婚約破棄されたのに、元婚約者が溺愛してきます!

ルイス

文字の大きさ
上 下
3 / 5

3話 アグリットの想い

しおりを挟む
(アグリット視点)


「ねえ、アグリット。今日はどこへ行きましょうか?」

「あ、ああ……そうだね、どこへ行こうか……」


 アーシェラとの婚約破棄からしばらくの時間が経過していた。私とレンナの二人は無事に婚約を締結することが出来た。アーシェラへの慰謝料の支払いも完了し……全ては順調だった。

 そう、順調だったはずなのだ……。


「アグリット、顔色が良くないように思えるわ? 本当に大丈夫? 今日は出掛けるのは止めにしましょうか?」

「そ、そうだな……済まない、レンナ。体調が少し悪いようだ……可能であればそうしていただけないだろうか」

「わかったわ」

「ありがとう、レンナ」

「いいのよ、アグリット。気にしないで」


 レンナは私に気遣いをしてくれる。幼馴染ということもあり、お互いの性格なども熟知している。周囲から見れば、理想的な婚約と言えるのかもしれない。

 しかし、私の中でのわだかまりは大きくなっていくばかりだった。それは……アーシェラへの想いだ。私はレンナという女性と一緒になる為に、彼女とは婚約破棄をしたのに……こんな想いを持つことなど、許されるはずはない。

 だが、生まれてくる想いというのは止めることが出来なかった。

「レンナ……」

「アグリット?」


 私はアーシェラのことを愛している。いや、彼女をより愛しているといった方が正しいだろうか。アーシェラとしばらく離れて、そのことに気付いた。レンナよりもアーシェラに対する想いの方が確実に強いのだ。彼女に別れを切り出した時とは真逆のことを言っており、ハッキリ言って矛盾しているのだが……。


「アグリット、今日は失礼させてもらうわ。また、お出かけしましょうね」

「ああ……レンナ、ありがとう」


 レンナの笑顔が眩しい……本来であれば、このまま彼女との恋を成就させるのが正しいと言えるだろう。しかし……ここで動かなければ、私は一生後悔するような気がしてしまっていた。

 アーシェラ……本当に勝手な言い分だが、私のところへ戻って来て欲しい……そのように彼女に伝える。レンナとは別れることになるだろう……最低なことをしているが、今度こそ決して間違えないように。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。

当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。 しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。 最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。 それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。 婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。 だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。 これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った

五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」 8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

処理中です...