23 / 60
23話 宴のあと その1
しおりを挟む
「信じられん……! あの、クラウス侯爵があんなことを……」
「ええ、まったくでございますね」
「でも、以前から身分の差にはかなり執着していましたからな……」
ビクティム侯爵が衛兵に連れて行かれる直前、周囲の貴族達は好き好きに会話を再開させていた。ビクティム侯爵はそんな会話に睨みを利かせるけど、誰も聞く人は居ない。ビクティム侯爵の化けの皮が剥がれた一幕となった。
「さて……ビクティムの連行と、アーロン殿を医務室に連れて行く必要が出て来た。レオーネ、済まないが話の続きはまた今度ということで」
「わかっております。お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
フューリに敬語は不要だけれど、敢えて使わせてもらった。ちょっとだけ皮肉を込めながら……。
まあ、現実問題として、この状況でフューリと和気あいあいと話し続けるのは無理だし。本来なら、私もアーロン様に付き添いたいくらいだ。でも、フューリがそれを断った。
「あの、私も……」
「レオーネが来る必要はないさ。私がやっておくから」
「そ、そうですか……? すみません」
「レオーネ嬢……宴のあと、のような状況にはなっているが……できれば、パーティーの続きを楽しんでくだされ。私や愚息のことで、あなたに迷惑を掛けるのは本意ではない」
「アーロン様……」
そこまで言われてしまっては、流石に付き添って行くことが出来なかった。そんな私にフューリが優しく頭に手を乗せてくれる。なんか撫でられているみたいで恥ずかしいけど……。
「アーロン殿の言うように、宴のあとを楽しむのも貴族としての嗜みの1つだぞ?」
「フューリ……それ、本気で言ってるの?」
思わず素の話し方に戻ってしまった。それを聞いてフューリは笑っている。
「もちろん、本気だとも」
「あなたらしいわね……はあ……」
私は自然とため息を吐いてしまうけど、心の中は幸せだった。その後、ビクティム侯爵、アーロン様、フューリの3名は護衛や衛兵たちと共に、パーティー会場から去って行った。
「これは……一体、どうなってしまうんだ……?」
「さあ……?」
「フューリ王太子殿下に取り入った方が良いんじゃないかしら? クラウス家はもうおしまいでしょう?」
「もしくは、ルヴィンス家に取り入るっていうのも良いのでは……?」
パーティーに参加している、元クラウス派の貴族達は各々、勝手な発言をしていた。おそらく、ビクティム侯爵が知ったら怒り狂う発言も見られた。というより、私の家系に取り入るって言葉も聴こえたような……?
「うふふ、これが宴のあと。なかなか、面白いことになっていますわね」
「メリア王女様……」
「今のこの場は人間の本音が一番良く届く場所よ。事件を引き起こした元凶が会場から消え去った。そうなると、多少の問題発言はしても許されるんじゃないかという感情が生まれる」
「な、なるほど……」
メリア王女はまだ私とほとんど変わらない年齢なのに、随分と大人びて見える。それだけ苦労が多かったのかしら
? まあ、王女様だしね……。
「周りの声に耳を傾けるのは楽しいものよ? 私達の成長にもきっと繋がると思うわ」
フューリとの関係性をまだ彼女から聞けていないけど、確かに周囲の声に耳を傾けるのは重要な気がした。あれ? 私ってもしかして言いくるめられてる? あ、ダンテ兄さまが遠くから笑っているわ……!
「ええ、まったくでございますね」
「でも、以前から身分の差にはかなり執着していましたからな……」
ビクティム侯爵が衛兵に連れて行かれる直前、周囲の貴族達は好き好きに会話を再開させていた。ビクティム侯爵はそんな会話に睨みを利かせるけど、誰も聞く人は居ない。ビクティム侯爵の化けの皮が剥がれた一幕となった。
「さて……ビクティムの連行と、アーロン殿を医務室に連れて行く必要が出て来た。レオーネ、済まないが話の続きはまた今度ということで」
「わかっております。お気をつけて」
「ああ、ありがとう」
フューリに敬語は不要だけれど、敢えて使わせてもらった。ちょっとだけ皮肉を込めながら……。
まあ、現実問題として、この状況でフューリと和気あいあいと話し続けるのは無理だし。本来なら、私もアーロン様に付き添いたいくらいだ。でも、フューリがそれを断った。
「あの、私も……」
「レオーネが来る必要はないさ。私がやっておくから」
「そ、そうですか……? すみません」
「レオーネ嬢……宴のあと、のような状況にはなっているが……できれば、パーティーの続きを楽しんでくだされ。私や愚息のことで、あなたに迷惑を掛けるのは本意ではない」
「アーロン様……」
そこまで言われてしまっては、流石に付き添って行くことが出来なかった。そんな私にフューリが優しく頭に手を乗せてくれる。なんか撫でられているみたいで恥ずかしいけど……。
「アーロン殿の言うように、宴のあとを楽しむのも貴族としての嗜みの1つだぞ?」
「フューリ……それ、本気で言ってるの?」
思わず素の話し方に戻ってしまった。それを聞いてフューリは笑っている。
「もちろん、本気だとも」
「あなたらしいわね……はあ……」
私は自然とため息を吐いてしまうけど、心の中は幸せだった。その後、ビクティム侯爵、アーロン様、フューリの3名は護衛や衛兵たちと共に、パーティー会場から去って行った。
「これは……一体、どうなってしまうんだ……?」
「さあ……?」
「フューリ王太子殿下に取り入った方が良いんじゃないかしら? クラウス家はもうおしまいでしょう?」
「もしくは、ルヴィンス家に取り入るっていうのも良いのでは……?」
パーティーに参加している、元クラウス派の貴族達は各々、勝手な発言をしていた。おそらく、ビクティム侯爵が知ったら怒り狂う発言も見られた。というより、私の家系に取り入るって言葉も聴こえたような……?
