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20話 エルドとの食事 その4
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「お、お客様……! 他のお客様のご迷惑になりますので……!」
「あんたがリーシャを追放したんでしょうが! 私のせいにしないでよっ!」
「てめぇ、ミカエラ! ちょっと良い女だからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「はあ? そんなこと関係ないでしょ? 私だってアキサエルの遠距離攻撃役として活躍してんのよ? あんたに意見言えないなんてことないし! 勘違いしてんじゃないわよ!」
店員さんが必死に止めているみたいだけれど、アキサエルのメンバーはよりヒートアップしているようだった。あれだと素人では絶対に止められないわね。それと、ミカエラの発言は悔しいけど的を射ていると思う。
「私なんかで大丈夫……? 一応、言っておくけど、戦闘能力はないんだけど……」
「ああ、それは問題ないさ。私がしっかりガードするから。それにガードアップの魔法も行使できるからね」
「そうなんだ」
「どうだい? 私と一緒に偶に冒険へ出かけるというのは。お店のこともあるから、スケジュールは君に合わせるよ」
隣でヒートアップしている連中とは違う空間のように、こちらでは静寂が流れている。これもエルドが一緒に居てくれるからなんだけどね。彼が居れば、万が一の時でもなんとかなるだろうし。
「そうね……私でよければ、よろしくお願いします」
私はまるで、結婚の申し出を承諾したみたいに、エルドに頭を下げていた。実際は冒険のパートナーとして選ばれただけなんだけど、それはそれで嬉しいし。
「そうか、よかったよ。ありがとう、リーシャ」
「いえいえ、どういたしまして」
「料理が冷めてもあれだし、食べようか?」
「そうね、そうしましょう」
びっくりするほどに、こちらの食卓は静寂に進行していた。私もエルドも余計な雑音を完全にシャットアウトしているから。こうして、私は単独の凄腕冒険者、エルドのパートナーになったのでした。
この雰囲気でちゃんちゃんと、幕を引いて欲しかったんだけれど……当然、そう上手くいくはずもなく……。
「どうしてほしいってんだよ? ああ?」
「決まってんでしょ、このままだとダンジョン攻略できないじゃない。新しい子連れて来てよ」
「リーシャと同じようなスキル持ちは、街には居ないだろうがな……」
「キリング……て、ことは……」
「元々はカシムのせいだろ? 土下座でもして、リーシャに戻ってもらうように頼み込むんだな」
音声を出来るだけシャットアウトしていたつもりだけど、聞き捨てならない会話文が聞こえて来たような……。私は我慢の限界になって……。
「あ、リーシャ……!」
「ふざけるんじゃないわよっ!!」
私はつい、怒りに任せて立ち上がり、アキサエルのメンバーを怒鳴り散らしてしまった。エルドが制止していたけど、まったく無意味だったわね……。
「あんたがリーシャを追放したんでしょうが! 私のせいにしないでよっ!」
「てめぇ、ミカエラ! ちょっと良い女だからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「はあ? そんなこと関係ないでしょ? 私だってアキサエルの遠距離攻撃役として活躍してんのよ? あんたに意見言えないなんてことないし! 勘違いしてんじゃないわよ!」
店員さんが必死に止めているみたいだけれど、アキサエルのメンバーはよりヒートアップしているようだった。あれだと素人では絶対に止められないわね。それと、ミカエラの発言は悔しいけど的を射ていると思う。
「私なんかで大丈夫……? 一応、言っておくけど、戦闘能力はないんだけど……」
「ああ、それは問題ないさ。私がしっかりガードするから。それにガードアップの魔法も行使できるからね」
「そうなんだ」
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「そうね……私でよければ、よろしくお願いします」
私はまるで、結婚の申し出を承諾したみたいに、エルドに頭を下げていた。実際は冒険のパートナーとして選ばれただけなんだけど、それはそれで嬉しいし。
「そうか、よかったよ。ありがとう、リーシャ」
「いえいえ、どういたしまして」
「料理が冷めてもあれだし、食べようか?」
「そうね、そうしましょう」
びっくりするほどに、こちらの食卓は静寂に進行していた。私もエルドも余計な雑音を完全にシャットアウトしているから。こうして、私は単独の凄腕冒険者、エルドのパートナーになったのでした。
この雰囲気でちゃんちゃんと、幕を引いて欲しかったんだけれど……当然、そう上手くいくはずもなく……。
「どうしてほしいってんだよ? ああ?」
「決まってんでしょ、このままだとダンジョン攻略できないじゃない。新しい子連れて来てよ」
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「キリング……て、ことは……」
「元々はカシムのせいだろ? 土下座でもして、リーシャに戻ってもらうように頼み込むんだな」
音声を出来るだけシャットアウトしていたつもりだけど、聞き捨てならない会話文が聞こえて来たような……。私は我慢の限界になって……。
「あ、リーシャ……!」
「ふざけるんじゃないわよっ!!」
私はつい、怒りに任せて立ち上がり、アキサエルのメンバーを怒鳴り散らしてしまった。エルドが制止していたけど、まったく無意味だったわね……。
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