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12話 本物と偽物
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「ニーナ……」
「アーチェ? どうしたんですか、顔が怖いですけど……」
ニーナは冷静沈着、といった表情で私を見ていた。何も焦る必要がないと言わんばかりに。彼女の考えが上手く読めない。
「ニーナ、正直に答えて欲しいのだけれど、ウォーレスが私に告白するように促した理由はなんだったの?」
「……」
私の質問にニーナは無言になる。その部分で無言になるのは止めて欲しかったけれど……ウォーレスに続いて、ニーナまで信用できなくなるのは、私としては気分が良くない。せっかくいままで、仲の良い幼馴染で通って来たと言うのに……。
「ニーナ、どうなの?」
「ウォーレスが言った通りですよ、アーチェ。彼は告白で私とアーチェ、二人を夫人として迎え入れたいと言っていたでしょう? つまりはそういうことです」
「意味は分かるけれど、そんな現実的でないことをニーナは了承していたと言うの?」
「……」
ニーナはまた無言になっている。彼女の真意が分からなかった。
ニーナは賢い女性だ……伯爵家同士で同格の地位なのに、ウォーレスが第一夫人、第二夫人を手に入れること自体矛盾しているのに。ニーナが本気でそんなことを望んでいるとは思えなかった。
「ネプト国王陛下の御前でもありますし、これ以上の内輪揉めは控えた方が良いと思います。アーチェ、この話はまた今度にしませんか……?」
「ニーナ……」
私は腑に落ちなかったけれど、確かにネプト様の御前でこれ以上の揉め事を披露するべきではなかった。その辺りはウォーレスやフォルセも分かっているのか、反論をする様子を見せていない。こうなれば、私が取れる行動は1つしかないわね。
「わかったわ、ニーナ。また、後日話をしましょう」
「ええ、アーチェ。その時はよろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
その後、ニーナとウォーレスの二人はネプト様に挨拶をし、そのまま私の元を離れていった。
「に、ニーナ……! アーチェを愛人にすれば良いと言ったのは君だろう? どうして誤魔化していたんだ?」
「ウォーレス、少し黙っていただけませんか? 今、その話を盛り返さないでください」
ウォーレスは去り際にそんなことを、ニーナに質問していた。聞かない方が良かったかもしれない……本当に、ニーナが何を考えているのか、分からなくなってしまったから。
「ニーナ嬢とウォーレス殿は去ったか……それにしても、良かったのか? アーチェ」
「今日のところはこのくらいで良いかと思います。パーティーの席で繰り広げることではないと思いますし……」
「ふむ、確かに他の貴族達にも聞こえてしまうしな。早めに切り上げたのは良かったかもしれん。それにしても、ニーナ嬢は食えない人物だな。本性を隠しているのは間違いないだろう。フォルセもそう感じないか?」
「はい、国王陛下。私も同意見でございます。アーチェ姉さま、今後はニーナ嬢には気を付けて頂いた方が良いかもしれません」
「そ、そうね……気を付けるわ」
ニーナを警戒する日がまさか来るとは思っていなかった。それは、ウォーレスにも言えることだけれど。少し前までは幼馴染の関係はずっと続いていくと思っていたのに。幼馴染なんていう言葉はただの上っ面の表現に過ぎないのだろうか?
