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第四十六話 その夜 ※
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ーーーーーーーーーーーー
その夜ーーーーーーーー
葵はいつものように明日の支度を整えると、少し勉強をして、七時頃にはキッチンに向かった。
いつもならこれ以上遅くに晩御飯を作ってもいいのだが、今日は優一が何故か17時には帰ってきて、いまさっき葵が洗ったお風呂に入ったので、一緒にご飯を食べることができるのだ。
でも本当なら今日も優一は遅いはずだった。
というのも優一の明日の予定で、急遽明日映画監督との対談が朝一に入ったということで、今日の仕事を早く打ち切らる許可が降りたのだそうで。
なんでも映画監督のスケジュールが明日しか組めなくなってしまったらしい。
(それにしたって大変だなぁ·····対談だったり番宣だったり····)
葵はそんなことを思いながら優一がお風呂に入っているあいだに晩御飯の用意をすることにした。
(今日の献立何にしようかな···優一さんが早く帰ってくるって知って急いで買い物したから同じようなものしか買えなかったけど···)
ガコンと大きな冷蔵庫を開けると、何やらまたプリンが増えていた。
(うっ····この人相変わらずプリン買い溜めするけどまだ十五個も残ってるんですが····)
葵が置かれたプリン達を横目に顔を顰めていると、ふとーーーー
ピコンピコンッとスマホが鳴った。
葵がポケットから取り出して画面を見ると、麗奈と和樹からの通知だった。
(あ、·····。優一さんお風呂出るかもだし今のうちに麗奈さんから先に返信しとくか····。)
麗奈からのメールは1週間ぶりのものだった。
実は、それまでは結構頻繁にやり取りをしていたのだが少し前から返信の頻度が少なくなっていた。
麗奈自身は葵のことを物凄く気に入ってくれていて、フランスのことを教えてくれたり、色々な話を持ち替えてくれていたが、葵はその度に返信を躊躇っていた。
ーーーというのも葵があの後優一の話を聞いてしまって、麗奈と話すことに申し訳なさを感じてしまったーーーというのとあるのだが·····。
葵が麗奈の方のメッセージを開くと、麗奈はいつものようにまたフランスの街並みの写真を何枚か添付してその後ろに軽くメッセージをつけ加えていた。
久々のメールだから短文ではなく、少し長かった。
【ボンジュール!葵、久々だけど元気にしてるかしら?今日本では夜よね。寝る前で申し訳ないけどちょっと聞きたいことがあって。実は来週仕事のスケジュールの組み立てがあるの。それで今度いつ会えるのか葵の方は分かっているのか知りたくてね。急かしてるわけじゃないんだけど、冬休みとか会える日があるなら早めに教えて頂戴ね。】
(あ·····。会える日·····そっか。確か前に今度は優一さんに内緒で会おうとか話してたし、多分それの事かな。んー·····正直冬休みはまだ何があるかわからないし·······)
(ーーーそれに優一さんからしたらあんまよく思わないだろうし·······)
葵はとりあえず、スケジュールが分かったらその時に会える日をまとめて連絡しますーーーという旨を伝えた。
これでいいのかは分からなかったが、急かしてるわけでは無いのだし大丈夫だろう。
葵は麗奈への返信を閉じると、次は和樹の方のメッセージを見ることにした。
(あーーー和樹くんからのメールって、もしかしてさっきの事かな···?)
