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30話 エドモンド・デューイ公爵 その1
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フューリから聞かされている、クラウス家を守る部隊……その部隊の中心人物の名前も分かっているとのことだった。
「情報を錯綜させて上手く誤魔化しているが、エドモンド・デューイ公爵でほぼ間違いないと言えるだろう」
「エドモンド・デューイ公爵といえば……」
「そう、アーロン・クラウス侯爵の弟に当たる人物だ」
ビクティム侯爵の叔父に当たる人物というわけか……確か、婿養子として公爵家であるデューイ家に入った人物。デューイ家は男性の子供に恵まれなかったので、十数年前にエドモンド様が公爵になり、現在でも現役を務めているはずだ。
本来の家系である奥様はエドモンド様のサポートに回っているとかなんとか……聞いたことがある。
「でも、フューリ。おかしくない?」
「なにがだい、レオーネ?」
不可思議なことがある……フューリも既に、気付いているのかもしれないけれど、私は敢えて質問することにした。
「エドモンド様は公爵という立場だわ」
「ああ、そうだね」
「非常に位の高いお方なのは間違いないけれど……王族であるフューリをどうにか出来る存在とは思えないのだけれど……」
「それは……」
確信的な言葉を私は使ってしまったかもしれない。王族の血筋を引いている大公様であればともかく、エドモンド様は王族とは血のつながりはなく親戚関係でもない。ついでに言うと、公爵という立場は侯爵よりは上だけれど、その上には大公様が存在しており、さらに上に王子殿下や国王陛下が居る。
オルカスト王国特有の階級制度かもしれないけれど、エドモンド様では権力として見てもそこまで高いとは言い難い。他にも公爵の家系は居るのだから……あれ? 私はなんだか、嫌な予感がしてしまった。
「レオーネも気付いているかもしれないが、彼らが考えているのは貴族至上主義の社会だ。いくら王家の能力や大公の能力が強くても、その下の貴族達で独立されては意味がない。エドモンドは自らをトップとして考え、他の貴族達を吸収し、強大な兵力と共に独立を考えている可能性がある」
「まさか……そんなことを!?」
「あくまでも可能性の問題だが、あり得ないことではない。そこで……独立の有無を確かめる為に、エドモンド・デューイとの会合を設けることにした」
会合……エドモンド様と直接、話をするということね。
「レオーネにも出席してもらいたい。ビクティムにやられたことを証言すれば、かなりこちらが有利になるからな」
「もちろん……出席させてもらいます」
「ありがとう、レオーネ」
おかしな方向に話は舵を切り出している……少しでもフューリの役に立てるのなら、私は全力で手伝いたいと思っていた。エドモンド・デューイ様との会合……また、波乱の展開が起こりそうね。
「情報を錯綜させて上手く誤魔化しているが、エドモンド・デューイ公爵でほぼ間違いないと言えるだろう」
「エドモンド・デューイ公爵といえば……」
「そう、アーロン・クラウス侯爵の弟に当たる人物だ」
ビクティム侯爵の叔父に当たる人物というわけか……確か、婿養子として公爵家であるデューイ家に入った人物。デューイ家は男性の子供に恵まれなかったので、十数年前にエドモンド様が公爵になり、現在でも現役を務めているはずだ。
本来の家系である奥様はエドモンド様のサポートに回っているとかなんとか……聞いたことがある。
「でも、フューリ。おかしくない?」
「なにがだい、レオーネ?」
不可思議なことがある……フューリも既に、気付いているのかもしれないけれど、私は敢えて質問することにした。
「エドモンド様は公爵という立場だわ」
「ああ、そうだね」
「非常に位の高いお方なのは間違いないけれど……王族であるフューリをどうにか出来る存在とは思えないのだけれど……」
「それは……」
確信的な言葉を私は使ってしまったかもしれない。王族の血筋を引いている大公様であればともかく、エドモンド様は王族とは血のつながりはなく親戚関係でもない。ついでに言うと、公爵という立場は侯爵よりは上だけれど、その上には大公様が存在しており、さらに上に王子殿下や国王陛下が居る。
オルカスト王国特有の階級制度かもしれないけれど、エドモンド様では権力として見てもそこまで高いとは言い難い。他にも公爵の家系は居るのだから……あれ? 私はなんだか、嫌な予感がしてしまった。
「レオーネも気付いているかもしれないが、彼らが考えているのは貴族至上主義の社会だ。いくら王家の能力や大公の能力が強くても、その下の貴族達で独立されては意味がない。エドモンドは自らをトップとして考え、他の貴族達を吸収し、強大な兵力と共に独立を考えている可能性がある」
「まさか……そんなことを!?」
「あくまでも可能性の問題だが、あり得ないことではない。そこで……独立の有無を確かめる為に、エドモンド・デューイとの会合を設けることにした」
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おかしな方向に話は舵を切り出している……少しでもフューリの役に立てるのなら、私は全力で手伝いたいと思っていた。エドモンド・デューイ様との会合……また、波乱の展開が起こりそうね。
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