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7話 出会い その2
しおりを挟む「あ、あの……あなたは、どこかでお会いしませんでしたか?」
私は気になってしまったので、意を決して赤い髪の男性に質問してみることにした。
「ああ、済まない。自己紹介がまだだったな。私の名前はエルド・マーカスだ、職業は冒険者をしている」
「エルド・マーカス……?」
聞き覚えがあった……と、いうより実際に見たこともあったわ。私が予想した通り有名な冒険者で、チームを持たず、単独で活動しているって噂の……。
「すごい……あの、エルドさんですか? 単独で冒険者活動をして、非常に大きな功績を上げているって噂の」
「単独……か、まあ正確に言えば語弊はあるが、一応は単独で活動していることは事実だ」
「あのエルド・マーカスさんが私の店に……」
これは正直に驚いても良いと思う。カシムの冒険者チーム「アキサエル」に居た頃からその噂は聞いていたし、事実、大通りの人々の何人かはこちらを見ているし。多分、彼のことを見ているんだと思う。
「ふむ、かなり良質なポーションのようだね。君はもしかして、凄い素質を秘めているんじゃないか? なぜ大通りで露店商を?」
私がここで店を構えていることを不思議に思ったのか、エルドは私に質問をしてくる。経緯については答えにくいわ……まあ、隠すほどのことでもないか。どうせ、冒険者間では噂になりつつあるだろうし。
「アキサエルってパーティでこの間まで活動していたんですけど……リーダーに追放されちゃって」
「ポーション製造が出来る者を追放……?」
「あはは……まあ、それには色々と事情があったんです」
隠すことでもないけれど、エルドに言うのは憚られてしまった。なんていうか、恥ずかしいし、情けない部分を見せたくないって思ってしまったから。
「そうか……まあ、深い事情があったんだろうね。すまない、プライベートなことを聞いてしまって」
「いえ、気にしないでください。冒険者間では割と広まっているかもしれませんし……」
「そうか、確かにアキサエルは有名なチームの一つだからな。そのチームのことであれば、噂も広まるか。しかし……後方支援をしていたであろう君が居なくなって、彼らは大丈夫なのか? 他にも後方支援の者が?」
私は質問に関しては、高速で首を左右に振ってみせた。私は田舎から出て来てから、1年間も後方支援として活躍していたんだから、それに対しての自負は大きかった。カシムもギリアンもミカエラも攻撃一辺倒の脳筋というか……まあ、ギリアンは壁役もこなしていたけれど、回復や支援とは無縁だったわね。
普通の生活に関しても、私の一つ年上のミカエラは、19歳にもなって料理や家事はほとんどダメだったし……結局、私がその辺りもすることになって。そういえば、アキサエルの仮住まいはどうなっているのかしらね。
多分、まだみんなは住んでいるんだろうけど……。
「他のメンバーは攻撃力はありましたけど、後方支援できるような人ではなかったです。それだけは確信しています」
「なかなか大変だったみたいだな……ええと」
「あ、私はリーシャ・フォスターって言います。18歳ですね」
「リーシャか。私は先ほども言ったがエルドだ。年齢も20歳なので気さくに話しかけてくれて構わないよ」
「そうですね……」
「ああ、いきなりでは難しいか。とにかく、また寄らせてもらうよ」
「はい、お待ちしておりますね。常連さんになっていただけると、露店商から、豪華なお店にジャンプアップまでの期間が短くなるかもしれませんので……なんちゃって」
「ははは、なるほど。では、なるべく手伝わせていただくとしようかな」
20歳っていったらカシムよりも歳下なんだ、なるほど……まあ、敬語に関しては追々ってところかしらね。
何にしてもエルドとの仲が少し縮まったような気がしていた。やっぱりこういう出会いっていいわよね……薬屋を続けていたら素敵な出会いも増えるかしら……?
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