そう思いながら画面を開くと案の定その事についてだった。
【葵くんお疲れ様!それで、さっき話した先輩の事なんだけど、本当に圭一郎さんのサイン欲しかったら僕から先輩に頼んでおこうか?多分くれると思うんだ。】
「え!」
(うおっ···まじか。めっちゃ欲しい····!圭一郎さんのサインなんておばさんも貰ったら絶対喜ぶだろうし····)
【本当!?ありがとう!でも直接的に上手く会話したことなくて····さっきもあんな感じだったし相手は大丈夫なのかな?】
(人見知りとは言ってたけどそれでも怖かったしなんて言ったってあの態度だからな····)
【大丈夫だよ。それに、圭一郎さんを好きだって知ったら先輩かなり喜ぶと思う!】
【そっか。じゃあ申し訳ないけどお願いするよ。わざわざごめんな!】
【全然大丈夫!じゃ、聞いてみるね!】
【おお!ありがとう!】
(あぁ、凄い····圭一郎さんのサインなんて貰ったらきっとおばさんも喜だろうなぁ。それに俺も嬉しいしーーーやっぱり東京の高校で良かったねなんて言われるかなーーー)
「ーーーふぅん。葵くんて宮井さん好きなんだ?」
(ーーー!?)
葵が慌てて振り向くと、いつの間にか優一が上半身裸で首にタオルをかけたままのいかにも風呂上がり姿で後ろに立っていた。
髪はまだ乾かしておらず、水が滴っている。
「うぎゃ!!!ゆ、優一さん!!お、お風呂上がってたなら言ってくださいよ!!ていうかそんな格好だと風邪引きますよ!」
(てかーーー宮井さんが好きって·····メール見られてた!?まあそのメールなら良いけど、まさか麗奈さんのは見てないよなーーー?)
「ああ。ごめんね、お腹空いちゃって。ちなみに今日のご飯は丸焦げの魚ですか?」
「え!?」
(丸焦げって····)
葵が床に落ちた水を拭こうとした手を止めて慌ててフライパンを見ると魚は既に焦げ茶になっていて、ジュージューと枯れた音を立てながら水分を無くして薄く煙を出していた。
「うわうわうわ····!!ま、まじ!!ごめんなさい!」
(うわぁあこれ俺前回も麗奈さんとやり取りしててやっちゃったやつ···)
「これ俺食べますっ!だから急いで作るんで優一さんちょっとまっててください!」
「いや、焦げたものを食べるのは良くない。」
「え!でもこれは俺の不注意だしーーー···」
「僕のでいいから。」
「すっ····すみません。」
「それよりもーーー葵くんて宮井さん好きだったんだ。」
「えっ?あ、····はい。」
「サインってもしかして友達にその人の知り合いでもいたの?」
「え、あ····実は同じ天文部で一緒の先輩が圭一郎さんの弟っていうのを今日知ってーーー」
「宮井さんの弟····?」
「え、あ、はい!ーーーそれでその先輩と仲いい友達に圭一郎さん好きなんだって言ったらサインを頼んでくれるってことになって····あ、俺、実は昔から大河ドラマとかおばさんと見てて、おばさんもだけど、その中でもおじさんがとにかくその人のファンで、それで自分も圭一郎さん好きになったんです。」
「へぇ、そうなんだ。」
(·····あ、あれ···なんか俺変なこと言ったかな····?)
「な、何かありました····?」
「いや?ただ意外だなぁと思って。葵くんならもっとこう今時って感じがすきだと思ったから。そういうタイプが好きなんだ。言ってくれればそんなわざわざ友達や弟に頼まなくてもサイン貰ってきたのに。かなり昔から知り合いだし。」
「え!!!え!マジっすか!?あ、でもそっか!共演何回もしてますもんね!」
「まあね。」
「え、じゃ、じゃあ·····お願いしてもいいですか?!」
(和樹くんにわざわざ頼むのも悪いと思ってたし···)
「あー····勿論良いよ。」
葵がそう頼み込むと、優一はニコッとまさしく完璧な王子様スマイルを浮かべて快く頷いた。
「わぁあ!ありがとうございます!!」
「はは、そんなに嬉しい?」
「いやすげぇ嬉しいっすよ!!よし!あー早速おばさんに連絡しとかないとーーー!」
「ふーん。」
葵がそう言ってスマホを取りだした時だった。
「葵くんちょっとこっち向いて。」
「あ、はい!なんです?」
ふと優一に名前を呼ばれ、葵が顔を上げた瞬間ーーー
突然優一の顔が近づいたかと思うと優一の唇と触れ合った。
(えっ····!?)
