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4話 露店商から始める その1
しおりを挟む「よっしゃ、ここを使えリーシャ!」
「えっ、ここって……」
ボイドさんに案内された場所は、彼の酒場「チューバッカ」が面している大通り。つまりは、酒場の近くに連れて来られただけ……。え、ここで何をしろって言うの……?
「あの~、ボイドさん? 連れて来られた意味が知りたいんだけど……」
「いいか? リーシャ。店っていうのは、最初からデカくなるわけじゃねぇ。ほら、見てみろ」
「はあ……」
そう言いながら、ボイドさんが指差した方向。そこには、冒険者御用達の武具屋「ハーヴェスト」があった。6階建ての豪華な建物で相当数の武具が揃えられていることが、すぐに分かる。
「あのハーヴェストのオーナーは俺と幼馴染なんだが……最初は露店商からのスタートだった」
「へえ、そうなんだ」
露店商……つまりは路上販売ってことよね。何年であんな巨大な店になったのかは不明だけど、そう考えるとすごいのかも。
「つまりだ、お前も露店ポーション屋から始めろってことだよ」
「露店ポーション屋……う、うん、それは分かったけれど、この大通りの場所で始めるの?」
「馬鹿野郎、ここは俺の酒場の目の前だぜ?」
「ああ、なるほど……」
確かにここなら冒険者の目に付きやすいってことね。そういう意味では、ボイドさんの酒場の前でやるのは良いことなのかもしれないけれど……。
「あの、ボイドさん?」
「ん、なんだ?」
「露店をやる為の、土台、どうしようかしら……?」
私の素朴な疑問を聞いたボイドさんは、頭を抱えていた。
「お前な……それでも、冒険者パーティに居たんだろ? 自分で調達できねぇのか?」
「うう……料理とか家事は出来るけど、基本的に力仕事はやってなかったし……」
「仕方ねぇな。土台作りくらいは協力してやる、貸しだからな?」
「うん、ありがとう。今度、精製したポーションを無料で配布するわ」
「ほほう、それは楽しみじゃねぇか」
こうして露店商をする為の土台作りが始まった。始まったって言っても、木材を用意してくれたのはボイドさんで、それを切って適度な大きさの物に仕上げてくれたのは、大工の仕事をしている人達だったけれど……。う~ん、感謝しかないわね……。
それはともかくとして、薬屋「リーシャポーション」が誕生した! ネーミングは適当に付けたけれど、私が頑張っているって伝わった方がいいかなって思って。
「いいか、リーシャ? 販売だろうがなんだろうが、客商売ってのはリピーターを得るのが勝負で、それを勝ち取るのには、滝に撃たれる程の覚悟が必要で……」
「う、うん……」
露店商自体は完成したけれど、ボイドさんは何やら説教じみたことを話し出していた。私も真面目に聞こうとしていたのだけれど……。
「おいおい、姉ちゃん! ポーション販売してくれるんだろ? 早くしてくれないか?」
「えっ? は、はい、今すぐに……!」
なんだか、開店と同時に長蛇の列が出来ているんだけど……。説教をしようとしていたボイドさんは、私の後ろで小さくなっているようだった。
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