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詐欺の代償
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まえがき
特殊詐欺のニュースを見ると、大抵こんな反応ではないだろうか?
「なんでこんなにテレビでやってるのに騙されるんだろうね」
どこか遠い世界。
自分とは関係ない世界。
だけどその世界はもし自分に起こったら。
そんな話がこれから始まる。
俺の名前は大翔(ひろと) 24歳。
親がどんな想いで付けたか知らないが、仕事は何をやっても嫌になって長続きしない。お金は一ミリも貯まらない。彼女もできない。
大きく羽ばたくどころか、地べたを這う虫けらみたいなもんだ。
こんなどうしようもない俺だが、ばあちゃんだけは可愛がってくれた。
「ひろとはかわいい!きっとイケメンになるわ」と幼かった俺に唯一褒めてくれた存在だ。
そんなばあちゃんが、うちの母親とそりが合わず同居を解消。自分から出ていくと小さな借家に一人引っ越してしまった。
両親はそれにも関わらず喧嘩ばかり。俺の存在なんて気にもしていない。
こんな家いやだ!たまらずばあちゃんの家に行くと、
「よく来てくれたね、嬉しいねえ」
としわくちゃの顔で出迎えてくれた。
「ちょっとこれを」
おばあちゃんはタンスの中から鍵のかかった木箱を取り出し
「これはねぇ、ばあちゃんの大切な宝物」
中には、俺がばあちゃんと一緒に写った赤ちゃんから小学生くらいの頃までの写真を貼ったアルバムがあった。
「ひろとにこれを」そう言って渡されたのは、その木箱を開ける鍵だった。
「ばあちゃんが死んだらね、これを形見にしておくれ」そう言うばあちゃんに
「縁起でもねえこと言うな、まだまだ長生きしてもらわな」そう言って鍵を手に足早に家に帰った。
母親からは「またあんなとこ行って!」と悪態をつかれたが、完全に無視をした。
そんなある日、俺の携帯に一本の電話がかかってきた。
「おうひろと!久しぶり!今仕事やっとるんか?」
電話の主は中学校の頃までよく遊んでいた悪友「ごうき」だった。
俺の携帯番号をどうやって知ったのかは謎だったが、「おう!ごうか、久しぶりやな、今仕事は自宅警備員や!笑」そう返して久々の会話に花が咲いた。
ごうきはハイテンションの勢いでこう言ってきた。
「今な、めっちゃ楽に稼げる仕事があるんやわ、ひろとも暇ならどうかと思って」
なんか怪しい・・・と思ったが、仕事も金もない俺には、そんな話飛びつかないわけがなかった。
「おお、どんな仕事なんか聞かせてや」
ごうきは、「今度その仕事があるから、実際に会って教えるわ」そう言って電話を切った。
後日ごうきの指定された場所に行くと、ごうきは昔のやんちゃな姿ではなく、小綺麗なスーツを身にまとっていた。
「おう、久しぶり!早速やけど今から仕事やで、少し遠くから見といてや」
何やら呑み込めない事態に動揺したが、奴は堂々とした素振りだった。
すると目の前から一人のおじいさんがやってきた。ごうきに何やら封筒のようなものを渡している。暫くするとそのおじいさんは去っていった。
「これが仕事や」ごうきはニヤリと俺にそう言った。
「ま、まさか振り込め詐欺の受け子じゃねーよな」焦る俺に、
「そうだよ、な簡単だろ」
何の罪悪感もないのか、奴は悪びれる素振りも見せない。
「ひろと、お前にもできるだろ、これだけで10万円もらえるんだぜ」封筒に少なくても100万円はある現金を見せながら、自信満々の顔を見せてきた。
「いや・・・人を騙すなんてさすがに無理だ・・・」
そう言おうと思ったが、仕事もない、金もない、女もいない、こんな腐った生活から抜け出せるかもしれない・・・そんなことが脳裏を駆け巡った。
「ごう、わかった一回だけやってみるわ、無理ならそれでやめてもいいんだな?」そう言うと、
「一回でやめれたらね」とまた不敵な笑みを浮かべ、何やら契約書なようなものにサインをさせられマニュアルを渡された。