葵が混乱して固まると、次にグイッと顎を持ち上げられ、そのまま優一の舌が自分のと絡まり合う。
「んっ····っん···」
(え、突然何····!?てかっ····舌がっ····)
ドクン····
「んんっ········」
優一の腕が葵の体を押さえつけて、葵は壁の方に押されてしまった。
その衝撃でさらに優一の舌が奥まで入って、息が上手く出来なくなる。
(く、くるし····本当に何っ····)
次第に舌の熱が溶け合うとだんだんと体が熱くなってーーー
その時だった。
グイッ·····
(!?)
優一の足が葵の股を割って入り込み、葵のそこを刺激するように前に押し当ててきたのだ。
(ちょっまっ·····当たってっ········あっ····)
ビクン····!
その瞬間葵の体は何か大きなものが血液を流れてくるように跳ね上がった。
「ふっ·····んんっ····うっ···!」
(ちょっ·····なにこれっ···やばっ····俺っ·····)
「ちょっ優一さっ····んっ····」
そのまま何秒か、舌が絡まり合うようなキスをされ続け、ついに息が苦しくなって葵が俯いて顔を背けると、優一の手の力がようやく解けた。
そしてやがて口と口が離れると、葵ははぁっと息を吐き出してドサッと壁にもたれかかった。
「はっ····はぁはぁ·····ゆ、優一さん急になんですかっ···!?」
葵が困惑したように声をあげると、優一は平然とした顔のまま「何が?」とでも言うように首を傾げた。
「あー····そういえば忘れてたなーって。今日の分。」
「は!?き、今日の分ってな·····あ、もしかして家賃の···?」
「そう。」
(ーーーえ。)
「あっ····な、なんだ!家賃か····ってそれなら突然キスとかしないで下さいよ!いつも言ってからするのになんですか今の普通に驚くじゃないですか!」
(しかも普通のキスじゃなかったぞ!舌まで入れてきやがったぞ!?)
ーーーてかさっき足が触れてたのってーーー
(わざとだったり····?)
「なんで?たまにはこういうのも良いでしょ。」
「た、たまにはって!される側の気持ちを考えてくださいよ!家賃はちゃんと声掛けてからっていつも言ってるじゃないですかっ····」
「別に毎日してるんだから声かけなくても慣れてくるものでしょ?」
「な、慣れません!!優一さんは慣れてるかもしれないけど俺は全然慣れてませんからね!!それにっ」
(ーーー俺、やばい。今のだけで軽くでも反応しちゃうとか····)
「それに?」
「ハッ····い、いやなんでもないです。と、とりあえずご飯食べましょ!てかほら、もうこんな時間じゃないですか!明日大切な対談があるなら、こんなことしてる場合じゃないですよっ」
葵は優一と目を合わせないようにしながら優一の横を通り抜けると、急いでテーブルにご飯を並べた。
ドクン·····
(どうしよう····。すげぇトイレ行きたいんだけど·······)
ドクン·····
(なんでこんくらいで俺変な気分になってーーーま、まあでも優一さんにバレなければ別にーーー)
「は、はい!ご飯完成!てことでーーー」
「ねぇ葵くん。」
「な、なんです····?」
「もしかしてーーーさっきので反応しちゃったの?」
ドキン!
「は、はい!?と、突然なんですか!うっ····」
葵は動揺して、ガクッと立ち上がるとテーブルに足をぶつけてしまった。
「したかどうか、聞いてるんだけど。した?」
「し、してないですよっ!つ、つーかそんなキスぐらいでするわけっ····」
「キスぐらいで?前は反応してたけど。それに今、凄く動揺してる。」
「っ····ま、前は前で今は今です!とにかくしてませんから!」
(ーーーやっぱ、バレてる····!?)
