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45話 事実 その1

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 私がその一方を聞いたのは、フューリとの貴族街でのデートの数日後だった。

「ビクティム侯爵が……管理者の立場なんですか?」


 私の質問に、ダンテ兄さまは険しい表情で頷いた。フューリに聞いた限りでは、ビクティム侯爵は爵位をはく奪の上、辺境地の直接開拓に回されているはず。管理者という立場になるとは聞いていないけれど……。


「私も昨日になって初めて情報を仕入れたところだ。フューリ王太子殿下もおそらくは、同じくらいのタイミングでこの情報を仕入れているだろう」


「管理者……そうなると、直接の開拓事業には参加しないということですよね?」

「そうなるな……辺境地の管理者は、比較的優遇された地位にある」

「そんな……」


 辺境地の管理者という立場が、実際にどのくらいの権力を有しているのかはわからない。しかし、少なくとも本来のビクティム侯爵への罰よりは軽いことは間違いない。


「これは……エドモンド・デューイ公爵の差し金でしょうか?」

「おそらくは……彼だけの力ではないかもしれないが、関わっているのは間違いないだろう。少し前に、ビクティム侯爵とエドモンド殿が同じ部屋で会話をしたという情報もあるくらいだからな……」


「会話……」


 秘密裏の会談のようなものだろうか? 私は疑心暗鬼になってしまっていた。エドモンド様の権力は強いとは思っていたけれど、まさかこれほどとは……。

「それで……ビクティム侯爵は、実際には辺境地でどんな待遇になるのでしょうか?」


 やはりどうしてもその部分が気になってしまう……本来は、あまり罰の部分には触れるべきではないのだろうけれど。でも、ビクティム侯爵は身勝手な婚約破棄をしただけでなく、他のクラウス派の貴族への暴言や、父上であるアーロン様への暴力を行った人物。

 それに対する罰が最小限になるのは、なんだか納得がいかなかった。


「具体的な待遇については、実際にビクティム・クラウスが現地に派遣されてみないと、何とも言えないだろうな」

「そうですか……」

「しかし、私の妹と呼んでも差し支えないレオーネを悲しませておいて、管理者という立場でノラリクラリと、丁度よい待遇に甘んじるなど許されることではない。議会を通して許可を貰い、ビクティム・クラウスが辺境地に飛ばされた後に、調査隊を派遣するつもりだ」

「なるほど、調査隊ですか」

「うむ。もちろん、伯爵の身分である私個人では難しい。そこは、フューリ王太子殿下のお力を借りることになるだろうがな」

「そうですね、フューリならきっと手伝ってくれると思います」


 私の知っているフューリなら、ダンテ兄さまの進言がなくても、独自で調査隊を送りかねないけれど。でも、もしも調査の結果、ビクティム侯爵が本来の罰からかけ離れた生活を送れていたとしたら……エドモンド様への強力な攻撃の札に使えそうね。
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