29 / 60
29話 牢屋のビクティム その2
しおりを挟む
あれから……あのパーティーでビクティム侯爵が捕まってから10日が経過していた。私は我が家を訪れてくれているフューリと二人きりで話をしていた。
「それで……ビクティム侯爵の様子はどうなの?」
「ああ、そのことなんだが……どうやら、地下牢の兵士と一悶着あったようでな。侯爵という地位を剥奪されると分かった瞬間、様子が変わったらしい……」
「様子が変わった……? それは、どういうことなの?」
パーティー会場から出て行くビクティム侯爵は罪を受け入れたような……いいえ、何かを企んでいるようにさえ見える表情をしていたような。
「簡単な話さ、ビクティム・クラウスは侯爵の爵位を剥奪されるだろう事実を聞いておかしくなった……それだけだ」
「おかしくなった……」
確かに、あのプライドの塊のようなビクティム侯爵ならあり得ると思う。自らが君臨し、あぐらをかいていた場所……その地位から引きずり降ろされ、今では地下牢に閉じ込められる始末なのだから。あれだけの失態と起こしてしまったビクティム侯爵には相応しい罰と言えるだろうか。少なくとも私は、同情する気にはなれなかった。
「今更、彼のことについて聞かされてもどうかとは思うが……今、ビクティム侯爵についてどう思っている?」
「オルカスト王国の伯爵令嬢、レオーネの立場からすれば……彼のことを悪く言うのは避けたいところね」
「なるほど……では、個人的には?」
「ざまあみろ、という言葉が適切かしら?」
「なるほど、これ以上ない程の褒め言葉と言えるだろうね」
「ありがとう、フューリ」
私達はお互いに軽く笑い合った。
「それで……ビクティム侯爵の罰はどうなるの?」
「ああ、そのことなんだが……」
私はフューリが少し、暗い顔になったのを見逃さなかった。何か、予想外のことが起きようとしているのかしら……?
------------------------------------------------------
「議会が攻めあぐねている……?」
「実はそうなんだ。ビクティム・クラウスを守る部隊が編制されたようでな……」
「ビクティム侯爵を守る部隊?」
フューリから聞いた言葉ではあるけれど、冗談のような部隊にすら思えてしまった。しかし現状、そのビクティム・クラウスを守る部隊が、議会を脅かそうとしているのは事実だ。フューリがそんな冗談を言うわけがないし……。
「うむ、その部隊は……既に予想出来ているかもしれないが、クラウス家の親戚その他で構成されている。クラウス家が独立し、公国を作り出すという話……現実味を帯びて来たのかもしれないな」
「公国……」
私は信じられない言葉を聞いているようだった。公国としての独立……そのようなことが現実に起きれば、どうなってしまうのか……。
「それで……ビクティム侯爵の様子はどうなの?」
「ああ、そのことなんだが……どうやら、地下牢の兵士と一悶着あったようでな。侯爵という地位を剥奪されると分かった瞬間、様子が変わったらしい……」
「様子が変わった……? それは、どういうことなの?」
パーティー会場から出て行くビクティム侯爵は罪を受け入れたような……いいえ、何かを企んでいるようにさえ見える表情をしていたような。
「簡単な話さ、ビクティム・クラウスは侯爵の爵位を剥奪されるだろう事実を聞いておかしくなった……それだけだ」
「おかしくなった……」
確かに、あのプライドの塊のようなビクティム侯爵ならあり得ると思う。自らが君臨し、あぐらをかいていた場所……その地位から引きずり降ろされ、今では地下牢に閉じ込められる始末なのだから。あれだけの失態と起こしてしまったビクティム侯爵には相応しい罰と言えるだろうか。少なくとも私は、同情する気にはなれなかった。
「今更、彼のことについて聞かされてもどうかとは思うが……今、ビクティム侯爵についてどう思っている?」
「オルカスト王国の伯爵令嬢、レオーネの立場からすれば……彼のことを悪く言うのは避けたいところね」
「なるほど……では、個人的には?」
「ざまあみろ、という言葉が適切かしら?」
「なるほど、これ以上ない程の褒め言葉と言えるだろうね」
「ありがとう、フューリ」
私達はお互いに軽く笑い合った。
「それで……ビクティム侯爵の罰はどうなるの?」
「ああ、そのことなんだが……」
私はフューリが少し、暗い顔になったのを見逃さなかった。何か、予想外のことが起きようとしているのかしら……?
------------------------------------------------------
「議会が攻めあぐねている……?」
「実はそうなんだ。ビクティム・クラウスを守る部隊が編制されたようでな……」
「ビクティム侯爵を守る部隊?」
フューリから聞いた言葉ではあるけれど、冗談のような部隊にすら思えてしまった。しかし現状、そのビクティム・クラウスを守る部隊が、議会を脅かそうとしているのは事実だ。フューリがそんな冗談を言うわけがないし……。
「うむ、その部隊は……既に予想出来ているかもしれないが、クラウス家の親戚その他で構成されている。クラウス家が独立し、公国を作り出すという話……現実味を帯びて来たのかもしれないな」
「公国……」
私は信じられない言葉を聞いているようだった。公国としての独立……そのようなことが現実に起きれば、どうなってしまうのか……。
13
お気に入りに追加
4,205
あなたにおすすめの小説
婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした
アルト
ファンタジー
今から七年前。
婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。
そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。
そして現在。
『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。
彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

溺愛されている妹がお父様の子ではないと密告したら立場が逆転しました。ただお父様の溺愛なんて私には必要ありません。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるレフティアの日常は、父親の再婚によって大きく変わることになった。
妾だった継母やその娘である妹は、レフティアのことを疎んでおり、父親はそんな二人を贔屓していた。故にレフティアは、苦しい生活を送ることになったのである。
しかし彼女は、ある時とある事実を知ることになった。
父親が溺愛している妹が、彼と血が繋がっていなかったのである。
レフティアは、その事実を父親に密告した。すると調査が行われて、それが事実であることが判明したのである。
その結果、父親は継母と妹を排斥して、レフティアに愛情を注ぐようになった。
だが、レフティアにとってそんなものは必要なかった。継母や妹ともに自分を虐げていた父親も、彼女にとっては排除するべき対象だったのである。
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌
招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」
毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。
彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。
そして…。

わたしはくじ引きで選ばれたにすぎない婚約者だったらしい
よーこ
恋愛
特に美しくもなく、賢くもなく、家柄はそこそこでしかない伯爵令嬢リリアーナは、婚約後六年経ったある日、婚約者である大好きな第二王子に自分が未来の王子妃として選ばれた理由を尋ねてみた。
王子の答えはこうだった。
「くじで引いた紙にリリアーナの名前が書かれていたから」
え、わたし、そんな取るに足らない存在でしかなかったの?!
思い出してみれば、今まで王子に「好きだ」みたいなことを言われたことがない。
ショックを受けたリリアーナは……。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる