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4話 ネプト国王陛下 その2
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こんなことが現実に起こるなんて……私とフォルセのところに駆けつけてくれる国王陛下の構図だった。いくら幼馴染、昔馴染みの関係とはいえ……あまりに身分が違い過ぎる。
現に周りの貴族達も不思議そうな表情をしていた。一介の伯爵令嬢の元に国家の最高権力者が赴いたのだから、当然と言えるだろうけれど……。
「やあ、アーチェにフォルセ。久しぶりだね」
この上ない程に気さくな挨拶をしてくれる国王陛下……私としては、どういうテンションでお迎えしていいのか分かり兼ねていた。
「ね、ネプト・マクスレイ国王陛下……ご無沙汰しております。国王陛下が本日もお元気のようで安心いたしました」
「姉と同じ思いでございます、国王陛下……ご無沙汰しております」
「ははは、二人とも相変わらずなようだな。まあ、そういう態度を見れて安心ではあるが」
ネプト様は気さくに笑い出していた。その表情を見ると、私も安心してしまう……以前の彼を思い出すからだ。あの時はまだ、王太子殿下にもなっていなかったと思うけれど。時が経つのは早いものね……。
「しかし、アーチェ。私のことはネプトと呼び捨てにしてくれても構わないぞ? 昔はそうしていたじゃないか」
「い、いえ……それはそうかもしれませんが、あの時と今では色々と違いますので……!」
「ははは、そういう風に立場を重んじる雰囲気は変わっていないな、アーチェ。安心したよ」
「い、いえ……というより、私のことをからかっているのですか?」
あ、しまった……ついつい、本音が出てしまったと言うか。以前の話し方に近づいてしまっていた。ネプト様は昔から、私をからかう傾向にあったから。もちろん、それが嫌というわけではなくむしろ光栄ではあったけれど。
「からかってはいないさ。久しぶりにこういう会話が出来ることを楽しんでいるんだ。アーチェ、本日の舞踏会に参加してくれて心からお礼を言うよ」
「あ、いえそんな……とんでもないことでございます……」
昔馴染みでウォーレス達と同様に知っている間柄とはいえ……国王陛下にまで昇りつめたお方を前にすると、思うように言葉がでてこない。以前のような態度で接するのは絶対に駄目だろうし……難しいところね。
「ネプト国王陛下、弟のフォルセと事前に連絡を取っていたようでございますが……どういう理由で取っていたのでしょうか?」
「ああ……国王をしていると、どうしても臣下の情報が入ってくるのでな……アーチェの婚約解消の情報も入って来たというわけだ」
「な、なるほど……そういうことでしたか……」
「それでフォルセに連絡を取って、今回のサプライズを計画したというわけさ」
「そ、それはとても嬉しいのですが……」
つまりは、ネプト国王陛下は私に会う為にこの舞踏会への出席をしたということになる。嬉しいけれど、こんなに特別扱いを受けて良いのだろうか……。伯爵令嬢という立場は決して低いものではないけれど、この舞踏会にはもっと立場が上の人も来ているのに。
まあ、その辺りは昔馴染みということで説明できるのかもしれないわね。と、私が納得しかけていた時、場の雰囲気が明らかに変わった。正確には、ネプト国王陛下と弟のフォルセの雰囲気が変わったということなんだけれど。
「来るかとは考えていたが……やはり来たか」
「アーチェ姉さま、あまり動揺しないようにお願いいたします。陛下の御前ですので……」
ネプト国王陛下とフォルセの視線の先には……ウォーレス・ミリエーターとニーナ・オルスタインの姿があった。彼らもこの舞踏会に参加していたのね……私は自然と身体を緊張させていた。
現に周りの貴族達も不思議そうな表情をしていた。一介の伯爵令嬢の元に国家の最高権力者が赴いたのだから、当然と言えるだろうけれど……。
「やあ、アーチェにフォルセ。久しぶりだね」
この上ない程に気さくな挨拶をしてくれる国王陛下……私としては、どういうテンションでお迎えしていいのか分かり兼ねていた。
「ね、ネプト・マクスレイ国王陛下……ご無沙汰しております。国王陛下が本日もお元気のようで安心いたしました」
「姉と同じ思いでございます、国王陛下……ご無沙汰しております」
「ははは、二人とも相変わらずなようだな。まあ、そういう態度を見れて安心ではあるが」
ネプト様は気さくに笑い出していた。その表情を見ると、私も安心してしまう……以前の彼を思い出すからだ。あの時はまだ、王太子殿下にもなっていなかったと思うけれど。時が経つのは早いものね……。
「しかし、アーチェ。私のことはネプトと呼び捨てにしてくれても構わないぞ? 昔はそうしていたじゃないか」
「い、いえ……それはそうかもしれませんが、あの時と今では色々と違いますので……!」
「ははは、そういう風に立場を重んじる雰囲気は変わっていないな、アーチェ。安心したよ」
「い、いえ……というより、私のことをからかっているのですか?」
あ、しまった……ついつい、本音が出てしまったと言うか。以前の話し方に近づいてしまっていた。ネプト様は昔から、私をからかう傾向にあったから。もちろん、それが嫌というわけではなくむしろ光栄ではあったけれど。
「からかってはいないさ。久しぶりにこういう会話が出来ることを楽しんでいるんだ。アーチェ、本日の舞踏会に参加してくれて心からお礼を言うよ」
「あ、いえそんな……とんでもないことでございます……」
昔馴染みでウォーレス達と同様に知っている間柄とはいえ……国王陛下にまで昇りつめたお方を前にすると、思うように言葉がでてこない。以前のような態度で接するのは絶対に駄目だろうし……難しいところね。
「ネプト国王陛下、弟のフォルセと事前に連絡を取っていたようでございますが……どういう理由で取っていたのでしょうか?」
「ああ……国王をしていると、どうしても臣下の情報が入ってくるのでな……アーチェの婚約解消の情報も入って来たというわけだ」
「な、なるほど……そういうことでしたか……」
「それでフォルセに連絡を取って、今回のサプライズを計画したというわけさ」
「そ、それはとても嬉しいのですが……」
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まあ、その辺りは昔馴染みということで説明できるのかもしれないわね。と、私が納得しかけていた時、場の雰囲気が明らかに変わった。正確には、ネプト国王陛下と弟のフォルセの雰囲気が変わったということなんだけれど。
「来るかとは考えていたが……やはり来たか」
「アーチェ姉さま、あまり動揺しないようにお願いいたします。陛下の御前ですので……」
ネプト国王陛下とフォルセの視線の先には……ウォーレス・ミリエーターとニーナ・オルスタインの姿があった。彼らもこの舞踏会に参加していたのね……私は自然と身体を緊張させていた。
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