1 / 5
1話 侯爵令息の婚約破棄
しおりを挟む私の名前はオーディルス王国の伯爵令嬢アーシェラ・スミット、18歳だ。スミット伯爵家の次女に当たる。
そんな私にも婚約者が18歳にして婚約者が出来た。侯爵令息のアグリット・バーンセル様である。
アグリット様との幸せな道を歩めるかと思っていた矢先、彼から突然の告知を受けてしまった。
「アーシェラ、私は幼馴染のレンナ・クロド侯爵令嬢と結婚してしたいと考えている。済まないが、私と別れては貰えないだろうか?」
「アグリット様……冗談ですよね?」
「済まない……冗談ではないのだ」
「そんな……」
あの誠実なアグリット様がこんなことを言うなんて、私にはとても信じられなかった。しかも、私と婚約破棄をしたいという理由が、幼馴染のレンナ様と婚約を考えているからだというのだから余計にだ。
確かにレンナ様は非常にお美しく、狙っている殿方も多いと以前に聞いたことがある。幼馴染ということだから、おそらくはアグリット様は見た目だけで選んでいるわけではないのだろうけれど……。
それでも、簡単に納得できるものではなかった。私とアグリット様は政略的な婚約という側面もあるけれど、ちゃんとした恋愛での婚約だったと自負していたからだ。
「アグリット様……わたしとの婚約は、やはり政略的な側面しかなかったのでしょうか?」
「いや、決してそんなことはない! 私はアーシェラのことが好きだった。しかし……それ以上に幼馴染のレンナのことが好きなだけだよ……これについては、謝罪する以外に何も出来ない。慰謝料はしっかりと支払うので、婚約破棄を承諾して貰えないだろうか?」
そこまでの覚悟があるということか……私としても、それ以上は何も言うことが出来なかった。彼は慰謝料まで支払うと言っているのだから……。
「本当に残念です……アグリット様。まさか、こんなことでアグリット様との婚約関係がなくなってしまうなんて……」
「私も同じ気持ちだよ、アーシェラ。本当に済まない……お金で替えられるものでは決してないが、しっかりと慰謝料は支払いたいと思っている」
アグリット様は気付いているのだろうか? 私と彼では決して、同じ気持ちになんてなれないことを……。アグリット様は婚約破棄をしたけれど、相手はすぐに見つかる。それと引き換え、私には相手なんて居ないのだから。明らかな上から目線での発言と言えるのかもしれない……。
私はこうして、アグリット・バーンセル侯爵令息との婚約を破棄することになった。決して望んでいた結末なんかではない……それは、目元から零れ落ちる涙が全てを物語っていた。
0
お気に入りに追加
564
あなたにおすすめの小説

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」
21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」
そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。
理由は簡単――新たな愛を見つけたから。
(まあ、よくある話よね)
私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。
むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を――
そう思っていたのに。
「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」
「これで、ようやく君を手に入れられる」
王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。
それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると――
「君を奪う者は、例外なく排除する」
と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!?
(ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!)
冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。
……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!?
自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。
かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。
ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。
二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

二度目の婚約者には、もう何も期待しません!……そう思っていたのに、待っていたのは年下領主からの溺愛でした。
当麻月菜
恋愛
フェルベラ・ウィステリアは12歳の時に親が決めた婚約者ロジャードに相応しい女性になるため、これまで必死に努力を重ねてきた。
しかし婚約者であるロジャードはあっさり妹に心変わりした。
最後に人間性を疑うような捨て台詞を吐かれたフェルベラは、プツンと何かが切れてロジャードを回し蹴りしをかまして、6年という長い婚約期間に終止符を打った。
それから三ヶ月後。島流し扱いでフェルベラは岩山ばかりの僻地ルグ領の領主の元に嫁ぐ。愛人として。
婚約者に心変わりをされ、若い身空で愛人になるなんて不幸だと泣き崩れるかと思いきや、フェルベラの心は穏やかだった。
だって二度目の婚約者には、もう何も期待していないから。全然平気。
これからの人生は好きにさせてもらおう。そう決めてルグ領の領主に出会った瞬間、期待は良い意味で裏切られた。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

久しぶりに会った婚約者は「明日、婚約破棄するから」と私に言った
五珠 izumi
恋愛
「明日、婚約破棄するから」
8年もの婚約者、マリス王子にそう言われた私は泣き出しそうになるのを堪えてその場を後にした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる