【ポーション製造】のスキルを持っていたけど、パーティ追放された件~薬屋経営することにし、高名な冒険者も来てくれました~

ルイス

文字の大きさ
上 下
13 / 27

13話 嫌な奴がやってきた その3

しおりを挟む

 私の店の前での騒動を聞きつけたのか、ボイドさんが酒場から、物凄い剣幕で現れた。その視線はカシムに向いている。

「てめぇ……」

「カシム、いい加減にしろよ? これ以上、この場所で因縁つけて暴れるようなら、ギルドへの報告が必要になるな」

「……」


 ギルドという言葉が出て来た瞬間、カシムもミカエラも黙ってしまった。先ほどの勢いが嘘のように。ギルドは冒険者登録を行うところでもあり、依頼を受ける場所でもある。いくら傍若無人なカシムといえども、冒険者で生計を立てているわけだから、下手にギルドに報告されたくないって考えかしら。

 振り上げそうになっていた拳も、いつの間にか下がっていたわ。

「はっ、こっちも暇じゃねぇんだよ。これからダンジョンへ向かう必要もあるからな」

「ちょ、ちょっと、カシム? どうするの?」

「このままで済ますつもりはねぇが……今日のところは退散してやる」

「それはありがたい」

 大きく舌打ちをしながら、カシムとミカエラは去って行った。完全に絡まれていたエルドは、最後まで冷静だったのは凄いと思う。私が同じ立場だったら、もっとキレていたでしょうね……。

「ふう、行ったか」

「あんたは確か……エルド・マーカスだな? 内容は大体は聞いていたが、災難だったな」

「いえ、とんでもない。リーシャが無事で良かったですよ。元々は彼女に因縁をつけていたようですからね」

「まあ、俺が言うのもなんだが……リーシャを助けてくれて感謝する。今度、酒場に来てくれたら奢るぜ?」

「よろしいんですか? それはとても光栄です」

 なんだかボイドさんは、娘を助けられた親のような表情になっていた。いえ、実際、私のことをそういう風に見てくれてるんだと思うけどさ。なんだかちょっと、照れ臭いわ……。

「リーシャ、また彼らは来るかもしれないな」

「は、はい……そうですね……」

 カシムの執念深さ……最後の捨て台詞からも、絶対にまた来るでしょうね。どうしようかしら?

「その時は、ギルドの名前を出すといいかもしれない。それから、私も出来るだけこの店を訪れることにするよ」

「エルドさん、いえ、そこまでは……」

「乗り掛かった船だからね。君が迷惑でなければだが」

「いえ、もちろん迷惑なんかじゃありませんけど」

 エルドが来てくれることに無意識の内に喜んでいる自分が居た。だから、迷惑だなんてことは全くなかったりする。とはいえ、無理のない範囲で来て欲しいけど。

「ここはポーション屋だからね。どのみち、足を運ぶ機会は多くなると思っていたから丁度いいよ」

「ありがとうございます、エルドさん。特別製のポーションを用意して待ってますね」

「ははは。では、よろしくお願いしようかな」

「はい」

 特別製のポーションていうのはないけれど、まあ気持ちを込めて作るポーションということにしておこう。なんだかいい雰囲気が流れている気がする……。

「オホン、お前ら、そういうことは二人きりの時にした方がいいぞ……」

「あっ……」

「あっ……」

 私とエルドの声は見事にハモってしまった。ボイドさんの居心地の悪そうな視線を見て、私達二人は顔を赤くしてしまう。と、年頃の二人だしね……! こういうこともあるわよ……!
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

王子の呪術を解除したら婚約破棄されましたが、また呪われた話。聞く?

十条沙良
恋愛
呪いを解いた途端に用済みだと婚約破棄されたんだって。ヒドクない?

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

お妃様に魔力を奪われ城から追い出された魔法使いですが…愚か者達と縁が切れて幸せです。

coco
恋愛
妃に逆恨みされ、魔力を奪われ城から追い出された魔法使いの私。 でも…それによって愚か者達と縁が切れ、私は清々してます─!

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます」

まほりろ
恋愛
※小説家になろう「異世界転生ジャンル」日間ランキング9位!2022/09/05 仕事からの帰り道、近所に住むセレブ女子大生と一緒に異世界に召喚された。 私たちを呼び出したのは中世ヨーロッパ風の世界に住むイケメン王子。 王子は美人女子大生に夢中になり彼女を本物の聖女と認定した。 冴えない見た目の私は、故郷で女子大生を脅迫していた冤罪をかけられ追放されてしまう。 本物の聖女は私だったのに……。この国が困ったことになっても助けてあげないんだから。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※小説家になろう先行投稿。カクヨム、エブリスタにも投稿予定。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

「お前を愛することはない」と言った夫がざまぁされて、イケメンの弟君に変わっていました!?

kieiku
恋愛
「お前を愛することはない。私が愛するのはただひとり、あの女神のようなルシャータだけだ。たとえお前がどんな汚らわしい手段を取ろうと、この私の心も体も、」 「そこまでです、兄上」 「なっ!?」 初夜の場だったはずですが、なんだか演劇のようなことが始まってしまいました。私、いつ演劇場に来たのでしょうか。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

処理中です...