「そっか。ーーーじゃあ、確かめさせてよ。」
「えっ····ちょ、それどういう意味·····」
「そういう意味に決まってるでしょ?」
「は!?そ、そんなの確かめる必要ないじゃないですか!変態過ぎるんですけど!それに今日の家賃は支払ったんでそういうことはっ!」
「そうだね。家賃は支払ったね。」
「で、でしょ!だからする必要はーーー」
「ていうかさーーー」
「は、はい?」
「したくなっちゃったから、していい?」
(··········は?)
優一はそう言ってニヤッと笑うと、葵の体を引き寄せた。
かと思うと素早くしゃがんで、葵のズボンに手をかけてーーー
「ちょっ·····優一さん!?」
(や、やばい!!なんとかして止めないとーーー!)
しかし、葵は何とかしてもがこうと動いていた力も、優一の手がその部分に触れると、まるで嘘みたいに体が震えて上手く動けなくなってしまった。
グイッ····
「あっ····」
そしてズボンがずり下がると、自分のそれが目に見えてわかるようになってーーー
「ーーークスッ····ほらやっぱり。」
(あ····!)
「ちょっ!!優一さんまっ、待って!」
「ねぇなんでそんな隠したがるの?こうなってるなら素直にいえばいいのに。」
「そ、それは!じ、自分で抜くからっ····」
(やばいーーー)
「なんで?口の方が気持ちいいよ?」
「なっ····!や、やめっ····」
「って言う割には体が拒んでない。」
ぢゅるっ····
(やばいーーー!)
「あっ···んっ·····ま、まってっ····はっ··」
(あ、ど、どうしようまたこんな流れになったらーーー)
「や、やめっっ····優一さんっーーー!」
気持ちよくなっちゃったらーーー
その時だった。
ーーーピンポーンーーー!
突然リビングにインターフォンが鳴り響いた。
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その夜ーーーーーーーー
葵はいつものように明日の支度を整えると、少し勉強をして、七時頃にはキッチンに向かった。
いつもならこれ以上遅くに晩御飯を作ってもいいのだが、今日は優一が何故か17時には帰ってきて、いまさっき葵が洗ったお風呂に入ったので、一緒にご飯を食べることができるのだ。
でも本当なら今日も優一は遅いはずだった。
というのも優一の明日の予定で、急遽明日映画監督との対談が朝一に入ったということで、今日の仕事を早く打ち切らる許可が降りたのだそうで。
なんでも映画監督のスケジュールが明日しか組めなくなってしまったらしい。
(それにしたって大変だなぁ·····対談だったり番宣だったり····)
葵はそんなことを思いながら優一がお風呂に入っているあいだに晩御飯の用意をすることにした。
(今日の献立何にしようかな···優一さんが早く帰ってくるって知って急いで買い物したから同じようなものしか買えなかったけど···)
ガコンと大きな冷蔵庫を開けると、何やらまたプリンが増えていた。
(うっ····この人相変わらずプリン買い溜めするけどまだ十五個も残ってるんですが····)
葵が置かれたプリン達を横目に顔を顰めていると、ふとーーーー
ピコンピコンッとスマホが鳴った。
葵がポケットから取り出して画面を見ると、麗奈と和樹からの通知だった。
(あ、·····。優一さんお風呂出るかもだし今のうちに麗奈さんから先に返信しとくか····。)
