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34話 エドモンドとの会談 その2
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「貴族至上主義の国家、ですか。なるほど……ははははは」
「なにがおかしいのかな? エドモンド殿?」
いきなり笑い出したエドモンド様に、私もフューリも怪訝な表情を見せていた。気でも狂ったとかと疑ってしまうけれど、エドモンド様は構わず笑い続けている。
「いい加減に、何か弁解などをしてほしいのだが? 私も貴殿の笑いに付き合っている程、気は長くないんだ」
「いけませんな、フューリ王太子殿下……。そんなことで、次の国王陛下が務まるのですかな?」
「ご心配ありがとう。まあ、貴殿に心配をされる程、落ちぶれてはいないので安心してくれ」
「左様でございますか」
先ほどから、静かなムードを醸し出しつつも、どこか一触即発の雰囲気も兼ね備えている。私はあまり、こういう雰囲気が好きではなかった。私の精神力が弱いからなのか、今にも逃げ出してしまいそうになる。
それとも、そういう雰囲気を出せるのが、エドモンド様の本領なのか……フューリはとても恐ろしい相手と会談しているのかもしれない。
「まあ、いくらフューリ王太子殿下でも適当な事実を言って、私を追い込もうとすればどうなるか……分からないわけでもありますまい?」
「エドモンド、本気で言っているのか? 自分の立場をよく考えた方がいいのではないか? 今ならまだ、穏便に事を済ませることも出来るのだぞ?」
フューリからの最終警告みたいなものね。これ以上、シラを切ったりするようなら、容赦はしないという。エドモンド様はどういう返しをするのかしら? 私の興味はそこに注がれていた。
「シラを切るも何も私には何のことだか、分かりませんな。勝手に人を反逆者呼ばわりはしないでもらいたい。あなたが王太子殿下でなければ、即刻、投獄の手続きを取るのですがね。まあ、今回だけは大目に見ましょう」
皮肉の聞いた言葉だった。フューリのセリフをわざわざ真似ているかのような。
「……それが、貴殿の答えなのだな?」
「ええ、そのとおりです。フューリ王太子殿下……」
「そうか……残念だ。では、今回はこれで帰らせてもらおうか」
「もうお帰りになるのですか? 大したおもてなしも出来ずに申し訳ありませんでした……ふふふ」
「なに、気にする必要はないさ。後々、いやでも会うことになるだろうからな」
「なるほど、確かにそうかもしれませんな……ふははははは」
エドモンド様の笑い声が、本当に不気味だった。彼はわざと不気味に笑っているように感じられる。
「レオーネ、今日は一旦、帰るとしようか」
「えっ? は、はい。わかりました」
私もフューリに合わせて立ち上がり、エドモンド様に軽く挨拶をした。そして夫人にも挨拶を済ませ、そのまま応接室後にした。
----------------------------------------------
「フューリ……」
「ああ、わかっているさ、レオーネ」
私とフューリは帰りの馬車に乗っている。ようやく、彼と普通に話せる時間が訪れたわけだけど、私の表情は暗かった。
「エドモンド様は、どうしてあのような態度を取っていたのかしら? 明らかに不利になるような態度に見えたけど」
「それだけ自信があるのだろう。ビクティムの件に関して、議会への出廷も近く行われる予定だが、何をするのか注意深く見ておかなければならないな」
公国の創設を考える程の人物……それが事実なのだとすれば、やはり、それ相応に厄介な知恵を持っているのかもしれないわね。
「なにがおかしいのかな? エドモンド殿?」
いきなり笑い出したエドモンド様に、私もフューリも怪訝な表情を見せていた。気でも狂ったとかと疑ってしまうけれど、エドモンド様は構わず笑い続けている。
「いい加減に、何か弁解などをしてほしいのだが? 私も貴殿の笑いに付き合っている程、気は長くないんだ」
「いけませんな、フューリ王太子殿下……。そんなことで、次の国王陛下が務まるのですかな?」
「ご心配ありがとう。まあ、貴殿に心配をされる程、落ちぶれてはいないので安心してくれ」
「左様でございますか」
先ほどから、静かなムードを醸し出しつつも、どこか一触即発の雰囲気も兼ね備えている。私はあまり、こういう雰囲気が好きではなかった。私の精神力が弱いからなのか、今にも逃げ出してしまいそうになる。
それとも、そういう雰囲気を出せるのが、エドモンド様の本領なのか……フューリはとても恐ろしい相手と会談しているのかもしれない。
「まあ、いくらフューリ王太子殿下でも適当な事実を言って、私を追い込もうとすればどうなるか……分からないわけでもありますまい?」
「エドモンド、本気で言っているのか? 自分の立場をよく考えた方がいいのではないか? 今ならまだ、穏便に事を済ませることも出来るのだぞ?」
フューリからの最終警告みたいなものね。これ以上、シラを切ったりするようなら、容赦はしないという。エドモンド様はどういう返しをするのかしら? 私の興味はそこに注がれていた。
「シラを切るも何も私には何のことだか、分かりませんな。勝手に人を反逆者呼ばわりはしないでもらいたい。あなたが王太子殿下でなければ、即刻、投獄の手続きを取るのですがね。まあ、今回だけは大目に見ましょう」
皮肉の聞いた言葉だった。フューリのセリフをわざわざ真似ているかのような。
「……それが、貴殿の答えなのだな?」
「ええ、そのとおりです。フューリ王太子殿下……」
「そうか……残念だ。では、今回はこれで帰らせてもらおうか」
「もうお帰りになるのですか? 大したおもてなしも出来ずに申し訳ありませんでした……ふふふ」
「なに、気にする必要はないさ。後々、いやでも会うことになるだろうからな」
「なるほど、確かにそうかもしれませんな……ふははははは」
エドモンド様の笑い声が、本当に不気味だった。彼はわざと不気味に笑っているように感じられる。
「レオーネ、今日は一旦、帰るとしようか」
「えっ? は、はい。わかりました」
私もフューリに合わせて立ち上がり、エドモンド様に軽く挨拶をした。そして夫人にも挨拶を済ませ、そのまま応接室後にした。
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「フューリ……」
「ああ、わかっているさ、レオーネ」
私とフューリは帰りの馬車に乗っている。ようやく、彼と普通に話せる時間が訪れたわけだけど、私の表情は暗かった。
「エドモンド様は、どうしてあのような態度を取っていたのかしら? 明らかに不利になるような態度に見えたけど」
「それだけ自信があるのだろう。ビクティムの件に関して、議会への出廷も近く行われる予定だが、何をするのか注意深く見ておかなければならないな」
公国の創設を考える程の人物……それが事実なのだとすれば、やはり、それ相応に厄介な知恵を持っているのかもしれないわね。
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