人は怖いもので、最初は罪悪感で何度も辞めようと思った受け子の仕事だが、一回やってみるとあまりにあっけなく相手がお金を渡してくる。
「これで息子は大丈夫なんですよね?」
「これで銀行のカードは大丈夫なんですよね?」
どんな質問にも「大丈夫です、後のことは弊社にご相談ください」と同じ答えを繰り返した。
「最悪感を感じない」これが特殊詐欺の怖さだ。
その後「ひろと、やっぱりお前はやると思ってたよ」そう言うごうきと何度も酒を酌み交わした。
そんなある日事件は起きた。
父親が「おふくろ、バカだ!やってくれた!」
母親の顔も焦りと怒りに満ちている。
「どうしたん?」事情がわからず聞いたら、「詐欺だよ詐欺!」
なんとばあちゃんが振り込め詐欺に引っかかってしまったのだ。
三人でばあちゃんの家に行き、両親が問い詰めると
「だってお前が会社の金を使い込んだって弁護士さんから電話があったんだよ、お金を用意すればお前が警察に行かなくて済むって・・・」悲しそうなばあちゃんに父親は
「ふざけるな!そんな詐欺、テレビで何回もやっとるだろ!なんで騙されるんだよ!払う前に連絡ぐらいよこせよ!それで一体いくら払ったんだ!」と怒号をあげている。
「ぜ・・全部で1000万・・・」「老後に貯めてたお金がほとんど無くなった」ばあちゃんは茫然と消え入るような声でそう答えた。
「もう介護とかになってもお金知らんからな!」親はばあちゃんに吐き捨てるように家を立ち去った。
「まさか俺が詐欺グループに入ってるなんて知られたら・・・」
ばあちゃんと親の顔を見て、頭は真っ白になって一言も発せなかった。
「何やってるんだ俺は!」
ばあちゃんを直接騙したわけではないが、高齢者の善意を逆手に取りお金を取ったことには変わりはない。
自分自身に猛烈に吐き気がした。
「もう俺無理、やめるわ」ごうきにそう伝えた。続ける理由は何一つなかった。
後日ばあちゃんの家に向かった。
謝ろうとする気持ちと心配な気持ちが交錯していた。
ばあちゃんの家に近くと何やら周りが騒がしい。警察車両も何台か停まっている。そしたら親もなぜかいた。
「ひろと・・・」
親は茫然とした様子でそれ以上何も言わない。
何かものすごく嫌な予感がした。
俺は警察の静止を振り切り、家に入ると信じられない光景が目に映った。
ばあちゃんが変わり果てた姿で横たわっていたのだ。
泡を吹き、緑色のような液体が見えた。
農薬を大量に飲んだ服毒自殺だった。
「ばあちゃん!」「ばあちゃん!」
何度叫んでもばあちゃんは答えてくれなかった。
「あーーーーーーー!」言葉にならない声で泣き叫んだ。
暴れる俺を親と警察が抱え込み、俺はその後の記憶を失い、気がついたら家のベッドに寝ていた。
「親がばあちゃんを責めたせいだ!」
親に怒りの矛先が向いたが、元々悪いのは詐欺グループの連中だ。
そして、俺はその一端を担っていた。
親も自分もクソだ。死ななきゃいけないのは俺だ。自暴自棄になり、生活は更に乱れていった。
そしてある日、ふとばあちゃんの木箱のことを思い出した。ばあちゃんの形見だ。
俺はすぐさま家に走ったが玄関の鍵がかかって中に入れない。
「くそ!」なんとしても見たい気持ちが高ぶったが、よく考えれば警察が持っていったかもしれない。案の定問い合わせると遺品として警察に保管されていた。家族であることを証明し、その木箱を家に持ち帰った。
小刻みに震える手で鍵を開けたら、写真の他に、分厚い封筒の中に手紙が入っていた。
ひろとへ
この手紙を読んでいる頃、ばあちゃんはあの世にいってます。
何も言わずにごめんね。。
きっとひろとがこれを開けてくれると信じて書きます。
もうばあちゃんは疲れました。
コツコツ貯めてきたお金もだまされて取られてしまい、息子からはだまされるお前が悪いんだって。息子のためと思ったことが・・・。
もうばあちゃんは80を超えてるから、介護で人様に迷惑かけちゃいかんし、もう生きる元気がありません。
ただ心残りは、ひろと、お前と会えなくなることです。
わたしに優しくしてくれてありがとう。
