5 / 60
5話 ネプト国王陛下 その3
しおりを挟む
(ウォーレス視点)
「ウォーレス……アーチェと婚約解消をするなんて、私を選んでくれたことには感謝しますが……」
「ニーナ、婚約解消はアーチェから言い出したことなんだよ? 仕方ないじゃないか」
「それはそうかもしれませんが……アーチェが可哀想です」
私とニーナは舞踏会に出席していた。アールズ宮殿で行われている催し物で、比較的、規模は大きい。今来たばかりだけれど、何やら会場内が騒がしいな。
「アーチェはきっと、まだウォーレスのことが好きなんだと思います。その気持ちを踏みにじって、婚約解消をしてしまうなんて……本当に良かったんですか?」
「ニーナ……でも、私はニーナと一緒になりたかったんだ。アーチェよりも君を大切にしようと思った」
「その気持ちはとても嬉しいです」
ニーナはお淑やかな雰囲気を漂わせていた。彼女は私の理想的な女性と言えるだろう……ニーナとであれば、幸せな家庭を築けることは間違いない。しかし……幼馴染のアーチェと婚約解消してしまったのは、確かに早まった行動だったかもしれない。アーチェはとても悲しそうにしていたし……きっと、私のことを忘れられずに、今でも泣いているのだろう。
「アーチェのことは確かに申し訳なかったな。ニーナに責められても止む無しと言える。彼女の私への愛情を踏みにじってしまったのだから」
「そうですね……ただ、解決策がないわけではありませんよ?」
「ぬ? ニーナそれはどういう意味だ?」
ニーナには何やら考えがあるようだ。彼女は聡明なことでも有名だからな、参考になるかもしれない。
「簡単ですよ、ウォーレス。アーチェとの関係を元に戻せば良いだけです」
「な、何だと……!?」
お淑やかなニーナからは、想像しにくい言葉が飛び込んで来た。アーチェとの仲を戻す、だと? しかし、それは……。舞踏会会場内で行う会話ではないことは確かだ。現在は騒がしくなっているので、周囲の者達には聞かれていないようだが。
「待ってくれ、ニーナ。アーチェとの関係を戻すというのは……婚約関係に戻る、ということを意味するのだぞ?」
「あら、私は構いませんよ。ウォーレスと私、アーチェは幼馴染ではありませんか。あなたの第一夫人を私にして、アーチェを第二夫人……若しくは愛人とすればよろしいのでは?」
「な、なるほど……ニーナがそれを許してくれるのであれば、成立はするか」
「はい」
ニーナからの提案だ。まさか、後になってやっぱり嫌だということにはならないだろう。そうか……ニーナだけでなく、アーチェも手中に収められたら、こんなに楽しいことはない。二人とも違う性格をしているし美人だし。色々と楽しい人生を送れそうだ。
辛いときでも3人、力を合わせて乗り越えて行けばいい。しかし、問題がないわけではない。
「しかし……私はアーチェに酷いことを言ってしまったんだ。それを彼女が許してくれるかどうか……」
「それはきちんと謝罪すれば大丈夫ですよ。アーチェとあなたは相思相愛、その関係は今でも変わらないはずです。現在の彼女の悲しみを癒してあげられるのは、きっとあなたしか居ませんよ? 過去の過ちよりも前に突き進む勇気を持ってください。私の愛したウォーレスという人間はそういうお方だと信じています」
「ニーナ……ありがとう。必ず、アーチェのことを幸せにしてみせるよ」
「はい、その心意気です」
ここまでニーナが言ってくれるなんて……私は本当に恵まれている。アーチェはきっと、私のことを忘れられずにいるはずなのだ。なぜ、そのことに気付けなかったんだろうか。まったく、私としたことが……。
この舞踏会にアーチェは来ていないのだろうか……? 周囲を散策したところ、貴族達に紛れて国王陛下らしき人物が居るのが見えた。なるほど……これはすごいサプライズだ。騒がしかったのはそういうことか。
「……?」
そんな時、ニーナが少し怪しく笑っているように見えたが……視線を合わせるとそれは消えていた。気のせいだったか?
「ウォーレス……アーチェと婚約解消をするなんて、私を選んでくれたことには感謝しますが……」
「ニーナ、婚約解消はアーチェから言い出したことなんだよ? 仕方ないじゃないか」
「それはそうかもしれませんが……アーチェが可哀想です」
私とニーナは舞踏会に出席していた。アールズ宮殿で行われている催し物で、比較的、規模は大きい。今来たばかりだけれど、何やら会場内が騒がしいな。
「アーチェはきっと、まだウォーレスのことが好きなんだと思います。その気持ちを踏みにじって、婚約解消をしてしまうなんて……本当に良かったんですか?」
「ニーナ……でも、私はニーナと一緒になりたかったんだ。アーチェよりも君を大切にしようと思った」
「その気持ちはとても嬉しいです」
ニーナはお淑やかな雰囲気を漂わせていた。彼女は私の理想的な女性と言えるだろう……ニーナとであれば、幸せな家庭を築けることは間違いない。しかし……幼馴染のアーチェと婚約解消してしまったのは、確かに早まった行動だったかもしれない。アーチェはとても悲しそうにしていたし……きっと、私のことを忘れられずに、今でも泣いているのだろう。
「アーチェのことは確かに申し訳なかったな。ニーナに責められても止む無しと言える。彼女の私への愛情を踏みにじってしまったのだから」
「そうですね……ただ、解決策がないわけではありませんよ?」
「ぬ? ニーナそれはどういう意味だ?」
ニーナには何やら考えがあるようだ。彼女は聡明なことでも有名だからな、参考になるかもしれない。
「簡単ですよ、ウォーレス。アーチェとの関係を元に戻せば良いだけです」
「な、何だと……!?」
お淑やかなニーナからは、想像しにくい言葉が飛び込んで来た。アーチェとの仲を戻す、だと? しかし、それは……。舞踏会会場内で行う会話ではないことは確かだ。現在は騒がしくなっているので、周囲の者達には聞かれていないようだが。
「待ってくれ、ニーナ。アーチェとの関係を戻すというのは……婚約関係に戻る、ということを意味するのだぞ?」
「あら、私は構いませんよ。ウォーレスと私、アーチェは幼馴染ではありませんか。あなたの第一夫人を私にして、アーチェを第二夫人……若しくは愛人とすればよろしいのでは?」
「な、なるほど……ニーナがそれを許してくれるのであれば、成立はするか」
「はい」
ニーナからの提案だ。まさか、後になってやっぱり嫌だということにはならないだろう。そうか……ニーナだけでなく、アーチェも手中に収められたら、こんなに楽しいことはない。二人とも違う性格をしているし美人だし。色々と楽しい人生を送れそうだ。
辛いときでも3人、力を合わせて乗り越えて行けばいい。しかし、問題がないわけではない。
「しかし……私はアーチェに酷いことを言ってしまったんだ。それを彼女が許してくれるかどうか……」
「それはきちんと謝罪すれば大丈夫ですよ。アーチェとあなたは相思相愛、その関係は今でも変わらないはずです。現在の彼女の悲しみを癒してあげられるのは、きっとあなたしか居ませんよ? 過去の過ちよりも前に突き進む勇気を持ってください。私の愛したウォーレスという人間はそういうお方だと信じています」
「ニーナ……ありがとう。必ず、アーチェのことを幸せにしてみせるよ」
「はい、その心意気です」
ここまでニーナが言ってくれるなんて……私は本当に恵まれている。アーチェはきっと、私のことを忘れられずにいるはずなのだ。なぜ、そのことに気付けなかったんだろうか。まったく、私としたことが……。
この舞踏会にアーチェは来ていないのだろうか……? 周囲を散策したところ、貴族達に紛れて国王陛下らしき人物が居るのが見えた。なるほど……これはすごいサプライズだ。騒がしかったのはそういうことか。
「……?」
そんな時、ニーナが少し怪しく笑っているように見えたが……視線を合わせるとそれは消えていた。気のせいだったか?
85
お気に入りに追加
3,625
あなたにおすすめの小説

