっていたのだから余計に、そういうところは気を使っていたけれど……。
「あの時、寂れた教会の屋根が崩落してしまった……その時に、一人の少年が犠牲になった。アーチェ、君の記憶はそんなところではないかな?」
「は、はい……その通りですが……」
「ふむ、それで教会には近づけなくなったわけか。まあ、分からなくはない。当時は貴族間で訪れることすら禁忌とされていたからな……家族に迷惑を掛けたくないというのも、仕方ないことだろう」
ネプト国王陛下の言葉には言い返せるものがなかった……まさにその通りだったからだ。お父様やフォルセも、私の内情は分かっているのか、無言になっている。これは後で責められることになるかもしれないわね……。
「アーチェ、本当に分からないか? 私がなぜ、当時のことをここまで詳しく知っているのか。君にとってジョンという人物はどういう存在だったのだ?」
「ジョンですか……? それは……」
ネプト国王陛下の前で言うのは照れてしまうけれど……ジョンはもしかしたら、初恋の人物だったのかもしれない。だからこそ、お忍びで何度も会いに行っていたのだし。
「私にとっては大切な人物だったと思います。あくまでも当時の話ではありますが……」
ジョンは今はこの世には居ない……あくまでも当時は大切だった、ということしか言えなかった。でも、なぜネプト国王陛下はここまで言うのだろうか?
「そうか……それは、非常に嬉しい言葉だな」
「……ネプト様?」
どういうこと……えっ? そういえば見た目はジョンとネプト国王陛下は似ているような気がするけれど……まさか、そんなわけないわよね……。
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