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11話 真相 その2
しおりを挟む「ど、どういうことですか……? えっ?」
「あら? 聞こえなかったのかしら?」
フィルア姉さまはとても素敵な笑顔を見せていたけれど、その内面は鬼になっている様子だった。決してそれを表には出していないけれど、私には分かる。
ブンド様は混乱しているのか、フィルア姉さまに再度、質問していたけれど……なんて命知らずな。
「そちらのルーザ嬢が言った通りだけど……不快を通り越して、その察しの悪さには呆れて来るわね」
「フィルア王女殿下……と、ということは……?」
「フェリスは私の実の妹、王家の人間なのよ。隠された第二王女殿下は彼女で間違いないわ」
「そ、そんなことが……!!」
ブンド様はこれまでで一番驚いた表情を見せていた。ようやく全てを理解したといったところかしら。ルーザ嬢が分かりやすく説明してくれていたのに、すごい二度手間になってしまったわね。
「フェリスの兄であるフォルテ殿がこの場所に来ている段階で気付くべきだったわね。まあ、ルーザ嬢の方は気付いていたみたいだけど」
「フィルア王女殿下……」
「フェリス、何か言いたいことがあるならどうぞ」
このタイミングで私に話を振って来る姉さま。ボロクソに非難するなら今がチャンスよ、と言いたいのだろうか?
フィルア姉さまの顔を見ているとハッキリと書いてある。
「ブンド・マルカール侯爵……フェリス・シネスタ改め、フェリス・バスティンと申します。以後、お見知りおきを……」
「フェリス……いえ、フェリス様! は、ははぁぁぁ!」
先ほどまでの態度とは全く違うブンド様。90度に頭を下げて私に礼ををしていた。
「し、知らぬこととは言え……! 大変失礼致しました! まさか、子爵令嬢として養子縁組を交わされていたとは! それはもう、思いもよらぬことでして!」
「は、はあ……」
ブンド様の態度は完全に変わったけれど、私には責任逃れをしている風に映っていた。なんていうか、知らなかったから仕方ないで通そうとしているような。
「ブンド様……何か責任逃れをしているように見えるんですが?」
「フェリス様! そんな滅相もございません……! ですが知らなかったのは事実ですので、それを報告したまででございます!」
ブンド様のテンションがおかしくなっているけれど、やはり責任逃れはしたいようね。そんなことさせないけれど。例え私が見逃したとしても、フィルア姉さまが見逃すとは到底思えないし……。
「それにしても……フォルテ・シネスタ殿は人が悪いですな! 自分の妹君が王女殿下であることを隠されるなんて! 最初の段階で知っていれば、私がフェリス様に無礼を働くことなんてありませんでしたのに」
「はっ? 何を言ってるんですか?」
「この男は……シネスタ子爵家になら、無礼なことを言っても良いみたいな考え方ね」
ブンド様は完全に混乱しているのか、それとも素なのか分からないけれど、地雷を自ら踏み抜くタイプのようだ。隣に立っているルーザ嬢も驚きのあまり、目を覆っていた。
「えっ! 私は何かおかしなことを言いましたでしょうか!?」
……さっきからおかしなことしか言っていない。いい加減に気付いて欲しいわね。
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