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2話 ジェシカの味方は…… その1

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「むむう……婚約破棄か。ジェシカよ、お前の方からそれを言ったのか?」

「申し訳ございません、お父様。どうしても、我慢できなくなってしまって……」

「そうか……うむ。だが、お前の心情を考えれば仕方のないことだろう」


 私は屋敷に戻るとお父様に婚約破棄の件を伝えた。お父様は驚いていたけれど、私の判断を支持してくれているようだ。私はそれがとても嬉しかった。


「ありがとうございます、お父様」

「何を言うか、ジェシカ。お前が立派に意見を言える存在に成長してくれて嬉しいぞ。貴族社会は上下関係が重要ではあるが、間違いは正さなければならん。そうでなければ、腐敗していくだけだからな」


 お父様も結構、大公であるブラックル・ウォルト様を滅茶苦茶に言っていた。不敬罪になりかねない言葉ではあったけれど、私の判断が間違っていなかったと確信できる事態だ。

「しかし、婚約破棄を言ってまさか慰謝料を請求してくるとは……大公殿下とは思えぬ言動だ。ブラックル様の人格を疑ってしまうな、本当に」

「はい、私もそう思います。ブラックル様は部屋を出て行き、大公殿下としての権力をフルに活用するかのような口振りでした……とても、残念で怖いです」

「それは確かに怖いな……」


 お父様も頷いている。私達だけではとても、大公殿下であるブラックル様に盾突くことは出来ないだろう。それは私だけでなくお父様自身が一番よく分かっているはず。

 同じ貴族とは言っても、侯爵と大公では地位がかなり違うからだ。

「お父様、如何いたしましょうか?」

「ジェシカが心配することではない。任せておけ、私にも考えがある。まずは、私の兄に相談してみるとしようか」

「伯父様でございますね? それでは私は……ラクロアに相談してみようと思います」

「うむ……それではお互いに行動を開始するとしようか」

「はいっ! お父様!」


 お父様と私……それぞれの相談相手が決まった瞬間であった。ちなみにお父様の兄である伯父様は、ラーゼフォン王国の大臣参謀の一人である。つまりは国王陛下に進言できる数少ない人物の一人というわけで。

 あと、私が相談しようと思っている相手は、幼馴染で私と同じ18歳のラクロア・ラーゼフォン第三王子殿下だ。

 ブラックル様はこういった事実を加味していたのかしら……いえ、あの態度はどう見ても知らなかったわよね。もしも知らなかったのであれば、大公殿下にしてはあり得ないほどの情報弱者と言えた。

 ブラックル・ウォルト様……後悔するのはどちらになるんでしょうね?
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