麗奈からのメールは1週間ぶりのものだった。
実は、それまでは結構頻繁にやり取りをしていたのだが少し前から返信の頻度が少なくなっていた。
麗奈自身は葵のことを物凄く気に入ってくれていて、フランスのことを教えてくれたり、色々な話を持ち替えてくれていたが、葵はその度に返信を躊躇っていた。
ーーーというのも葵があの後優一の話を聞いてしまって、麗奈と話すことに申し訳なさを感じてしまったーーーというのとあるのだが·····。
葵が麗奈の方のメッセージを開くと、麗奈はいつものようにまたフランスの街並みの写真を何枚か添付してその後ろに軽くメッセージをつけ加えていた。
久々のメールだから短文ではなく、少し長かった。
【ボンジュール!葵、久々だけど元気にしてるかしら?今日本では夜よね。寝る前で申し訳ないけどちょっと聞きたいことがあって。実は来週仕事のスケジュールの組み立てがあるの。それで今度いつ会えるのか葵の方は分かっているのか知りたくてね。急かしてるわけじゃないんだけど、冬休みとか会える日があるなら早めに教えて頂戴ね。】
(あ·····。会える日·····そっか。確か前に今度は優一さんに内緒で会おうとか話してたし、多分それの事かな。んー·····正直冬休みはまだ何があるかわからないし·······)
(ーーーそれに優一さんからしたらあんまよく思わないだろうし·······)
葵はとりあえず、スケジュールが分かったらその時に会える日をまとめて連絡しますーーーという旨を伝えた。
これでいいのかは分からなかったが、急かしてるわけでは無いのだし大丈夫だろう。
葵は麗奈への返信を閉じると、次は和樹の方のメッセージを見ることにした。
(あーーー和樹くんからのメールって、もしかしてさっきの事かな···?)
そう思いながら画面を開くと案の定その事についてだった。
【葵くんお疲れ様!それで、さっき話した先輩の事なんだけど、本当に圭一郎さんのサイン欲しかったら僕から先輩に頼んでおこうか?多分くれると思うんだ。】
「え!」
(うおっ···まじか。めっちゃ欲しい····!圭一郎さんのサインなんておばさんも貰ったら絶対喜ぶだろうし····)
【本当!?ありがとう!でも直接的に上手く会話したことなくて····さっきもあんな感じだったし相手は大丈夫なのかな?】
(人見知りとは言ってたけどそれでも怖かったしなんて言ったってあの態度だからな····)
【大丈夫だよ。それに、圭一郎さんを好きだって知ったら先輩かなり喜ぶと思う!】
【そっか。じゃあ申し訳ないけどお願いするよ。わざわざごめんな!】
【全然大丈夫!じゃ、聞いてみるね!】
【おお!ありがとう!】
(あぁ、凄い····圭一郎さんのサインなんて貰ったらきっとおばさんも喜だろうなぁ。それに俺も嬉しいしーーーやっぱり東京の高校で良かったねなんて言われるかなーーー)
「ーーーふぅん。葵くんて宮井さん好きなんだ?」
(ーーー!?)
葵が慌てて振り向くと、いつの間にか優一が上半身裸で首にタオルをかけたままのいかにも風呂上がり姿で後ろに立っていた。
髪はまだ乾かしておらず、水が滴っている。
「うぎゃ!!!ゆ、優一さん!!お、お風呂上がってたなら言ってくださいよ!!ていうかそんな格好だと風邪引きますよ!」
(てかーーー宮井さんが好きって·····メール見られてた!?まあそのメールなら良いけど、まさか麗奈さんのは見てないよなーーー?)
