幼馴染がそんなに良いなら、婚約解消いたしましょうか?

ルイス

文字の大きさ
上 下
9 / 60

9話 ウォーレスの告白 その1

しおりを挟む
「ネプト国王陛下がまさか、これほど身近にお越しになられるなんて……本当に夢のようです。こんな日に巡り合えたことは、私の人生の中でも一番の幸運であると自負していますわ」

「ありがとう、ニーナ嬢。ただ、そういった世辞は不要だ」

「いえ、まさか……お世辞などではありませんわ……!」

「私は今日はニーナ嬢に会いに来たのではない。悪いがあまり話している時間はないのだ」

「国王陛下……」


 ニーナとネプト様との会話は近いので筒抜けである。ニーナの方から一方的に話しているみたいだったけれど、ネプト様はあまり興味がないという風に、彼女を一蹴したようだ。ニーナもその態度には少し戸惑いを見せているようね。

 ところで、私の問題はむしろこっち……ウォーレスにあるんだけれど。

 ウォーレスはなんだか婚約解消の関係になっているのを、完全に忘れているかのような態度を取っていた。若しくはそのことをあんまり意識せずに私に話しかけているか。婚約解消の話を出しても、謝罪はするけれど、とても軽いノリなのは相変わらずだし。


「ウォーレス……私達は婚約解消をした間柄なのよ? それから間もない状態で話しているなんて、普通ならあり得ないでしょう?」

「だからそれについては謝っているじゃないか。非常に短絡的な行為だったと思っているよ。君が婚約解消をすると言ったとはいえ、いきなりそれに便乗してしまうなんて……ニーナからも怒られたよ」


 ウォーレスは自分の意見を通すことに必死なのか、こちらとの意思疎通が上手く出来ていない気がする。それだけ内心では焦っているのかもしれないわね。


「ウォーレス……先ほどの戻って来ても良いんだ、という言葉は何を意味しているの? ニーナも承諾済みと言っていたけれど……」

「そのままの意味だよ、アーチェ」


 そのままの意味……なにそれ? しかし、私が怪訝な表情になっているのを知ってか知らずか、ウォーレスは続ける。


「つまり、君が私のところに戻って来て大丈夫ということさ。再び、一緒になって、私とニーナ、それからアーチェの3人で仲良く暮らそうよ。私達3人だったら気が合う幼馴染なんだし、きっと上手く行くと思うんだ」

「はっ?」

 ビックリする程に色気のない告白……いえ、色気がないとかそういう問題ではない。人としておかしい告白というか何というか……婚約解消したばかりの相手である、私に対して行うのもそうだけれど、パーティー会場内でしかも、国王陛下が近くに居る状態で決行出来る勇気は、ある意味で尊敬に値した……。

 その話を聞いていたネプト様は頭を抱えていたけれど……それから、ニーナも驚いたような表情になっていた。

 どうしようか……なんて返せば良いんだろ?

「ウォーレス殿……よろしいですか?」

「えっ、なにかな……? ええと、フォルセだよね?」

「はい」


 ここにきて、フォルセがウォーレスに話しかけている。ここは彼に任せても大丈夫かな? とりあえず、様子を見てみることにした。
しおりを挟む
感想 480

あなたにおすすめの小説

幼馴染だけを優先するなら、婚約者はもう不要なのですね

新野乃花(大舟)
恋愛
アリシアと婚約関係を結んでいたグレイ男爵は、自身の幼馴染であるミラの事を常に優先していた。ある日、グレイは感情のままにアリシアにこう言ってしまう。「出て行ってくれないか」と。アリシアはそのままグレイの前から姿を消し、婚約関係は破棄されることとなってしまった。グレイとミラはその事を大いに喜んでいたが、アリシアがいなくなったことによる弊害を、二人は後に思い知ることとなり…。

公爵様は幼馴染に夢中のようですので別れましょう

カミツドリ
恋愛
伯爵令嬢のレミーラは公爵閣下と婚約をしていた。 しかし、公爵閣下は幼馴染に夢中になっている……。 レミーラが注意をしても、公爵は幼馴染との関係性を見直す気はないようだ。 それならば婚約解消をしましょうと、レミーラは公爵閣下と別れることにする。 しかし、女々しい公爵はレミーラに縋りよって来る。 レミーラは王子殿下との新たな恋に忙しいので、邪魔しないでもらえますか? と元婚約者を冷たく突き放すのだった。覆水盆に返らず、ここに極まれり……。

代わりはいると言われた私は出て行くと、代わりはいなかったようです

天宮有
恋愛
調合魔法を扱う私エミリーのポーションは有名で、アシェル王子との婚約が決まるほどだった。 その後、聖女キアラを婚約者にしたかったアシェルは、私に「代わりはいる」と婚約破棄を言い渡す。 元婚約者と家族が嫌になった私は、家を出ることを決意する。 代わりはいるのなら問題ないと考えていたけど、代わりはいなかったようです。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

処理中です...