「私はウォーレスとニーナの幼馴染でした。その関係が変わっていくんですね、こうも簡単に……」
「幼馴染というのは、言葉でしかないからな。何が起きるかは分からないものだ。その関係性が失われてしまうこともあるだろう」
「そうですよね……」
「しかし、私とアーチェも幼馴染という関係だろう?」
「ネプト国王陛下……はい、左様でございますね」
ネプト様は私を勇気づけてくれているようだ。私の肩に右腕を乗せてくれた。
「私はアーチェを裏切ったりはしないので、安心してほしい。不安であれば、ニーナ嬢との今後の話し合いの際にも同席しようじゃないか。こうして立ち会ったのも何かの縁だろうしな」
「ネプト様……!」
私はなんて返答して良いのか分からなくなっていた。その後の言葉も続かない……でも、これだけは言える。ネプト様との幼馴染の関係性は「本物」だと……。
そう考えると、ウォーレスとニーナは偽物の関係性だったのかもしれない。
「アーチェ? どうしたんですか、顔が怖いですけど……」
ニーナは冷静沈着、といった表情で私を見ていた。何も焦る必要がないと言わんばかりに。彼女の考えが上手く読めない。
「ニーナ、正直に答えて欲しいのだけれど、ウォーレスが私に告白するように促した理由はなんだったの?」
「……」
私の質問にニーナは無言になる。その部分で無言になるのは止めて欲しかったけれど……ウォーレスに続いて、ニーナまで信用できなくなるのは、私としては気分が良くない。せっかくいままで、仲の良い幼馴染で通って来たと言うのに……。
「ニーナ、どうなの?」
「ウォーレスが言った通りですよ、アーチェ。彼は告白で私とアーチェ、二人を夫人として迎え入れたいと言っていたでしょう? つまりはそういうことです」
「意味は分かるけれど、そんな現実的でないことをニーナは了承していたと言うの?」
「……」
ニーナはまた無言になっている。彼女の真意が分からなかった。
ニーナは賢い女性だ……伯爵家同士で同格の地位なのに、ウォーレスが第一夫人、第二夫人を手に入れること自体矛盾しているのに。ニーナが本気でそんなことを望んでいるとは思えなかった。
「ネプト国王陛下の御前でもありますし、これ以上の内輪揉めは控えた方が良いと思います。アーチェ、この話はまた今度にしませんか……?」
「ニーナ……」
私は腑に落ちなかったけれど、確かにネプト様の御前でこれ以上の揉め事を披露するべきではなかった。その辺りはウォーレスやフォルセも分かっているのか、反論をする様子を見せていない。こうなれば、私が取れる行動は1つしかないわね。
「わかったわ、ニーナ。また、後日話をしましょう」
「ええ、アーチェ。その時はよろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
その後、ニーナとウォーレスの二人はネプト様に挨拶をし、そのまま私の元を離れていった。
「に、ニーナ……! アーチェを愛人にすれば良いと言ったのは君だろう? どうして誤魔化していたんだ?」
「ウォーレス、少し黙っていただけませんか? 今、その話を盛り返さないでください」
ウォーレスは去り際にそんなことを、ニーナに質問していた。聞かない方が良かったかもしれない……本当に、ニーナが何を考えているのか、分からなくなってしまったから。
「ニーナ嬢とウォーレス殿は去ったか……それにしても、良かったのか? アーチェ」
「今日のところはこのくらいで良いかと思います。パーティーの席で繰り広げることではないと思いますし……」
「ふむ、確かに他の貴族達にも聞こえてしまうしな。早めに切り上げたのは良かったかもしれん。それにしても、ニーナ嬢は食えない人物だな。本性を隠しているのは間違いないだろう。フォルセもそう感じないか?」
「はい、国王陛下。私も同意見でございます。アーチェ姉さま、今後はニーナ嬢には気を付けて頂いた方が良いかもしれません」
「そ、そうね……気を付けるわ」
ニーナを警戒する日がまさか来るとは思っていなかった。それは、ウォーレスにも言えることだけれど。少し前までは幼馴染の関係はずっと続いていくと思っていたのに。幼馴染なんていう言葉はただの上っ面の表現に過ぎないのだろうか?
「私はウォーレスとニーナの幼馴染でした。その関係が変わっていくんですね、こうも簡単に……」
「幼馴染というのは、言葉でしかないからな。何が起きるかは分からないものだ。その関係性が失われてしまうこともあるだろう」
「そうですよね……」
「しかし、私とアーチェも幼馴染という関係だろう?」
「ネプト国王陛下……はい、左様でございますね」
ネプト様は私を勇気づけてくれているようだ。私の肩に右腕を乗せてくれた。
「私はアーチェを裏切ったりはしないので、安心してほしい。不安であれば、ニーナ嬢との今後の話し合いの際にも同席しようじゃないか。こうして立ち会ったのも何かの縁だろうしな」
「ネプト様……!」
私はなんて返答して良いのか分からなくなっていた。その後の言葉も続かない……でも、これだけは言える。ネプト様との幼馴染の関係性は「本物」だと……。
そう考えると、ウォーレスとニーナは偽物の関係性だったのかもしれない。
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