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5話 王家の血筋 その1
しおりを挟む「やっほ、フェリス。ずいぶんと久しぶりじゃない」
「ね、姉さま!? どうしてここに……?」
シネスタ子爵家の屋敷を訪れたのは王家……フィルア・バスティン第一王女殿下で私の実の姉になる。私がシネスタ子爵家に移ってからは、あまり会っていなかったのだけれど。
「驚きました……フィルア姉さまがいきなり来るなんて」
「そうね。本来なら事前のアポイントを取らせてもらうんだけど、今回は急を要していたからね」
「……もしかして、私が婚約破棄されたことと関係があったりします?」
「オフコース! 大有りよ大有り! 流石は私の妹なだけあるわ、とても賢いわね!」
フィルア姉さまは相変わらずの様子だった。基本的に私の前ではこういう風に明るく振る舞うことが多い。今日に限っては婚約破棄の事実もあるし、慰めてくれているのかもしれないけれど。
「でも驚きました、姉さま。お父様達に用事でしたら分かるんですけど、いきなりどうしたんです? しかも、婚約破棄の件についてなんて……えっ?」
私は一瞬そこで、思考が止まってしまった。姉さまがここに居るということは……まさか。
「今日、なぜ私が来たか分かったようね? ちなみにお父様が来なかったのは、ヴァンダー・シネスタ子爵達を動揺させない為なの」
「ね、姉さま……」
フィルア姉さまの言う「お父様」というのは勿論、ヘルグ・バスティン国王陛下のことを意味している。まあ、ヘルグ国王陛下がいきなり現れたりしたら、確かに混乱するけれど。フィルア姉さまでも十分な気はする。
なにせ、彼女は王位継承権第三位に当たる人物なのだから。
「ふふふ……ちょっと、ブンド・マルカール侯爵は調子に乗り過ぎたみたいね。同時にルーザ・オニオール伯爵令嬢も」
不敵に笑っている姉さまがとても怖く思えた。確かにブンド様は酷いことをしたし、ルーザ嬢もそれに乗る形で婚約をOKしたのだろうけれど。
「こんな身勝手なことをしておいて、自分達が無事に済むと考えているのだとしたら……本当におめでたいわね」
「姉さま、お気持ちはとても嬉しいのですが、一応、ブンド様は慰謝料はちゃんと払うと言っていますし……シネスタ子爵家にもこれ以上の迷惑を掛けたくないので、穏便に済ませたいと思っているのですが」
「あら、そうなの?」
「ええ……侯爵家が本気になったら、私達はかなり分が悪いと思うので」
「ふ~ん、なるほどね……」
先ほどまでは怖かった姉さまだけれど、私の意志を汲み取ってくれたのか、普通の態度に戻っていた。
「話は分かってくれましたか?」
「ええ、よく分かったわ」
「姉さま! ありがとうございます!」
久しぶりの再会ではあるけれど、私にとても優しかったフィルア姉さま。私が養女としてシネスタ子爵家に引き取られてからも、それは変わっていないのだ。血筋というものはそういうものなのかもしれない。
「よく分かったけれど、あなたが王女に戻る場合は話が別よね」
「……えっ?」
「実は宮殿ではフェリスを王女に戻す動きが活発になっているのよ。侯爵と婚約破棄した事実は宮殿でも重要視されているからね」
「え、ええ~~~!?」
なんだか話の流れが大きく変わったような気がする。私の現在の地位は子爵令嬢だけれど、それが王女殿下になる? これはとてつもない程の地位の向上を意味していた。
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