9 / 11
9話 大公との会話 その1
しおりを挟む
「叔父上……先ほどまでの言葉は全て聞いていました。率直な感想を言わせてもらうと、とても大公殿下とは思えない発言でしたね」
「それは……」
「ウォルト大公殿下、私としましてもとても残念に思います」
「カイマール大臣……そうか、ジェシカの家系には大臣参謀の其方が居たのだったな……」
ブラックル様は今更になって気付いたようだ。高額な慰謝料を請求するのだから、事前に相手の家族構成くらいは調べていないと話にならないと思うけれど。私とラクロアの関係も含めて。その辺りを知らなかったということは、バームという執事も大したことないわね。
「ラクロア……! まさか、お前がこんなところに居るとはな……」
何を考えているのか、ラクロアのことを急に呼び捨てにするブラックル様。頭が混乱しているのかもしれない。
「呼び捨てですか、叔父上」
「当たり前だ、私は大公なのだからな。王子という立場は貴族令嬢と同じで、家督にならなければ、圧倒的な権力の行使は出来ないはずだ。お前はまだまだヒヨッ子なのだよ」
「まあ、それについては否定はしません。私もまだまだですからね」
焦っているブラックル様と冷静沈着なラクロア……これではどちらが大人か分かったものではないわね。
「ウォルト大公殿下、ラクロア王子殿下に対して失礼かと思われますが……あなたはもう、王族ではないのですよ?」
「カイマール大臣も下位の貴族の分際でよく私に意見が出来るな。大臣という役職に胡坐をかいているのではないかな?」
「な、なんですと?」
大公殿下よりは地位としては下がるけれど、大臣の一人である伯父様に対しても、ブラックル様は非常に強気だった。
「私がラクロアに対して敬語など使う必要はない……そうだな? バームよ」
しかも、敬語云々に関して執事のバームに質問しているし……この人は自分の意見がないのだろうか。
「その辺りは貴族間でも、意見の別れているところだと思われます」
「うむ、そうだったのか……まあ、良しとするか」
流石のバームもハッキリとしたことは言わずに、言葉を濁していた。逃げたわね……。
それにしても……驚くほどに滅茶苦茶な発言をブラックル様は行っている。こんなことを言って大丈夫なのかしら、と思えるくらいだ。
「カイマール殿、私についての態度は別に構わないさ。確かに叔父上は父上の弟になるからな。私に対して敬語を使うというのは抵抗があるのだろう」
「ラクロア王子殿下……しかし」
「構わないさ」
「ははは、当然じゃないか」
言葉遣いについて、ラクロアは普通に許しているようだった。大人な対応……それと比べて、ブラックル様は子供にしか見えない。私は一時期、この人と婚約していたのよね……なんだか、とても恥ずかしくなってきた。
「それよりも、叔父上。ジェシカに対して行う予定の、高額な慰謝料請求についてだが……」
「ん? ああ、やはりその件でこの屋敷に集まっていたのか」
「ええ、そういうことになります。ただし、叔父上の願いは間違いなく届かないでしょうね」
「何……?」
自信満々のラクロアと眉間にしわを寄せるブラックル様。二人の表情はまさに対極と呼んで差し支えのないものになっていた。
「それは……」
「ウォルト大公殿下、私としましてもとても残念に思います」
「カイマール大臣……そうか、ジェシカの家系には大臣参謀の其方が居たのだったな……」
ブラックル様は今更になって気付いたようだ。高額な慰謝料を請求するのだから、事前に相手の家族構成くらいは調べていないと話にならないと思うけれど。私とラクロアの関係も含めて。その辺りを知らなかったということは、バームという執事も大したことないわね。
「ラクロア……! まさか、お前がこんなところに居るとはな……」
何を考えているのか、ラクロアのことを急に呼び捨てにするブラックル様。頭が混乱しているのかもしれない。
「呼び捨てですか、叔父上」
「当たり前だ、私は大公なのだからな。王子という立場は貴族令嬢と同じで、家督にならなければ、圧倒的な権力の行使は出来ないはずだ。お前はまだまだヒヨッ子なのだよ」
「まあ、それについては否定はしません。私もまだまだですからね」
焦っているブラックル様と冷静沈着なラクロア……これではどちらが大人か分かったものではないわね。
「ウォルト大公殿下、ラクロア王子殿下に対して失礼かと思われますが……あなたはもう、王族ではないのですよ?」
「カイマール大臣も下位の貴族の分際でよく私に意見が出来るな。大臣という役職に胡坐をかいているのではないかな?」
「な、なんですと?」
大公殿下よりは地位としては下がるけれど、大臣の一人である伯父様に対しても、ブラックル様は非常に強気だった。
「私がラクロアに対して敬語など使う必要はない……そうだな? バームよ」
しかも、敬語云々に関して執事のバームに質問しているし……この人は自分の意見がないのだろうか。
「その辺りは貴族間でも、意見の別れているところだと思われます」
「うむ、そうだったのか……まあ、良しとするか」
流石のバームもハッキリとしたことは言わずに、言葉を濁していた。逃げたわね……。
それにしても……驚くほどに滅茶苦茶な発言をブラックル様は行っている。こんなことを言って大丈夫なのかしら、と思えるくらいだ。
「カイマール殿、私についての態度は別に構わないさ。確かに叔父上は父上の弟になるからな。私に対して敬語を使うというのは抵抗があるのだろう」
「ラクロア王子殿下……しかし」
「構わないさ」
「ははは、当然じゃないか」
言葉遣いについて、ラクロアは普通に許しているようだった。大人な対応……それと比べて、ブラックル様は子供にしか見えない。私は一時期、この人と婚約していたのよね……なんだか、とても恥ずかしくなってきた。
「それよりも、叔父上。ジェシカに対して行う予定の、高額な慰謝料請求についてだが……」
「ん? ああ、やはりその件でこの屋敷に集まっていたのか」
「ええ、そういうことになります。ただし、叔父上の願いは間違いなく届かないでしょうね」
「何……?」
自信満々のラクロアと眉間にしわを寄せるブラックル様。二人の表情はまさに対極と呼んで差し支えのないものになっていた。
21
お気に入りに追加
1,944
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
聖女にはなれませんよ? だってその女は性女ですから
真理亜
恋愛
聖女アリアは婚約者である第2王子のラルフから偽聖女と罵倒され、婚約破棄を宣告される。代わりに聖女見習いであるイザベラと婚約し、彼女を聖女にすると宣言するが、イザベラには秘密があった。それは...
まさか、今更婚約破棄……ですか?
灯倉日鈴(合歓鈴)
恋愛
チャールストン伯爵家はエンバー伯爵家との家業の繋がりから、お互いの子供を結婚させる約束をしていた。
エンバー家の長男ロバートは、許嫁であるチャールストン家の長女オリビアのことがとにかく気に入らなかった。
なので、卒業パーティーの夜、他の女性と一緒にいるところを見せつけ、派手に恥を掻かせて婚約破棄しようと画策したが……!?
色々こじらせた男の結末。
数話で終わる予定です。
※タイトル変更しました。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる