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5話 ネプト国王陛下 その3
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(ウォーレス視点)
「ウォーレス……アーチェと婚約解消をするなんて、私を選んでくれたことには感謝しますが……」
「ニーナ、婚約解消はアーチェから言い出したことなんだよ? 仕方ないじゃないか」
「それはそうかもしれませんが……アーチェが可哀想です」
私とニーナは舞踏会に出席していた。アールズ宮殿で行われている催し物で、比較的、規模は大きい。今来たばかりだけれど、何やら会場内が騒がしいな。
「アーチェはきっと、まだウォーレスのことが好きなんだと思います。その気持ちを踏みにじって、婚約解消をしてしまうなんて……本当に良かったんですか?」
「ニーナ……でも、私はニーナと一緒になりたかったんだ。アーチェよりも君を大切にしようと思った」
「その気持ちはとても嬉しいです」
ニーナはお淑やかな雰囲気を漂わせていた。彼女は私の理想的な女性と言えるだろう……ニーナとであれば、幸せな家庭を築けることは間違いない。しかし……幼馴染のアーチェと婚約解消してしまったのは、確かに早まった行動だったかもしれない。アーチェはとても悲しそうにしていたし……きっと、私のことを忘れられずに、今でも泣いているのだろう。
「アーチェのことは確かに申し訳なかったな。ニーナに責められても止む無しと言える。彼女の私への愛情を踏みにじってしまったのだから」
「そうですね……ただ、解決策がないわけではありませんよ?」
「ぬ? ニーナそれはどういう意味だ?」
ニーナには何やら考えがあるようだ。彼女は聡明なことでも有名だからな、参考になるかもしれない。
「簡単ですよ、ウォーレス。アーチェとの関係を元に戻せば良いだけです」
「な、何だと……!?」
お淑やかなニーナからは、想像しにくい言葉が飛び込んで来た。アーチェとの仲を戻す、だと? しかし、それは……。舞踏会会場内で行う会話ではないことは確かだ。現在は騒がしくなっているので、周囲の者達には聞かれていないようだが。
「待ってくれ、ニーナ。アーチェとの関係を戻すというのは……婚約関係に戻る、ということを意味するのだぞ?」
「あら、私は構いませんよ。ウォーレスと私、アーチェは幼馴染ではありませんか。あなたの第一夫人を私にして、アーチェを第二夫人……若しくは愛人とすればよろしいのでは?」
「な、なるほど……ニーナがそれを許してくれるのであれば、成立はするか」
「はい」
ニーナからの提案だ。まさか、後になってやっぱり嫌だということにはならないだろう。そうか……ニーナだけでなく、アーチェも手中に収められたら、こんなに楽しいことはない。二人とも違う性格をしているし美人だし。色々と楽しい人生を送れそうだ。
辛いときでも3人、力を合わせて乗り越えて行けばいい。しかし、問題がないわけではない。
「しかし……私はアーチェに酷いことを言ってしまったんだ。それを彼女が許してくれるかどうか……」
「それはきちんと謝罪すれば大丈夫ですよ。アーチェとあなたは相思相愛、その関係は今でも変わらないはずです。現在の彼女の悲しみを癒してあげられるのは、きっとあなたしか居ませんよ? 過去の過ちよりも前に突き進む勇気を持ってください。私の愛したウォーレスという人間はそういうお方だと信じています」
「ニーナ……ありがとう。必ず、アーチェのことを幸せにしてみせるよ」
「はい、その心意気です」
ここまでニーナが言ってくれるなんて……私は本当に恵まれている。アーチェはきっと、私のことを忘れられずにいるはずなのだ。なぜ、そのことに気付けなかったんだろうか。まったく、私としたことが……。
この舞踏会にアーチェは来ていないのだろうか……? 周囲を散策したところ、貴族達に紛れて国王陛下らしき人物が居るのが見えた。なるほど……これはすごいサプライズだ。騒がしかったのはそういうことか。
「……?」
そんな時、ニーナが少し怪しく笑っているように見えたが……視線を合わせるとそれは消えていた。気のせいだったか?
「ウォーレス……アーチェと婚約解消をするなんて、私を選んでくれたことには感謝しますが……」
「ニーナ、婚約解消はアーチェから言い出したことなんだよ? 仕方ないじゃないか」
「それはそうかもしれませんが……アーチェが可哀想です」
私とニーナは舞踏会に出席していた。アールズ宮殿で行われている催し物で、比較的、規模は大きい。今来たばかりだけれど、何やら会場内が騒がしいな。
「アーチェはきっと、まだウォーレスのことが好きなんだと思います。その気持ちを踏みにじって、婚約解消をしてしまうなんて……本当に良かったんですか?」
「ニーナ……でも、私はニーナと一緒になりたかったんだ。アーチェよりも君を大切にしようと思った」
「その気持ちはとても嬉しいです」
ニーナはお淑やかな雰囲気を漂わせていた。彼女は私の理想的な女性と言えるだろう……ニーナとであれば、幸せな家庭を築けることは間違いない。しかし……幼馴染のアーチェと婚約解消してしまったのは、確かに早まった行動だったかもしれない。アーチェはとても悲しそうにしていたし……きっと、私のことを忘れられずに、今でも泣いているのだろう。
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「そうですね……ただ、解決策がないわけではありませんよ?」
「ぬ? ニーナそれはどういう意味だ?」
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「な、何だと……!?」
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「待ってくれ、ニーナ。アーチェとの関係を戻すというのは……婚約関係に戻る、ということを意味するのだぞ?」
「あら、私は構いませんよ。ウォーレスと私、アーチェは幼馴染ではありませんか。あなたの第一夫人を私にして、アーチェを第二夫人……若しくは愛人とすればよろしいのでは?」
「な、なるほど……ニーナがそれを許してくれるのであれば、成立はするか」
「はい」
ニーナからの提案だ。まさか、後になってやっぱり嫌だということにはならないだろう。そうか……ニーナだけでなく、アーチェも手中に収められたら、こんなに楽しいことはない。二人とも違う性格をしているし美人だし。色々と楽しい人生を送れそうだ。
辛いときでも3人、力を合わせて乗り越えて行けばいい。しかし、問題がないわけではない。
「しかし……私はアーチェに酷いことを言ってしまったんだ。それを彼女が許してくれるかどうか……」
「それはきちんと謝罪すれば大丈夫ですよ。アーチェとあなたは相思相愛、その関係は今でも変わらないはずです。現在の彼女の悲しみを癒してあげられるのは、きっとあなたしか居ませんよ? 過去の過ちよりも前に突き進む勇気を持ってください。私の愛したウォーレスという人間はそういうお方だと信じています」
「ニーナ……ありがとう。必ず、アーチェのことを幸せにしてみせるよ」
「はい、その心意気です」
ここまでニーナが言ってくれるなんて……私は本当に恵まれている。アーチェはきっと、私のことを忘れられずにいるはずなのだ。なぜ、そのことに気付けなかったんだろうか。まったく、私としたことが……。
この舞踏会にアーチェは来ていないのだろうか……? 周囲を散策したところ、貴族達に紛れて国王陛下らしき人物が居るのが見えた。なるほど……これはすごいサプライズだ。騒がしかったのはそういうことか。
「……?」
そんな時、ニーナが少し怪しく笑っているように見えたが……視線を合わせるとそれは消えていた。気のせいだったか?
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