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25話 宴のあと その3
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「まずは、レオーネさんが心配していることを解消しておきましょうか」
「私が心配していること?」
シリアスな話に向かう流れだったけど、メリア王女は少し話題を変えた。私の一番心配していることは……。
「私とフューリ王太子殿下はそういう関係ではございませんよ。安心して大丈夫だから」
「あ、そうなんですね、やっぱり」
「ええ、安心したでしょう?」
心の中を見透かされているような気がする。これが人生経験の違いというやつかしら? といっても2歳しか離れてはいないんだけどね。
仕えている国は違えど、立場の違いが出ているんでしょうね。
「はい、安心いたしました」
「そう、なら良かったわ」
根拠を示されたわけではないけど、メリア王女の言葉は信用に値すると確信が持てていた。まあ、ついさっきフューリの妹にあたるクリス様経由で知り合ったと言っていたしね。
「でも……私がわからないのは、クリス様経由でフューリと知り合っていたことよりも、ビクティム侯爵と婚約したことですね。彼との婚約話自体は、大分前からあったと思うんですが……」
メリア王女程の人物がビクティム侯爵に騙されていた、とも考えにくいし……どうなっているんだろう?
本来、この場はビクティム侯爵のホームグラウンド。こういう会話は危険なのだけれど、今はむしろしやすい雰囲気でもあった。みんなさっきの事件のことで頭がいっぱいになっているから、むしろ聞かれにくいくらいだろうし。
「そうですわ、元々、その話はあったんですの。それからあなたの婚約破棄があったから、フューリ王太子殿下は私に接触をして、協力するように頼んで来たのよ。私がビクティム侯爵に近づいた理由としては……先ほど、話していた内容とも一致するのだけど覚えているかしら?」
「先ほど話していたこと……? ええと、ビクティム侯爵を追い詰めていた時のことですよね。あることないこと、色々と言っていたような……」
「あらあら、あることないことだなんて人聞きの悪い。ちなみに……レオーネさんは国家の盛衰が書かれた歴史書にも目を通したことはあるのかしら?」
「一応は……それがどうかしたのですか?」
「ふふふ、私がビクティム侯爵に言った言葉は嘘ではないのよ」
ん? メリア王女がビクティム侯爵に言った言葉……もしかして、独立を考えているという話のこと?
「ビクティム侯爵が独立を考えている、というあの話のことですか?」
「その通りですわ」
「ま、まさか……そんなこと」
「もちろん、ビクティム侯爵自身にその能力はないでしょうね。でも、通常の歴史には決して出ない部分で……そう、クラウス家という家系全体で見るとそういう危険性は確実に孕んでいる。だから、私はビクティム侯爵からの接近があった時に、真偽を確かめる意味合いでも近づくことにしたのよ」
なんだか、すごい話になりそうな予感が……そもそも、人間不信になっていたはずのメリア王女だけど、怪しさしか感じないビクティム侯爵に近づくのはむしろ楽しかったんじゃないだろうか。裏切られるかもしれないと考えなくても良いし。
私が婚約破棄直後でも、絶対に信用できるフューリには近づけたように……。
「私が心配していること?」
シリアスな話に向かう流れだったけど、メリア王女は少し話題を変えた。私の一番心配していることは……。
「私とフューリ王太子殿下はそういう関係ではございませんよ。安心して大丈夫だから」
「あ、そうなんですね、やっぱり」
「ええ、安心したでしょう?」
心の中を見透かされているような気がする。これが人生経験の違いというやつかしら? といっても2歳しか離れてはいないんだけどね。
仕えている国は違えど、立場の違いが出ているんでしょうね。
「はい、安心いたしました」
「そう、なら良かったわ」
根拠を示されたわけではないけど、メリア王女の言葉は信用に値すると確信が持てていた。まあ、ついさっきフューリの妹にあたるクリス様経由で知り合ったと言っていたしね。
「でも……私がわからないのは、クリス様経由でフューリと知り合っていたことよりも、ビクティム侯爵と婚約したことですね。彼との婚約話自体は、大分前からあったと思うんですが……」
メリア王女程の人物がビクティム侯爵に騙されていた、とも考えにくいし……どうなっているんだろう?
本来、この場はビクティム侯爵のホームグラウンド。こういう会話は危険なのだけれど、今はむしろしやすい雰囲気でもあった。みんなさっきの事件のことで頭がいっぱいになっているから、むしろ聞かれにくいくらいだろうし。
「そうですわ、元々、その話はあったんですの。それからあなたの婚約破棄があったから、フューリ王太子殿下は私に接触をして、協力するように頼んで来たのよ。私がビクティム侯爵に近づいた理由としては……先ほど、話していた内容とも一致するのだけど覚えているかしら?」
「先ほど話していたこと……? ええと、ビクティム侯爵を追い詰めていた時のことですよね。あることないこと、色々と言っていたような……」
「あらあら、あることないことだなんて人聞きの悪い。ちなみに……レオーネさんは国家の盛衰が書かれた歴史書にも目を通したことはあるのかしら?」
「一応は……それがどうかしたのですか?」
「ふふふ、私がビクティム侯爵に言った言葉は嘘ではないのよ」
ん? メリア王女がビクティム侯爵に言った言葉……もしかして、独立を考えているという話のこと?
「ビクティム侯爵が独立を考えている、というあの話のことですか?」
「その通りですわ」
「ま、まさか……そんなこと」
「もちろん、ビクティム侯爵自身にその能力はないでしょうね。でも、通常の歴史には決して出ない部分で……そう、クラウス家という家系全体で見るとそういう危険性は確実に孕んでいる。だから、私はビクティム侯爵からの接近があった時に、真偽を確かめる意味合いでも近づくことにしたのよ」
なんだか、すごい話になりそうな予感が……そもそも、人間不信になっていたはずのメリア王女だけど、怪しさしか感じないビクティム侯爵に近づくのはむしろ楽しかったんじゃないだろうか。裏切られるかもしれないと考えなくても良いし。
私が婚約破棄直後でも、絶対に信用できるフューリには近づけたように……。
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