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51話 証拠固め その3
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「フューリ、お疲れ様」
「ああ、レオーネ。ありがとう……君も大変だろう?」
「いえ、私はただフューリに付いてきただけだから。大変なんてことはないわ」
「ならいいんだが……」
ビクティム侯爵はあの後、フューリの配下の兵士に連れていかれてしまった。管理棟に残っているのは私とフューリの二人だけだ。ザイールさんや護衛は外で待機している。
「この場所は相当に寒いだろう?」
「いえ、防寒着もあるし……それに管理棟は暖房が効いているから、それほどでもないわ」
確かに外は寒かったけれど……馬車で来たので、そこまで強風を受けたわけでもない。
「それよりも、フューリ。ビクティム侯爵の今後はどうなるの?」
「それは議会が決めることさ。まあ、情状酌量の余地を残すかは……議会次第だろう」
「やっぱり……素直に話せば、罪が軽くなるという話は嘘だったのね?」
「嘘ではないさ。実際に罪が軽くなるケースもあるのだから。ビクティムにとっては、罪が軽くなる可能性に賭けるしかないだろう?」
「それは確かに……それしか道がないものね」
フューリは言葉的には嘘を言ったけれど、それでも一応はビクティム侯爵のことを考えて発言していたのかな。
「クラウス家の今後はどうなるのかしら……?」
「父親であるアーロン殿が、近い内に返り咲くことになるだろう」
なるほど……確かに、アーロン様ならクラウス家を良い方向に進めてくれそうね。というより、私としてはアーロン様はビクティム侯爵に殴られた印象が強く出ているけれど……。
個人的にはクラウス家は没落するのではないかと思っていた。アーロン様の怪我が大したことなくて、本当に良かったわね。アーロン様が居なかったら、本当に没落していただろうし。
聞いている限りでは、親戚はあんまり良い印象がないしね。アーロン様には悪いけれど、クラウス家は一度、没落した方が今後の為かもしれない。
「さて……クラウス家はとりあえず、置いておくとして。次はエドモンド・デューイとの直接対決だな」
「直接対決……エドモンド様と……」
「ああ。だが、一筋縄ではいかない可能性が高い。エドモンド・デューイ側も相応の準備をして臨んでくるだろうからな」
確かに今回のビクティム侯爵のように、簡単に終わるとは思えない。明らかにあの方はレベルが違うだろうから。
「では、どうするの? フューリ……」
「私達も相応の準備をして挑むつもりだ……まあ、ビクティム・クラウスの発言など、証拠固めは大方完了しているから、有利なことに変わりはないがな」
「そうよね……相手は公爵とはいえ、フューリ達王族の配下なんだし。それに加えて証拠を出されたのなら、何もできるわけがないわ」
「確かにレオーネの言う通りだ。通常の考えからいけばな……」
フューリの表情は少しだけではあるけど曇っているようだった。おそらく彼は、今回のビクティム侯爵への根回しについて、警戒しているのだと思う。議会での決定を押しのけるように、現地に飛ばされたはずのビクティム侯爵は、管理者という地位に付いていた。これだけで既におかしい事態が起こっている。
「フューリ……大丈夫かしら……?」
「大丈夫だ。安心してくれ、レオーネ。根拠はないが私を信用してほしい」
「きゃあ……!」
フューリが突然、私の身体を抱き締めてきた。ただ抱き締めただけで、特にそれ以上のことはなかったのだけれど……ドキドキしてしまう。
「安心したかな?」
「こういうやり方はズルいと思うわ……もう」
「ははは、ごめんよ。レオーネ」
私は軽く悪態を付いてみせたけど、確かに心の中は安らいでいた……。
「ああ、レオーネ。ありがとう……君も大変だろう?」
「いえ、私はただフューリに付いてきただけだから。大変なんてことはないわ」
「ならいいんだが……」
ビクティム侯爵はあの後、フューリの配下の兵士に連れていかれてしまった。管理棟に残っているのは私とフューリの二人だけだ。ザイールさんや護衛は外で待機している。
「この場所は相当に寒いだろう?」
「いえ、防寒着もあるし……それに管理棟は暖房が効いているから、それほどでもないわ」
確かに外は寒かったけれど……馬車で来たので、そこまで強風を受けたわけでもない。
「それよりも、フューリ。ビクティム侯爵の今後はどうなるの?」
「それは議会が決めることさ。まあ、情状酌量の余地を残すかは……議会次第だろう」
「やっぱり……素直に話せば、罪が軽くなるという話は嘘だったのね?」
「嘘ではないさ。実際に罪が軽くなるケースもあるのだから。ビクティムにとっては、罪が軽くなる可能性に賭けるしかないだろう?」
「それは確かに……それしか道がないものね」
フューリは言葉的には嘘を言ったけれど、それでも一応はビクティム侯爵のことを考えて発言していたのかな。
「クラウス家の今後はどうなるのかしら……?」
「父親であるアーロン殿が、近い内に返り咲くことになるだろう」
なるほど……確かに、アーロン様ならクラウス家を良い方向に進めてくれそうね。というより、私としてはアーロン様はビクティム侯爵に殴られた印象が強く出ているけれど……。
個人的にはクラウス家は没落するのではないかと思っていた。アーロン様の怪我が大したことなくて、本当に良かったわね。アーロン様が居なかったら、本当に没落していただろうし。
聞いている限りでは、親戚はあんまり良い印象がないしね。アーロン様には悪いけれど、クラウス家は一度、没落した方が今後の為かもしれない。
「さて……クラウス家はとりあえず、置いておくとして。次はエドモンド・デューイとの直接対決だな」
「直接対決……エドモンド様と……」
「ああ。だが、一筋縄ではいかない可能性が高い。エドモンド・デューイ側も相応の準備をして臨んでくるだろうからな」
確かに今回のビクティム侯爵のように、簡単に終わるとは思えない。明らかにあの方はレベルが違うだろうから。
「では、どうするの? フューリ……」
「私達も相応の準備をして挑むつもりだ……まあ、ビクティム・クラウスの発言など、証拠固めは大方完了しているから、有利なことに変わりはないがな」
「そうよね……相手は公爵とはいえ、フューリ達王族の配下なんだし。それに加えて証拠を出されたのなら、何もできるわけがないわ」
「確かにレオーネの言う通りだ。通常の考えからいけばな……」
フューリの表情は少しだけではあるけど曇っているようだった。おそらく彼は、今回のビクティム侯爵への根回しについて、警戒しているのだと思う。議会での決定を押しのけるように、現地に飛ばされたはずのビクティム侯爵は、管理者という地位に付いていた。これだけで既におかしい事態が起こっている。
「フューリ……大丈夫かしら……?」
「大丈夫だ。安心してくれ、レオーネ。根拠はないが私を信用してほしい」
「きゃあ……!」
フューリが突然、私の身体を抱き締めてきた。ただ抱き締めただけで、特にそれ以上のことはなかったのだけれど……ドキドキしてしまう。
「安心したかな?」
「こういうやり方はズルいと思うわ……もう」
「ははは、ごめんよ。レオーネ」
私は軽く悪態を付いてみせたけど、確かに心の中は安らいでいた……。
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