お前はきっといい子だから、また立派に社会人として頑張るんだよ。
そして可愛いお嫁さん見つけるんだよ。
結婚式のときのお祝いにと思って100万円ここに隠しておきました。使ってください。
最後に「ばあちゃんは天国からひろとのこと見守ってるから」 さようなら
遺書だった。
嗚咽で、気が狂いそうになった。
溢れ落ちる涙で手紙の文字は滲み、ばあちゃんが泣いているようだった。
いくら後悔してもばあちゃんは戻ってこない。
「なんてこと俺はしていたんだ・・・」
一番大切なばあちゃんを失い、激しい自己嫌悪と、詐欺に対しての激しい憎悪が交じり合っていた。
「俺は幸せになる権利なんてない」
警察に今までやったことを自首しようと思ったが、おそらく詐欺組織は俺らのような末端は尻尾切りにするに違いない。それでは何も変わらないんだ。
ばあちゃんからもらった100万を手に、ある決意をする。
人生を狂わせた奴らを壊滅させてやる。
その方法は、殺し屋を雇ったのか、内部に潜り込んだのか、はたまた警察官になったのか?それは読者のご想像にお任せする。
ひろとはその数年後に生き絶えた。
が、その顔には乾いた笑みが浮かんでいた。
あとがき
この話がハッピーエンドではないのは、詐欺というものが、やる側には罪悪感が相当低いものに対し、された側の精神的、金銭的被害による苦痛は計り知れないものがあるということ。
それを知ってほしかったというのが著者の想いである。
また詐欺のような犯罪に安易に関わることで、大切な何かを失う可能性がある。
今回おばあちゃんだったという話で、登場人物の大翔は名の通り代償を払うことになった。
因果応報という言葉があるように、自分のやったことは形変われど必ず返ってくる。
自暴自棄になってしまう社会や環境もいけないかもしれないが、それだけで自分を失わないでほしい。きっと必要とされる時はくるし、きっと味方もいる。
自分一人では大変かもしれない。
それでも自分のために自分を信じてほしいと思う。
きっと自分は大丈夫だと。
大切な人を失わないために。
特殊詐欺のニュースを見ると、大抵こんな反応ではないだろうか?
「なんでこんなにテレビでやってるのに騙されるんだろうね」
どこか遠い世界。
自分とは関係ない世界。
だけどその世界はもし自分に起こったら。
そんな話がこれから始まる。
俺の名前は大翔(ひろと) 24歳。
親がどんな想いで付けたか知らないが、仕事は何をやっても嫌になって長続きしない。お金は一ミリも貯まらない。彼女もできない。
大きく羽ばたくどころか、地べたを這う虫けらみたいなもんだ。
こんなどうしようもない俺だが、ばあちゃんだけは可愛がってくれた。
「ひろとはかわいい!きっとイケメンになるわ」と幼かった俺に唯一褒めてくれた存在だ。
そんなばあちゃんが、うちの母親とそりが合わず同居を解消。自分から出ていくと小さな借家に一人引っ越してしまった。
両親はそれにも関わらず喧嘩ばかり。俺の存在なんて気にもしていない。
こんな家いやだ!たまらずばあちゃんの家に行くと、
「よく来てくれたね、嬉しいねえ」
としわくちゃの顔で出迎えてくれた。
「ちょっとこれを」
おばあちゃんはタンスの中から鍵のかかった木箱を取り出し
「これはねぇ、ばあちゃんの大切な宝物」
中には、俺がばあちゃんと一緒に写った赤ちゃんから小学生くらいの頃までの写真を貼ったアルバムがあった。
「ひろとにこれを」そう言って渡されたのは、その木箱を開ける鍵だった。
「ばあちゃんが死んだらね、これを形見にしておくれ」そう言うばあちゃんに
「縁起でもねえこと言うな、まだまだ長生きしてもらわな」そう言って鍵を手に足早に家に帰った。
母親からは「またあんなとこ行って!」と悪態をつかれたが、完全に無視をした。
そんなある日、俺の携帯に一本の電話がかかってきた。
「おうひろと!久しぶり!今仕事やっとるんか?」
電話の主は中学校の頃までよく遊んでいた悪友「ごうき」だった。