「ああ。ごめんね、お腹空いちゃって。ちなみに今日のご飯は丸焦げの魚ですか?」
「え!?」
(丸焦げって····)
葵が床に落ちた水を拭こうとした手を止めて慌ててフライパンを見ると魚は既に焦げ茶になっていて、ジュージューと枯れた音を立てながら水分を無くして薄く煙を出していた。
「うわうわうわ····!!ま、まじ!!ごめんなさい!」
(うわぁあこれ俺前回も麗奈さんとやり取りしててやっちゃったやつ···)
「これ俺食べますっ!だから急いで作るんで優一さんちょっとまっててください!」
「いや、焦げたものを食べるのは良くない。」
「え!でもこれは俺の不注意だしーーー···」
「僕のでいいから。」
「すっ····すみません。」
「それよりもーーー葵くんて宮井さん好きだったんだ。」
「えっ?あ、····はい。」
「サインってもしかして友達にその人の知り合いでもいたの?」
「え、あ····実は同じ天文部で一緒の先輩が圭一郎さんの弟っていうのを今日知ってーーー」
「宮井さんの弟····?」
「え、あ、はい!ーーーそれでその先輩と仲いい友達に圭一郎さん好きなんだって言ったらサインを頼んでくれるってことになって····あ、俺、実は昔から大河ドラマとかおばさんと見てて、おばさんもだけど、その中でもおじさんがとにかくその人のファンで、それで自分も圭一郎さん好きになったんです。」
「へぇ、そうなんだ。」
(·····あ、あれ···なんか俺変なこと言ったかな····?)
「な、何かありました····?」
「いや?ただ意外だなぁと思って。葵くんならもっとこう今時って感じがすきだと思ったから。そういうタイプが好きなんだ。言ってくれればそんなわざわざ友達や弟に頼まなくてもサイン貰ってきたのに。かなり昔から知り合いだし。」
「え!!!え!マジっすか!?あ、でもそっか!共演何回もしてますもんね!」
「まあね。」
「え、じゃ、じゃあ·····お願いしてもいいですか?!」
(和樹くんにわざわざ頼むのも悪いと思ってたし···)
「あー····勿論良いよ。」
葵がそう頼み込むと、優一はニコッとまさしく完璧な王子様スマイルを浮かべて快く頷いた。
「わぁあ!ありがとうございます!!」
「はは、そんなに嬉しい?」
「いやすげぇ嬉しいっすよ!!よし!あー早速おばさんに連絡しとかないとーーー!」
「ふーん。」
葵がそう言ってスマホを取りだした時だった。
「葵くんちょっとこっち向いて。」
「あ、はい!なんです?」
ふと優一に名前を呼ばれ、葵が顔を上げた瞬間ーーー
突然優一の顔が近づいたかと思うと優一の唇と触れ合った。
(えっ····!?)
葵が混乱して固まると、次にグイッと顎を持ち上げられ、そのまま優一の舌が自分のと絡まり合う。
「んっ····っん···」
(え、突然何····!?てかっ····舌がっ····)
ドクン····
「んんっ········」
優一の腕が葵の体を押さえつけて、葵は壁の方に押されてしまった。
その衝撃でさらに優一の舌が奥まで入って、息が上手く出来なくなる。
(く、くるし····本当に何っ····)
次第に舌の熱が溶け合うとだんだんと体が熱くなってーーー
その時だった。
グイッ·····
(!?)
優一の足が葵の股を割って入り込み、葵のそこを刺激するように前に押し当ててきたのだ。
(ちょっまっ·····当たってっ········あっ····)
ビクン····!
その瞬間葵の体は何か大きなものが血液を流れてくるように跳ね上がった。
「ふっ·····んんっ····うっ···!」
(ちょっ·····なにこれっ···やばっ····俺っ·····)
「ちょっ優一さっ····んっ····」
そのまま何秒か、舌が絡まり合うようなキスをされ続け、ついに息が苦しくなって葵が俯いて顔を背けると、優一の手の力がようやく解けた。
そしてやがて口と口が離れると、葵ははぁっと息を吐き出してドサッと壁にもたれかかった。
「はっ····はぁはぁ·····ゆ、優一さん急になんですかっ···!?」
葵が困惑したように声をあげると、優一は平然とした顔のまま「何が?」とでも言うように首を傾げた。
「あー····そういえば忘れてたなーって。今日の分。」
「は!?き、今日の分ってな·····あ、もしかして家賃の···?」
「そう。」
(ーーーえ。)
「あっ····な、なんだ!家賃か····ってそれなら突然キスとかしないで下さいよ!いつも言ってからするのになんですか今の普通に驚くじゃないですか!」
(しかも普通のキスじゃなかったぞ!舌まで入れてきやがったぞ!?)
ーーーてかさっき足が触れてたのってーーー
(わざとだったり····?)
「なんで?たまにはこういうのも良いでしょ。」
「た、たまにはって!される側の気持ちを考えてくださいよ!家賃はちゃんと声掛けてからっていつも言ってるじゃないですかっ····」
「別に毎日してるんだから声かけなくても慣れてくるものでしょ?」
「な、慣れません!!優一さんは慣れてるかもしれないけど俺は全然慣れてませんからね!!それにっ」
(ーーー俺、やばい。今のだけで軽くでも反応しちゃうとか····)
「それに?」
「ハッ····い、いやなんでもないです。と、とりあえずご飯食べましょ!てかほら、もうこんな時間じゃないですか!明日大切な対談があるなら、こんなことしてる場合じゃないですよっ」
葵は優一と目を合わせないようにしながら優一の横を通り抜けると、急いでテーブルにご飯を並べた。
ドクン·····
(どうしよう····。すげぇトイレ行きたいんだけど·······)
ドクン·····
(なんでこんくらいで俺変な気分になってーーーま、まあでも優一さんにバレなければ別にーーー)
「は、はい!ご飯完成!てことでーーー」
「ねぇ葵くん。」
「な、なんです····?」
「もしかしてーーーさっきので反応しちゃったの?」
ドキン!
「は、はい!?と、突然なんですか!うっ····」
葵は動揺して、ガクッと立ち上がるとテーブルに足をぶつけてしまった。
「したかどうか、聞いてるんだけど。した?」
「し、してないですよっ!つ、つーかそんなキスぐらいでするわけっ····」
「キスぐらいで?前は反応してたけど。それに今、凄く動揺してる。」
「っ····ま、前は前で今は今です!とにかくしてませんから!」
(ーーーやっぱ、バレてる····!?)
「そっか。ーーーじゃあ、確かめさせてよ。」
「えっ····ちょ、それどういう意味·····」
「そういう意味に決まってるでしょ?」
「は!?そ、そんなの確かめる必要ないじゃないですか!変態過ぎるんですけど!それに今日の家賃は支払ったんでそういうことはっ!」
「そうだね。家賃は支払ったね。」
「で、でしょ!だからする必要はーーー」
「ていうかさーーー」
「は、はい?」
「したくなっちゃったから、していい?」
(··········は?)
優一はそう言ってニヤッと笑うと、葵の体を引き寄せた。
かと思うと素早くしゃがんで、葵のズボンに手をかけてーーー
「ちょっ·····優一さん!?」
(や、やばい!!なんとかして止めないとーーー!)
しかし、葵は何とかしてもがこうと動いていた力も、優一の手がその部分に触れると、まるで嘘みたいに体が震えて上手く動けなくなってしまった。
グイッ····
「あっ····」
そしてズボンがずり下がると、自分のそれが目に見えてわかるようになってーーー
「ーーークスッ····ほらやっぱり。」
(あ····!)
「ちょっ!!優一さんまっ、待って!」
「ねぇなんでそんな隠したがるの?こうなってるなら素直にいえばいいのに。」
「そ、それは!じ、自分で抜くからっ····」
(やばいーーー)
「なんで?口の方が気持ちいいよ?」
「なっ····!や、やめっ····」
「って言う割には体が拒んでない。」
ぢゅるっ····
(やばいーーー!)
「あっ···んっ·····ま、まってっ····はっ··」
(あ、ど、どうしようまたこんな流れになったらーーー)
「や、やめっっ····優一さんっーーー!」
気持ちよくなっちゃったらーーー
その時だった。
ーーーピンポーンーーー!
突然リビングにインターフォンが鳴り響いた。
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