8 / 8
8話 酷い言葉
しおりを挟む「リーガス様、落ち着かれた方が良いと思いますが……ご自分が何を言っているのか分かっていますか?」
「当然だ。私は今、正解に辿り着いたというわけだな! 私のシルファに群がる輩め! 幼馴染だかなんだか知らないが、お前は最近戻って来たのだろうが!」
「それは間違っていませんが……ここに戻って来たのは、5年振りになりますね」
リーガス様の表情は今まで見たこともないものになっていた。言っていることも滅茶苦茶だけれど、その表情も滅茶苦茶ね……自分で何を言っているのか分かっていないのは間違いないと思われる。
「5年も会っていなかったのに、今さら幼馴染の体をしてシルファに近づくとは……! それが許されることだと思っているのか? クインス殿!」
「いや、浮気三昧だったリーガス様に言われたくはないのですが……」
「なんだとっ! お前、誰に向かって口を利いているんだ! 分かっているのか!」
すごい……会話になっているようで全然なっていないわ。クインスの発言は至極真っ当なものだけれど、リーガス様の発言は完全におかしな方向に行っている。それは誰が見ても明らかなんだけれど、本人だけは気付いていないようだ。
「私はリーガス・ドルアット侯爵令息に話をしております。あなたこそ、いくら格上の家柄とはいえ、伯爵令息である私にそんな口を利いてよろしいのですか? 品格を疑われますよ?」
「な、何を言っているんだ? お前は……」
「貴族同士の会話はお互いが敬語であることが通例です。幼馴染などの関係であればその例からは外れるでしょうが。いくらリーガス様が怒っていても、そんな話し方では何も伝わりませんよ?」
「くっ……お前……」
「まあ、元々の理論も破綻しておりますので、どの部分を切り取ったとしても暴言以外のなにものでもないんですが」
クインスの的確な言葉はリーガス様を黙らせるには十分だった。彼はしばらくの間、無言になっていたのだから。
「私とシルファの関係性については、リーガス様が立ち入れる部分ではないでしょう? 幼馴染という関係以上のものではないですが、婚約破棄をするわけですから。リーガス様とシルファは他人同士になるはずです」
「ば、馬鹿な……シルファ、やはり婚約破棄など認めるわけにはいかない!」
「リーガス様が認める認めないは関係ありません。私は理不尽な浮気であなた様を信用できなくなっているのですから。
「やはりクインス殿が引き金のようだな……」
「? リーガス様?」
なんだか小さな言葉で「クインス」と言っていたようだけれど……? なんと言ったのかしら?
「また、出直してくるとしよう」
「で、出直してくるのですか……?」
リーガス様はそのまま帰って行ったけれど、クインスへの暴言の謝罪はなかった。まだまだ、嫌な予感は拭えないわね……。どういう事態になるのかしら。
16
お気に入りに追加
1,841
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説

どうやら貴方の隣は私の場所でなくなってしまったようなので、夜逃げします
皇 翼
恋愛
侯爵令嬢という何でも買ってもらえてどんな教育でも施してもらえる恵まれた立場、王太子という立場に恥じない、童話の王子様のように顔の整った婚約者。そして自分自身は最高の教育を施され、侯爵令嬢としてどこに出されても恥ずかしくない教養を身につけていて、顔が綺麗な両親に似たのだろう容姿は綺麗な方だと思う。
完璧……そう、完璧だと思っていた。自身の婚約者が、中庭で公爵令嬢とキスをしているのを見てしまうまでは――。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

夫の母親に会いたくない私と子供。夫は母親を大切にして何が悪いと反論する。
window
恋愛
エマ夫人はため息をつき目を閉じて思い詰めた表情をしていた。誰もが羨む魅力的な男性の幼馴染アイザックと付き合い恋愛結婚したがとんでもない落とし穴が待っていたのです。
原因となっているのは夫のアイザックとその母親のマリアンヌ。何かと理由をつけて母親に会いに行きたがる夫にほとほと困り果てている。
夫の母親が人間的に思いやりがあり優しい性格なら問題ないのだが正反対で無神経で非常識な性格で聞くに堪えない暴言を平気で浴びせてくるのです。
それはエマだけでなく子供達も標的でした。ただマリアンヌは自分の息子アイザックとエマの長男レオだけは何をしてもいいほどの異常な溺愛ぶりで可愛がって、逆にエマ夫人と長女ミアと次女ルナには雑な対応をとって限りなく冷酷な視線を向けてくる。

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【コミカライズ&書籍化・取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。

もう一度7歳からやりなおし!王太子妃にはなりません
片桐葵
恋愛
いわゆる悪役令嬢・セシルは19歳で死亡した。
皇太子のユリウス殿下の婚約者で高慢で尊大に振る舞い、義理の妹アリシアとユリウスの恋愛に嫉妬し最終的に殺害しようとした罪で断罪され、修道院送りとなった末の死亡だった。しかし死んだ後に女神が現れ7歳からやり直せるようにしてくれた。
もう一度7歳から人生をやり直せる事になったセシル。


断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
浮気したお前が一番、いや、お前だけが悪いに決まってるだろうがヽ(`Д´)ノプンプン。
浮気した相手が完全に悪いのに、何を言ってるんだって感じですよね
第6話のセリフで…
「私にはやはり気味が必要だ…になっていますが、
これ誤字ですよね?
報告です。
そして、いつも更新を楽しみにしています。
これからも頑張って下さい
申し訳ありませんでした……修正致します
更新を楽しみにしていただき、ありがとうございます
6話、
事の重大のとこ、のが2つ続いていて
君が気味になってますよー
申し訳ございませんでした! 修正致します!