俺の携帯番号をどうやって知ったのかは謎だったが、「おう!ごうか、久しぶりやな、今仕事は自宅警備員や!笑」そう返して久々の会話に花が咲いた。
ごうきはハイテンションの勢いでこう言ってきた。
「今な、めっちゃ楽に稼げる仕事があるんやわ、ひろとも暇ならどうかと思って」
なんか怪しい・・・と思ったが、仕事も金もない俺には、そんな話飛びつかないわけがなかった。
「おお、どんな仕事なんか聞かせてや」
ごうきは、「今度その仕事があるから、実際に会って教えるわ」そう言って電話を切った。
後日ごうきの指定された場所に行くと、ごうきは昔のやんちゃな姿ではなく、小綺麗なスーツを身にまとっていた。
「おう、久しぶり!早速やけど今から仕事やで、少し遠くから見といてや」
何やら呑み込めない事態に動揺したが、奴は堂々とした素振りだった。
すると目の前から一人のおじいさんがやってきた。ごうきに何やら封筒のようなものを渡している。暫くするとそのおじいさんは去っていった。
「これが仕事や」ごうきはニヤリと俺にそう言った。
「ま、まさか振り込め詐欺の受け子じゃねーよな」焦る俺に、
「そうだよ、な簡単だろ」
何の罪悪感もないのか、奴は悪びれる素振りも見せない。
「ひろと、お前にもできるだろ、これだけで10万円もらえるんだぜ」封筒に少なくても100万円はある現金を見せながら、自信満々の顔を見せてきた。
「いや・・・人を騙すなんてさすがに無理だ・・・」
そう言おうと思ったが、仕事もない、金もない、女もいない、こんな腐った生活から抜け出せるかもしれない・・・そんなことが脳裏を駆け巡った。
「ごう、わかった一回だけやってみるわ、無理ならそれでやめてもいいんだな?」そう言うと、
「一回でやめれたらね」とまた不敵な笑みを浮かべ、何やら契約書なようなものにサインをさせられマニュアルを渡された。
人は怖いもので、最初は罪悪感で何度も辞めようと思った受け子の仕事だが、一回やってみるとあまりにあっけなく相手がお金を渡してくる。
「これで息子は大丈夫なんですよね?」
「これで銀行のカードは大丈夫なんですよね?」
どんな質問にも「大丈夫です、後のことは弊社にご相談ください」と同じ答えを繰り返した。
「最悪感を感じない」これが特殊詐欺の怖さだ。
その後「ひろと、やっぱりお前はやると思ってたよ」そう言うごうきと何度も酒を酌み交わした。
そんなある日事件は起きた。
父親が「おふくろ、バカだ!やってくれた!」
母親の顔も焦りと怒りに満ちている。
「どうしたん?」事情がわからず聞いたら、「詐欺だよ詐欺!」
なんとばあちゃんが振り込め詐欺に引っかかってしまったのだ。
三人でばあちゃんの家に行き、両親が問い詰めると
「だってお前が会社の金を使い込んだって弁護士さんから電話があったんだよ、お金を用意すればお前が警察に行かなくて済むって・・・」悲しそうなばあちゃんに父親は
「ふざけるな!そんな詐欺、テレビで何回もやっとるだろ!なんで騙されるんだよ!払う前に連絡ぐらいよこせよ!それで一体いくら払ったんだ!」と怒号をあげている。
「ぜ・・全部で1000万・・・」「老後に貯めてたお金がほとんど無くなった」ばあちゃんは茫然と消え入るような声でそう答えた。
「もう介護とかになってもお金知らんからな!」親はばあちゃんに吐き捨てるように家を立ち去った。
「まさか俺が詐欺グループに入ってるなんて知られたら・・・」
ばあちゃんと親の顔を見て、頭は真っ白になって一言も発せなかった。
「何やってるんだ俺は!」
ばあちゃんを直接騙したわけではないが、高齢者の善意を逆手に取りお金を取ったことには変わりはない。
自分自身に猛烈に吐き気がした。
「もう俺無理、やめるわ」ごうきにそう伝えた。続ける理由は何一つなかった。
後日ばあちゃんの家に向かった。
謝ろうとする気持ちと心配な気持ちが交錯していた。
ばあちゃんの家に近くと何やら周りが騒がしい。警察車両も何台か停まっている。そしたら親もなぜかいた。
「ひろと・・・」
親は茫然とした様子でそれ以上何も言わない。
何かものすごく嫌な予感がした。
