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5話 アグリットとの再会 その2
しおりを挟む「あ、アグリット様……? ど、どうしてここに……?」
「いや、このパーティーへの参加は偶然というか、王太子殿下の主催のものだからな。ささやかなパーティーと聞いていたけど、経験になるかもしれないと参加したんだよ」
「そ、そうだったのですね……」
私とアグリット様はお互いに気まずい雰囲気を醸し出していた。それもそのはず……目の前には婚約破棄をした人物が立っているのだから。確か幼馴染のレンナ様とは上手く婚約出来たと聞いているけれど、レンナ様はいらっしゃらないみたいね。
それが個人的には不思議だった。
「あの、アグリット様……レンナ様はご一緒ではないのですか?」
「ああ、レンナとは今日は一緒ではない。このパーティー自体は私が個人的に参加したものだからな」
「そうなのですね……王太子殿下への挨拶を含めて、ということですか?」
「そういうことになるかな」
アグリット様は侯爵令息になる。イヴァン・オーディルス王太子殿下とのパイプラインの形成は、アグリット様の家にとっても重要だろうしね。まあ、私の伯爵家もパイプラインの形成は重要なのだけれど……お父様が居ないし、令嬢でしかない私が行ってもどうかと思うので、ダリオ様には付いて行かなかったわけだ。
「しかし……まさか、このささやかなパーティーの場で、君に会うとは思わなかったな」
「私もアグリット様にお会いするとは思わなかったです」
あの時のことを思い出すので会いたくはなかった、とは流石に言えなかった。
「一人かい、アーシェラ?」
「いえ、違うのですが……」
「あ、そうなのか……」
アグリット様はなんだか、とても残念そうな表情になっている。私はどのように返せば良かったのだろうか。
「ただ……今は一人ですね」
「そのようだね」
しばらくの沈黙が流れた……私の付き人は近くに居るけれど、貴族令息や令嬢は付き人や護衛は数に含めない。
「……」
アグリット様は私を真っすぐに見据えている。何か言いたそうだけれど……。
「アーシェラ……急にこんなことを言うのが、失礼なことは重々承知しているが、私と再び婚約をしてもらえないだろうか?」
「えっ……? 婚約……?」
私は何が起きたのか理解出来なかった。ええと、アグリット様はなんと言ったんだっけ?
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