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16話 大きな罪 その2
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(ビクティム・クラウス侯爵視点)
おかしい……何がどうなっているのだ? 私は一体、なにと戦っている……? 私の前には予定通り、メリア・デルトーイ王女殿下が居る。そう、私との関係性が強い貴族達も彼女の生の姿を見たことがある者は少ないのだ。
本日は髪を特殊な機器で大きく内巻きにしている……「ぶらしあいろん」とかいうアイテムだったと思うが。その髪型がメリア王女の魅力を一層、引き立たせていた。絶世の美女と呼んでも差し支えはあるまい。
そう……そんな彼女をお披露目し、私は優越感の頂点に君臨……そして、侯爵から公爵へと登り詰め、王国内で最高クラスの貴族となるはずだったのだ。だが、現実はどうだ? なぜ、メリア王女の隣にフューリ王太子殿下が立っている……? しかも、私を断罪するかのように……。
「クラウス卿の真実の愛、とは随分と薄っぺらいようだな……」
「フューリ王太子殿下……それは……!」
フューリ王太子殿下は、レオーネの件も織り交ぜて来ていた。いや、こっちが彼の叱責の本題なのかもしれないな……先ほどから、目つきが変わっている。私がメリア王女との婚約を王家に黙っていたこと以上に、彼が真剣になっているからだ。
レオーネの件と比べれば、メリア王女との婚約自体は不問にしてやると言わんばかりの気迫が感じられる……。
不味い……私は何か、踏んではいけない怪物の尾を踏んでしまったのか……?
「ただでさえ、メリア王女との勝手な婚約は許されないというのに……レオーネ嬢に対しての婚約破棄まで追加か。非常に残念だ、クラウス卿……」
フューリ王太子殿下は何やら、大袈裟にため息を吐いている……右腕を額に当てながら。まて、おかしいぞ……? レオーネとの婚約破棄はそこまで重大な事柄なのか? フューリ王太子殿下の考えがイマイチ良く分からない。
ここはなんと答えるべきか……慎重に判断せねば。周囲の貴族達も疑心暗鬼になっているように見受けられる。この場で信用を失墜させてしまうのは不味すぎる。見たところ、メリア王女も片棒を担いでいるように感じられるからな。
最優先すべきは、我がクラウス派の貴族の信用を失墜させないことにあるか。ならば、犠牲になってもらうのは一人しか居るまい。
「王太子殿下……ご冗談なのでしょうか? 私はメリア王女との婚約に関しては謝罪を申し上げたはずですが?」
「ああ、そうだな。それがどうした?」
「つまり……それに比べれば、レオーネ嬢との婚約破棄は些細なものでございましょう? フューリ王太子殿下がわざわざ事を荒立てることではないと思われますが……」
私は現段階で考え得る、最大限の言葉を募ったつもりだった。
「レオーネとの婚約破棄が……些細なものだと?」
なんだ……? 先ほどまでの真剣な表情から、王太子殿下は明らかに怒りのそれへと変わっていた。私はもしかすると、最も選んではいけない選択肢を選んでしまったのか? まさか……これも全て、王太子殿下の計算……?
私は彼の余りに恐ろしい表情に、思わず身震いをしてしまっていた……。
おかしい……何がどうなっているのだ? 私は一体、なにと戦っている……? 私の前には予定通り、メリア・デルトーイ王女殿下が居る。そう、私との関係性が強い貴族達も彼女の生の姿を見たことがある者は少ないのだ。
本日は髪を特殊な機器で大きく内巻きにしている……「ぶらしあいろん」とかいうアイテムだったと思うが。その髪型がメリア王女の魅力を一層、引き立たせていた。絶世の美女と呼んでも差し支えはあるまい。
そう……そんな彼女をお披露目し、私は優越感の頂点に君臨……そして、侯爵から公爵へと登り詰め、王国内で最高クラスの貴族となるはずだったのだ。だが、現実はどうだ? なぜ、メリア王女の隣にフューリ王太子殿下が立っている……? しかも、私を断罪するかのように……。
「クラウス卿の真実の愛、とは随分と薄っぺらいようだな……」
「フューリ王太子殿下……それは……!」
フューリ王太子殿下は、レオーネの件も織り交ぜて来ていた。いや、こっちが彼の叱責の本題なのかもしれないな……先ほどから、目つきが変わっている。私がメリア王女との婚約を王家に黙っていたこと以上に、彼が真剣になっているからだ。
レオーネの件と比べれば、メリア王女との婚約自体は不問にしてやると言わんばかりの気迫が感じられる……。
不味い……私は何か、踏んではいけない怪物の尾を踏んでしまったのか……?
「ただでさえ、メリア王女との勝手な婚約は許されないというのに……レオーネ嬢に対しての婚約破棄まで追加か。非常に残念だ、クラウス卿……」
フューリ王太子殿下は何やら、大袈裟にため息を吐いている……右腕を額に当てながら。まて、おかしいぞ……? レオーネとの婚約破棄はそこまで重大な事柄なのか? フューリ王太子殿下の考えがイマイチ良く分からない。
ここはなんと答えるべきか……慎重に判断せねば。周囲の貴族達も疑心暗鬼になっているように見受けられる。この場で信用を失墜させてしまうのは不味すぎる。見たところ、メリア王女も片棒を担いでいるように感じられるからな。
最優先すべきは、我がクラウス派の貴族の信用を失墜させないことにあるか。ならば、犠牲になってもらうのは一人しか居るまい。
「王太子殿下……ご冗談なのでしょうか? 私はメリア王女との婚約に関しては謝罪を申し上げたはずですが?」
「ああ、そうだな。それがどうした?」
「つまり……それに比べれば、レオーネ嬢との婚約破棄は些細なものでございましょう? フューリ王太子殿下がわざわざ事を荒立てることではないと思われますが……」
私は現段階で考え得る、最大限の言葉を募ったつもりだった。
「レオーネとの婚約破棄が……些細なものだと?」
なんだ……? 先ほどまでの真剣な表情から、王太子殿下は明らかに怒りのそれへと変わっていた。私はもしかすると、最も選んではいけない選択肢を選んでしまったのか? まさか……これも全て、王太子殿下の計算……?
私は彼の余りに恐ろしい表情に、思わず身震いをしてしまっていた……。
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