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい
高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。
だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。
クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。
ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。
【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

婚約破棄されたので、隠していた力を解放します
ミィタソ
恋愛
「――よって、私は君との婚約を破棄する」
豪華なシャンデリアが輝く舞踏会の会場。その中心で、王太子アレクシスが高らかに宣言した。
周囲の貴族たちは一斉にどよめき、私の顔を覗き込んでくる。興味津々な顔、驚きを隠せない顔、そして――あからさまに嘲笑する顔。
私は、この状況をただ静かに見つめていた。
「……そうですか」
あまりにも予想通りすぎて、拍子抜けするくらいだ。
婚約破棄、大いに結構。
慰謝料でも請求してやりますか。
私には隠された力がある。
これからは自由に生きるとしよう。

願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
あなたが選んだのは私ではありませんでした 裏切られた私、ひっそり姿を消します
矢野りと
恋愛
旧題:贖罪〜あなたが選んだのは私ではありませんでした〜
言葉にして結婚を約束していたわけではないけれど、そうなると思っていた。
お互いに気持ちは同じだと信じていたから。
それなのに恋人は別れの言葉を私に告げてくる。
『すまない、別れて欲しい。これからは俺がサーシャを守っていこうと思っているんだ…』
サーシャとは、彼の亡くなった同僚騎士の婚約者だった人。
愛している人から捨てられる形となった私は、誰にも告げずに彼らの前から姿を消すことを選んだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる