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9話 ウォーレスの告白 その1
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「ネプト国王陛下がまさか、これほど身近にお越しになられるなんて……本当に夢のようです。こんな日に巡り合えたことは、私の人生の中でも一番の幸運であると自負していますわ」
「ありがとう、ニーナ嬢。ただ、そういった世辞は不要だ」
「いえ、まさか……お世辞などではありませんわ……!」
「私は今日はニーナ嬢に会いに来たのではない。悪いがあまり話している時間はないのだ」
「国王陛下……」
ニーナとネプト様との会話は近いので筒抜けである。ニーナの方から一方的に話しているみたいだったけれど、ネプト様はあまり興味がないという風に、彼女を一蹴したようだ。ニーナもその態度には少し戸惑いを見せているようね。
ところで、私の問題はむしろこっち……ウォーレスにあるんだけれど。
ウォーレスはなんだか婚約解消の関係になっているのを、完全に忘れているかのような態度を取っていた。若しくはそのことをあんまり意識せずに私に話しかけているか。婚約解消の話を出しても、謝罪はするけれど、とても軽いノリなのは相変わらずだし。
「ウォーレス……私達は婚約解消をした間柄なのよ? それから間もない状態で話しているなんて、普通ならあり得ないでしょう?」
「だからそれについては謝っているじゃないか。非常に短絡的な行為だったと思っているよ。君が婚約解消をすると言ったとはいえ、いきなりそれに便乗してしまうなんて……ニーナからも怒られたよ」
ウォーレスは自分の意見を通すことに必死なのか、こちらとの意思疎通が上手く出来ていない気がする。それだけ内心では焦っているのかもしれないわね。
「ウォーレス……先ほどの戻って来ても良いんだ、という言葉は何を意味しているの? ニーナも承諾済みと言っていたけれど……」
「そのままの意味だよ、アーチェ」
そのままの意味……なにそれ? しかし、私が怪訝な表情になっているのを知ってか知らずか、ウォーレスは続ける。
「つまり、君が私のところに戻って来て大丈夫ということさ。再び、一緒になって、私とニーナ、それからアーチェの3人で仲良く暮らそうよ。私達3人だったら気が合う幼馴染なんだし、きっと上手く行くと思うんだ」
「はっ?」
ビックリする程に色気のない告白……いえ、色気がないとかそういう問題ではない。人としておかしい告白というか何というか……婚約解消したばかりの相手である、私に対して行うのもそうだけれど、パーティー会場内でしかも、国王陛下が近くに居る状態で決行出来る勇気は、ある意味で尊敬に値した……。
その話を聞いていたネプト様は頭を抱えていたけれど……それから、ニーナも驚いたような表情になっていた。
どうしようか……なんて返せば良いんだろ?
「ウォーレス殿……よろしいですか?」
「えっ、なにかな……? ええと、フォルセだよね?」
「はい」
ここにきて、フォルセがウォーレスに話しかけている。ここは彼に任せても大丈夫かな? とりあえず、様子を見てみることにした。
「ありがとう、ニーナ嬢。ただ、そういった世辞は不要だ」
「いえ、まさか……お世辞などではありませんわ……!」
「私は今日はニーナ嬢に会いに来たのではない。悪いがあまり話している時間はないのだ」
「国王陛下……」
ニーナとネプト様との会話は近いので筒抜けである。ニーナの方から一方的に話しているみたいだったけれど、ネプト様はあまり興味がないという風に、彼女を一蹴したようだ。ニーナもその態度には少し戸惑いを見せているようね。
ところで、私の問題はむしろこっち……ウォーレスにあるんだけれど。
ウォーレスはなんだか婚約解消の関係になっているのを、完全に忘れているかのような態度を取っていた。若しくはそのことをあんまり意識せずに私に話しかけているか。婚約解消の話を出しても、謝罪はするけれど、とても軽いノリなのは相変わらずだし。
「ウォーレス……私達は婚約解消をした間柄なのよ? それから間もない状態で話しているなんて、普通ならあり得ないでしょう?」
「だからそれについては謝っているじゃないか。非常に短絡的な行為だったと思っているよ。君が婚約解消をすると言ったとはいえ、いきなりそれに便乗してしまうなんて……ニーナからも怒られたよ」
ウォーレスは自分の意見を通すことに必死なのか、こちらとの意思疎通が上手く出来ていない気がする。それだけ内心では焦っているのかもしれないわね。
「ウォーレス……先ほどの戻って来ても良いんだ、という言葉は何を意味しているの? ニーナも承諾済みと言っていたけれど……」
「そのままの意味だよ、アーチェ」
そのままの意味……なにそれ? しかし、私が怪訝な表情になっているのを知ってか知らずか、ウォーレスは続ける。
「つまり、君が私のところに戻って来て大丈夫ということさ。再び、一緒になって、私とニーナ、それからアーチェの3人で仲良く暮らそうよ。私達3人だったら気が合う幼馴染なんだし、きっと上手く行くと思うんだ」
「はっ?」
ビックリする程に色気のない告白……いえ、色気がないとかそういう問題ではない。人としておかしい告白というか何というか……婚約解消したばかりの相手である、私に対して行うのもそうだけれど、パーティー会場内でしかも、国王陛下が近くに居る状態で決行出来る勇気は、ある意味で尊敬に値した……。
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どうしようか……なんて返せば良いんだろ?
「ウォーレス殿……よろしいですか?」
「えっ、なにかな……? ええと、フォルセだよね?」
「はい」
ここにきて、フォルセがウォーレスに話しかけている。ここは彼に任せても大丈夫かな? とりあえず、様子を見てみることにした。
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