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2話 姉への相談
しおりを挟む「な、なんですって……? それは本当なの?」
「ね、姉さま……あの、少し怖いのですが……」
「そ、そうね。ごめんなさい、ネリア」
私は自分の屋敷に戻り、アクア姉さまにキックス・ボルト侯爵の理不尽な態度を話した。すると、姉さま予想以上の剣幕になったのだ。
「しかし……大変だったわね、ネリア。悔しかったでしょう?」
「はい……とても悔しいです、アクア姉さま。こんな理不尽なことがあるのか? というくらいに思ってしまいました」
キックス様は浮気も同然のことをしている。第二夫人として迎え入れるのは建前で、本当は愛人を囲っているだけだ。その状態で子供を産んだり育てたり、さらには夫人としてのパーティーでの振る舞いは、全部私の方がやらないといけない。
第二夫人であるシシリーナ様は実質、何もしないも同然だろう。こんなことが許されるはずがない。だからこそ、私はキックス様との婚約破棄を申し出たのに……それは完全に否定されてしまったのだ。
「婚約破棄を認めて貰えない……こんなことはおかしいと思います」
「確かにそうね。ネリアの考えが正しいと思うわ。完全にキックス様が悪いと言えるでしょうね」
「でも、キックス様は婚約破棄をするなら、ハーピー伯爵家がただでは済まないと言っていました。それを言われると、私には返す言葉が生まれてこなくて……」
「こうして屋敷に避難して来たということね?」
「はい……タイミングを見計らって、キックス様の屋敷から出て来ました。あの人の所には1秒も居たくありませんでしたから」
「なるほど、余程、キックス様のことが嫌いになったのね」
私は大きく頷いた。キックス様への愛情は既に消えていると言えたからだ。まあ、あんなことを言われて愛情を保てる女性が居るとは思えないけれど……はあ。
「よく頑張ったわね、ネリア。そして……よく耐えたわ。後は私に任せておきなさい」
「アクア姉さま? どういうことですか?」
「私の可愛いネリアを傷付けた報いは必ず受けさせるということよ」
「そ、それは……姉さま、危険です!」
私達が反撃の狼煙を上げるのは簡単だ。しかし、キックス様の脅しが現実のものになってしまうかもしれない。そうなると……お父様やお母様が守って来たハーピー家はどうなってしまうのだろうか。それだけは何としても避けたかった。
「そういえば、ネリアにはまだ言っていなかったわね。そこまで心配する必要はないわ」
「ど、どういうことでしょうか……?」
アクア姉さまは優しく微笑みながら答えてくれた。
「私はジェラルド・ノーヴァン大公殿下と婚約が成立しているわ。これの意味するところは……分かるわよね?」
「あ、それは……」
姉さまはいつの間にか、とんでもないお方と婚約していたようだ……その報告は予想外過ぎた。
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