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11話 パーティー開催 その3
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「クラウス卿……」
「これはこれは、ダンテ・ルヴィンス伯爵。私の主催のパーティーに出席していただけるとは、感謝するぞ」
「いえ、とんでもないことにございます」
ダンテ兄さまは形式的な挨拶はしたけれど、その表情は全く笑っていない。私の婚約破棄の相手……ルヴィンス家を簡単に切り捨てた相手なのだから、当然かもしれないけれど。
「しかし意外だったな、ダンテ殿が来られたこともそうだが……」
「ビクティム侯爵……」
ビクティム侯爵は特に悪びれる様子もなく、私に視線を合わせていた。もしかしたら、謝罪の言葉が返ってくるのかと期待したけれど、その期待は裏切られることになる。
「まさか、レオーネがここに来るとは思わなかったぞ? 私室で泣きじゃくっているのかと不安になっていたが……元気そうで何よりだ」
「……?」
私は呆れてしまい、ついつい言葉を出すのを忘れてしまっていた。まるで他人事のような言い回し……いえ、最初から何もなく、私が別の事件に巻き込まれたことを心配しているかのようだった。信じられない……この人にとって婚約破棄は、もうなかったも同然ということなのかしら?
きっとそうなんだと思う。未だにルヴィンス家に一切の謝罪をしていないことが、何よりの証拠なのだから。
「クラウス卿、婚約破棄の件について、私から手紙及び使者を送っていたはずですが? 全くお返事がないのはどういったことでしょうか?」
このパーティーが開催されるより前に、ダンテ兄さまは私の為に動いてくれていた。しかし、その件に関してもビクティム侯爵は無視を続けていたのだ。
「ふむ、それは申し訳ないな。この大規模パーティー開催の準備で忙しかったのだ。婚約破棄の件については後日、謝罪に向かおうとは考えていたさ」
「我がルヴィンス家の扱いはその程度で構わないだろう……それが本音ですかな?」
「ふむ、それは心外な発言だなダンテ殿。確かにそうとも言えるかもしれんが……人には優先順位というものがあってだな」
「レオーネとの婚約破棄をその程度に考えているのですか……?」
「おいおい、せっかくのパーティーじゃないか、ダンテ殿。怒ることはないだろう?」
ビクティム侯爵の態度は明らかに人の感情を逆撫でするような態度だ。普段は温厚なダンテ兄さまも怒りの表情に変わっていた。先ほどの笑っていない表情とは明らかに違う。
「ダンテ兄さま……一旦、落ち着いては如何でしょうか? 私の為にしてくださるのは、とても嬉しいのですが」
「あ、ああ……そうだな」
周囲の貴族たちの目に触れて、ダンテ兄さまの印象が悪くなっては私も嫌だった。彼を一旦、落ち着かせる。
「ふふふ、お前たちは私の華々しい婚約発表を目に焼き付けておくんだな。謝罪ならば、その後にいくらでもしてやろう、はっはっは……!」
ビクティム侯爵は私達のことなど歯牙にも掛けていない。余裕の表情を一切崩すことなくそう言い放つと、彼は振り返り、そのまま去って行った。その表情が絶望のそれに変わるとも知らずに……。
「これはこれは、ダンテ・ルヴィンス伯爵。私の主催のパーティーに出席していただけるとは、感謝するぞ」
「いえ、とんでもないことにございます」
ダンテ兄さまは形式的な挨拶はしたけれど、その表情は全く笑っていない。私の婚約破棄の相手……ルヴィンス家を簡単に切り捨てた相手なのだから、当然かもしれないけれど。
「しかし意外だったな、ダンテ殿が来られたこともそうだが……」
「ビクティム侯爵……」
ビクティム侯爵は特に悪びれる様子もなく、私に視線を合わせていた。もしかしたら、謝罪の言葉が返ってくるのかと期待したけれど、その期待は裏切られることになる。
「まさか、レオーネがここに来るとは思わなかったぞ? 私室で泣きじゃくっているのかと不安になっていたが……元気そうで何よりだ」
「……?」
私は呆れてしまい、ついつい言葉を出すのを忘れてしまっていた。まるで他人事のような言い回し……いえ、最初から何もなく、私が別の事件に巻き込まれたことを心配しているかのようだった。信じられない……この人にとって婚約破棄は、もうなかったも同然ということなのかしら?
きっとそうなんだと思う。未だにルヴィンス家に一切の謝罪をしていないことが、何よりの証拠なのだから。
「クラウス卿、婚約破棄の件について、私から手紙及び使者を送っていたはずですが? 全くお返事がないのはどういったことでしょうか?」
このパーティーが開催されるより前に、ダンテ兄さまは私の為に動いてくれていた。しかし、その件に関してもビクティム侯爵は無視を続けていたのだ。
「ふむ、それは申し訳ないな。この大規模パーティー開催の準備で忙しかったのだ。婚約破棄の件については後日、謝罪に向かおうとは考えていたさ」
「我がルヴィンス家の扱いはその程度で構わないだろう……それが本音ですかな?」
「ふむ、それは心外な発言だなダンテ殿。確かにそうとも言えるかもしれんが……人には優先順位というものがあってだな」
「レオーネとの婚約破棄をその程度に考えているのですか……?」
「おいおい、せっかくのパーティーじゃないか、ダンテ殿。怒ることはないだろう?」
ビクティム侯爵の態度は明らかに人の感情を逆撫でするような態度だ。普段は温厚なダンテ兄さまも怒りの表情に変わっていた。先ほどの笑っていない表情とは明らかに違う。
「ダンテ兄さま……一旦、落ち着いては如何でしょうか? 私の為にしてくださるのは、とても嬉しいのですが」
「あ、ああ……そうだな」
周囲の貴族たちの目に触れて、ダンテ兄さまの印象が悪くなっては私も嫌だった。彼を一旦、落ち着かせる。
「ふふふ、お前たちは私の華々しい婚約発表を目に焼き付けておくんだな。謝罪ならば、その後にいくらでもしてやろう、はっはっは……!」
ビクティム侯爵は私達のことなど歯牙にも掛けていない。余裕の表情を一切崩すことなくそう言い放つと、彼は振り返り、そのまま去って行った。その表情が絶望のそれに変わるとも知らずに……。
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