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1話 追放されたリーシャ その1
しおりを挟む「なあ、リーシャ、俺の女になってくれよ。お前のこと好きなんだ」
「えっ……冗談でしょ?」
「いや、本当なんだって。その金髪ブロンドとかエメラルドグリーンの瞳とか、マジで好みだ」
そう言いながら口説いているのは、冒険者パーティ「アキサエル」のリーダーであるカシム・クインシー。冒険者としては二刀流を使う凄腕の一人なんだけれど、女遊びがとにかく凄い……。毎日のように夜の店なんかにも行っているらしいし。年齢は私より3つ上の21歳。
私はリーシャ・フォスター、今年で18歳になるアキサエルのメンバーの一人。パーティ内での役割は後方支援と回復かしらね。スキルの【ポーション製造】は結構、役に立っていると思うし、料理とかだって出来るし。
でも、アキサエルのリーダーであるカシムのことは好きにはなれなかった。理由は……さっき言った通り、女遊びがとにかく酷いから。女性もとっかえひっかえにしているという噂もあるし。
「悪いけど、パス。私はあなたと付き合うつもりはないわ」
「おいおい、いいのかよ、そんなこと言って……?」
「ど、どういう意味よ?」
睨みを利かせているカシムに、私は恐怖を覚えてしまった。力で攻めて来られたら、とても抵抗なんて出来ないし……。
「もう一度だけ言うぜ。俺の女になってくれよ」
「だから嫌だってば……!」
私はさっきよりも口調を強くして言った。カシムのこの、相手を物みたいに考えている態度も好きにはなれないし。彼女になるなんて考えられないわ……。
私がそんなことを考えていると、彼はふうっと溜息を付いていた。
「なら、仕方ねぇな、お前はアキサエルから追放だ」
「え……追放……!?」
いきなり出て来た「追放」という言葉に私はびっくりしてしまった。
「追放って……待ってよ、私が居なくなったら、パーティの支援は誰がするのよ?」
「はっ、そんなもんはどうとでもなるだろ。あいにく、俺達のパーティは攻撃が最大の防御の布陣だからな。リーダーである、俺様の言うことを聞かねぇ奴なんざ、パーティに必要ねぇよ」
「そ、そんなことって……!」
「うるせぇ! さっさと俺の前から消えろよ!」
私はその後もカシムに言い寄ったけれど、彼が聞く耳を持つことはなかった。でも、カシムの女になることだけは絶対に嫌だし……私はこうして、理不尽にもパーティ追放になってしまったのだ。
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