俺は警察の静止を振り切り、家に入ると信じられない光景が目に映った。
ばあちゃんが変わり果てた姿で横たわっていたのだ。
泡を吹き、緑色のような液体が見えた。
農薬を大量に飲んだ服毒自殺だった。
「ばあちゃん!」「ばあちゃん!」
何度叫んでもばあちゃんは答えてくれなかった。
「あーーーーーーー!」言葉にならない声で泣き叫んだ。
暴れる俺を親と警察が抱え込み、俺はその後の記憶を失い、気がついたら家のベッドに寝ていた。
「親がばあちゃんを責めたせいだ!」
親に怒りの矛先が向いたが、元々悪いのは詐欺グループの連中だ。
そして、俺はその一端を担っていた。
親も自分もクソだ。死ななきゃいけないのは俺だ。自暴自棄になり、生活は更に乱れていった。
そしてある日、ふとばあちゃんの木箱のことを思い出した。ばあちゃんの形見だ。
俺はすぐさま家に走ったが玄関の鍵がかかって中に入れない。
「くそ!」なんとしても見たい気持ちが高ぶったが、よく考えれば警察が持っていったかもしれない。案の定問い合わせると遺品として警察に保管されていた。家族であることを証明し、その木箱を家に持ち帰った。
小刻みに震える手で鍵を開けたら、写真の他に、分厚い封筒の中に手紙が入っていた。
ひろとへ
この手紙を読んでいる頃、ばあちゃんはあの世にいってます。
何も言わずにごめんね。。
きっとひろとがこれを開けてくれると信じて書きます。
もうばあちゃんは疲れました。
コツコツ貯めてきたお金もだまされて取られてしまい、息子からはだまされるお前が悪いんだって。息子のためと思ったことが・・・。
もうばあちゃんは80を超えてるから、介護で人様に迷惑かけちゃいかんし、もう生きる元気がありません。
ただ心残りは、ひろと、お前と会えなくなることです。
わたしに優しくしてくれてありがとう。
お前はきっといい子だから、また立派に社会人として頑張るんだよ。
そして可愛いお嫁さん見つけるんだよ。
結婚式のときのお祝いにと思って100万円ここに隠しておきました。使ってください。
最後に「ばあちゃんは天国からひろとのこと見守ってるから」 さようなら
遺書だった。
嗚咽で、気が狂いそうになった。
溢れ落ちる涙で手紙の文字は滲み、ばあちゃんが泣いているようだった。
いくら後悔してもばあちゃんは戻ってこない。
「なんてこと俺はしていたんだ・・・」
一番大切なばあちゃんを失い、激しい自己嫌悪と、詐欺に対しての激しい憎悪が交じり合っていた。
「俺は幸せになる権利なんてない」
警察に今までやったことを自首しようと思ったが、おそらく詐欺組織は俺らのような末端は尻尾切りにするに違いない。それでは何も変わらないんだ。
ばあちゃんからもらった100万を手に、ある決意をする。
人生を狂わせた奴らを壊滅させてやる。
その方法は、殺し屋を雇ったのか、内部に潜り込んだのか、はたまた警察官になったのか?それは読者のご想像にお任せする。
ひろとはその数年後に生き絶えた。
が、その顔には乾いた笑みが浮かんでいた。
あとがき
この話がハッピーエンドではないのは、詐欺というものが、やる側には罪悪感が相当低いものに対し、された側の精神的、金銭的被害による苦痛は計り知れないものがあるということ。
それを知ってほしかったというのが著者の想いである。
また詐欺のような犯罪に安易に関わることで、大切な何かを失う可能性がある。
今回おばあちゃんだったという話で、登場人物の大翔は名の通り代償を払うことになった。
因果応報という言葉があるように、自分のやったことは形変われど必ず返ってくる。
自暴自棄になってしまう社会や環境もいけないかもしれないが、それだけで自分を失わないでほしい。きっと必要とされる時はくるし、きっと味方もいる。
自分一人では大変かもしれない。
それでも自分のために自分を信じてほしいと思う。
きっと自分は大丈夫だと。
大切な人を失わないために。
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