「うふふ、これが宴のあと。なかなか、面白いことになっていますわね」
「メリア王女様……」
「今のこの場は人間の本音が一番良く届く場所よ。事件を引き起こした元凶が会場から消え去った。そうなると、多少の問題発言はしても許されるんじゃないかという感情が生まれる」
「な、なるほど……」
メリア王女はまだ私とほとんど変わらない年齢なのに、随分と大人びて見える。それだけ苦労が多かったのかしら
? まあ、王女様だしね……。
「周りの声に耳を傾けるのは楽しいものよ? 私達の成長にもきっと繋がると思うわ」
フューリとの関係性をまだ彼女から聞けていないけど、確かに周囲の声に耳を傾けるのは重要な気がした。あれ? 私ってもしかして言いくるめられてる? あ、ダンテ兄さまが遠くから笑っているわ……!
11
お気に入りに追加
4,203
あなたにおすすめの小説
【完結】捨てられ正妃は思い出す。
なか
恋愛
「お前に食指が動くことはない、後はしみったれた余生でも過ごしてくれ」
そんな言葉を最後に婚約者のランドルフ・ファルムンド王子はデイジー・ルドウィンを捨ててしまう。
人生の全てをかけて愛してくれていた彼女をあっさりと。
正妃教育のため幼き頃より人生を捧げて生きていた彼女に味方はおらず、学園ではいじめられ、再び愛した男性にも「遊びだった」と同じように捨てられてしまう。
人生に楽しみも、生きる気力も失った彼女は自分の意志で…自死を選んだ。
再び意識を取り戻すと見知った光景と聞き覚えのある言葉の数々。
デイジーは確信をした、これは二度目の人生なのだと。
確信したと同時に再びあの酷い日々を過ごす事になる事に絶望した、そんなデイジーを変えたのは他でもなく、前世での彼女自身の願いであった。
––次の人生は後悔もない、幸福な日々を––
他でもない、自分自身の願いを叶えるために彼女は二度目の人生を立ち上がる。
前のような弱気な生き方を捨てて、怒りに滾って奮い立つ彼女はこのくそったれな人生を生きていく事を決めた。
彼女に起きた心境の変化、それによって起こる小さな波紋はやがて波となり…この王国でさえ変える大きな波となる。
寝る間が極楽、だが寝れない
Hk
恋愛
【第14回恋愛小説大賞にて奨励賞を頂きました】
修道女のステファニーは国王の庶子だが、幼い頃から修道院で暮らしていた。ある日還俗してオーウェン・バートン伯爵の元へ降嫁することを命じられる。
一方、オーウェンは自身が携わった鉱山採掘における崩落事故のトラウマで、不眠と閉所恐怖症に悩まされていた。強制的な結婚だったので、3年で離縁することをステファニーに約束するオーウェン。
しかし降嫁してきたステファニーはなんだか変わっていて、一緒に過ごすうちにトラウマが薄れだんだんステファニーのことが気になって仕方なくなってきて…
※本編完結。たまに番外編を更新しています
※他サイトにも投稿しています
※主人公の仕事については一部ふわふわ設定です
※表紙イラストはあまもり様(@amamori_stst)に描いて頂きました
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜
k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」
そう婚約者のグレイに言われたエミリア。
はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。
「恋より友情よね!」
そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。
本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。
忘れられた妻
毛蟹葵葉
恋愛
結婚初夜、チネロは夫になったセインに抱かれることはなかった。
セインは彼女に積もり積もった怒りをぶつけた。
「浅ましいお前の母のわがままで、私は愛する者を伴侶にできなかった。それを止めなかったお前は罪人だ。顔を見るだけで吐き気がする」
セインは婚約者だった時とは別人のような冷たい目で、チネロを睨みつけて吐き捨てた。
「3年間、白い結婚が認められたらお前を自由にしてやる。私の妻になったのだから飢えない程度には生活の面倒は見てやるが、それ以上は求めるな」
セインはそれだけ言い残してチネロの前からいなくなった。
そして、チネロは、誰もいない別邸へと連れて行かれた。
三人称の練習で書いています。違和感があるかもしれません
私と一緒にいることが苦痛だったと言われ、その日から夫は家に帰らなくなりました。
田太 優
恋愛
結婚して1年も経っていないというのに朝帰りを繰り返す夫。
結婚すれば変わってくれると信じていた私が間違っていた。
だからもう離婚を考えてもいいと思う。
夫に離婚の意思を告げたところ、返ってきたのは私を深く傷つける言葉だった。
【完結】婚約破棄されたので、引き継ぎをいたしましょうか?
碧桜 汐香
恋愛
第一王子に婚約破棄された公爵令嬢は、事前に引き継ぎの準備を進めていた。
まっすぐ領地に帰るために、その場で引き継ぎを始めることに。
様々な調査結果を暴露され、婚約破棄に関わった人たちは阿鼻叫喚へ。
第二王子?いりませんわ。
第一王子?もっといりませんわ。
第一王子を慕っていたのに婚約破棄された少女を演じる、彼女の本音は?
彼女の存在意義とは?
別サイト様にも掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる