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第五話 優しさ
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翌日ーーー
ついに、匠南高等学校の入学式の日がやってきた。
葵は朝早くに起きると早々と支度を済ませ、遅れて起きてきた優一と共に足早に匠南高等学校への電車へ乗り込んだ。
入学式が始まるのは10時からで、まだ全然時間はあるだろうーーーと優一に言われたものの、葵は居てもたってもいられなかった。
(だって俺はこの日を待ち侘びていんだから!)
葵が電車に揺られながら何気なくスマホを開くと、おばさんからメールが届いていた。
そこには件名に「入学式おめでとう」の文字ーーーそして本題には「黒瀬優一さんがお休みなら着いていってもらってね。入学式の写真!待ってるよ~」というメッセージが書かれていた。
当たり前だが、優一の言った通りおばさんは写真を待ち望んでいた。
だから優一が来てくれることになって良かったーーーと思うのだが、一つだけ心配があった。
それは.....
「ねぇ、優一さん。」
「どうしたの?葵くん。」
車内の椅子に座っていた葵は、真ん前で吊革を持って立っている優一の全身コーデを改めて上から下へと拝見した。
見事なまでに高そうな黒いスーツとピシッと決めた赤いネクタイ。
相変わらずのロングコートはお気に入りのようだが今日の天気には少し暑そうではある。
そして顔にはマスクと目元の見えない濃い色のサングラス。
これどっからどう見ても.......
「やっぱり芸能人だってわかりますよ....」
「え、そう....?」
葵の居候先である黒瀬優一は別名【王子様】という愛称で慕われる今を輝く一流のイケメン俳優(裏では激ホモ)であるがために普段は外では顔を晒せないのだ。
けれど、身長百八十五センチに股下九十三センチ(葵がネットで調べた)という抜群のスタイルに完璧に着こなしたスーツとサングラスとマスクという組み合わせのせいか、現在進行形で周りから物凄く注目を浴びているのである。
周りの声を翻訳するのであればとりあえず「あのスタイルの良いお兄さんの顔が見たい!」「絶対芸能人だけどあの男(葵)は誰?!」といった感じであろうか。
「ーーーごめんね。でも折角の入学式だから邪魔はしないようにするつもりだよ?」
「はい...。俺は本当に平穏でいきたいのでほんと頼みます....」
真面目に高校に通いたい葵にとって、実際はいくら居候先相手でも芸能人を入学式に連れていくというのはあまり気の進まない話なのである。がーーーおばさんの頼みならば仕方ないということで受け入れたのだ。
おばさんは黒瀬優一が俳優だということも知らないみたいだし顔も見たことがないらしいので、イメージ的には上京して高校に通う知り合いの子供を親切に受け入れてくれた寛大なお兄さんといった感じなのだろう。
(くっ....輝子おばさんは俺が家賃の代わりにホモにあれやこれやと命令されることになってるなんて知りもしないんだろうなぁ....はぁ....。)
葵は色々と泣き出したい思いを我慢して、暫く電車に揺られた後、優一と共に学校の最寄り駅で電車を降りた。
それから改札を抜け通学路に入ると、そこにはもう葵と同じ真新しい制服を着た新一年生達がぞろぞろと匠南高等学校へと向かっていた。
「わぁなんか俺どきどきしてきた......。」
ついに自分が東京の高校生になるのだと思うと、このどきどきはいつまで経っても覚めることは無い。
真新しい環境の中で、新しいことばかりが葵を取り囲んでいる。
「ああほんと懐かしいなぁ。少し道は改装されたけどあのまんまだ。」
「あ、そういえば優一さん、ここに通ってる時は芸能活動してたって言ってましたけど、いくつから芸能の世界に入ったんですか?」
「丁度高校一年生のときにスカウトされてそこからかな。」
「へぇーそうだったんですか。」
「うん。それでモデルとか色々やりながらドラマとかも出るようになった。」
「スカウトなんですね。なんか表情の作り方とか演技とか凄いからてっきり俳優を目指していたのかと....」
「はは、そうなの?それは嬉しいな。ーーーでも僕は正直、なんで今自分が俳優をやっているのかわからないんだよね。」
「えぇ.....じゃあ優一さんの本当の夢はなんだったんですか?」
葵の問いに優一は少し首を傾げた。
「.......なんだろうね。」
「え?」
(ないの.....?)
「ていうか、もう着くよ。あそこで写真撮ろう。」
「あ、はいっ」
(なんかテレビでも言われてたけど、この人って本当にミステリアスだな....)
それから二人は入学式の会場の前の立て看板の前に向かった。
もう既に会場は開いているが、看板の前には長蛇の列が出来ていた。
列に並ぶ新入生の子達は、スーツ姿の両親と一緒にワイワイ写真を撮りながら入学式を心待ちにしているようだった。
葵はその光景を見ながら、ふと小学校の時の記憶を思い出した。
(ああーーーまた、思い出してしまう。)
もう何年も前のことだし、自分は高校になったというのに。
それはいつもすぐに、葵の中で蘇ってくるのだ。
「ーーーくん」
(俺は......)
「ーーー葵くん?」
「えっ!あ、はい!?」
「どうしたの?さっきからボーッとして。写真次だよ。」
「あ、はい。」
(いけない。こんなめでたい時に...優一さんもいるのに.....でも。)
ーーー正直羨ましく思えてしまう。ーーー
中学の入学式の時はおばさんがいてくれたけど.....あの時も丁度、おばさんの旦那さんーーー安彦おじさんが亡くなって1週間しか経っていない時だったからあまりお祝いって感じでもなかったし。
そう考えたら俺って.......。
「葵くん、写真。」
「一人.....ーーーえ?ああ....!そうですね!」
「ん?」
(やば、今の.....声に出てた...かな?)
「え?なに?どうしました?」
「え、いや.....」
優一はそれから少し考え込むようにして腕を組んだ。
そして暫くして何かを思いついたように顔をあげる。
「.....葵くん。写真さ、僕も一緒に映ったらだめかな?」
(え?)
「え!な、なんでですか!?それに写真とか、優一さん顔隠したまま撮るんですか?」
(それは不審に思われてしまうんですけど...!)
「うん、顔は隠すけどサングラスだけ外して目元だけ....とか。だめかな?」
「え.....で、でもそれじゃあ誰に撮って貰うんですか?」
「それは後ろの人に頼めばいいよ。」
「は、はぁ....なんでまた急に....」
「ん?まあ特に深い意味はないけどさ。おばさんだって僕がどんな感じの人か分かった方が安心するかなーって思ってね。」
「まあ、そうですけど....。」
(でもなんでまた急にそんなこと言い出したんだろう?
この人カメラ係やるんじゃなかったのか.....?このめでたい空気に一緒に映りたくなったのかな?)
葵は次々に疑問を浮かべながらも立て看板の隣に立った。
優一は後ろの人にお願いしてカメラを渡すと、葵と立て看板を挟むようにして端の方に立った。
「それじゃあいきますよー!」
後ろの新入生の母親がそう言いながらカメラのボタンを2回ほど押した。
「ーーーありがとうございます。」
優一は撮り終えると即座にカメラを取りに行く。
葵は写真を撮ってくれた母親にぺこりとお辞儀をすると、優一と共に会場の中へ入っていった。
けれど、新入生は会場のロビー手前で待機することになっていて、優一とはその中で分かれることになった。
「またあとでね、優一さん。この後は移動になると思うんでーーーあ、入学式終わったら帰りますか?」
「帰らないよ。このロビーで待ってる。」
「わかりました。」
「うん。」
優一は小さく頷くと、先に会場の中へ入っていった。
(入学式終わったあともいてくれるんだ。)
写真も一緒に撮りたがった程だし、内心では懐かしくてウキウキしてるんだろうなぁ。
葵はそんなことを思いながら、入学式までの間新入生達と待機していた。
..............
それから15分後に入学式が始まった。
新入生は一部に固められ、前の席の方に座った。
保護者やその他の人は後ろの方で見守る形となっていた。
「暖かい春の兆しが訪れた今日この日ーーーーーー」
匠南高等学校の校長先生の挨拶から始まって、各先生からの祝辞、在校年の先輩方からの歓迎の言葉、新入生代表宣誓、国歌斉唱ーーーときて、入学式が終わった。
この後は各自教室で生徒手帳を受け取ったり、新しい教科書を受け取ったりーーーと色々した。
葵のクラスは1年の3組でクラスは35人いた。
葵は説明が終わると同時にロビーに向かった。
ロビーの椅子には他の親も子供を待っていたりして、結構人がいる。
「優一さん、終わりました。」
「もう教科書来たのか。荷物、持つよ。」
「え?このくらい大丈夫ですよ!」
「持つからーーー葵くん。」
優一は葵から教科書やら資料やら入った袋を受け取ると、ふと、葵の名前を呼んだ。
「はい?」
葵が優一の顔を見ると、マスク越しに優しい声が響いた。
「高校入学、おめでとう。」
「あっ.....ありがとうございます。」
「おばさんにはもう写真送ったのかい?楽しみにしていると思うから早めに送ってあげてね。」
「あ、はい!帰ったら送ります!ーーーとりあえず駅に向かいましょう。」
「そうだね。」
こうして優一と葵は駅に向かった。
そこからまた20分かけて優一の住む高層マンションの最寄り駅に着くと、優一が何やら足を止めた。
「優一さん?」
「葵くんて、ケーキ好き?」
「え、好きですけど」
「お祝いに買ってあげようか」
「え!?」
(ケーキ!!めっちゃ食べたい!!)
「あっ....で、でもそんな....良いんですか?お祝いだなんて俺は別に....。」
「良いんだよ。というか、僕自身もケーキが食べたい気分だから。」
「それならいいんですけど....でも、ありがとうございます!!嬉しいです!」
(そういえば入学式に誰かからこんな風にお祝いされるなんて無かったな。中学校の入学式の時はおばさんが参加してくれたけど、その時はおじさんのこともあって思い詰めてたし...)
だから葵は高校になった今、こんなふうにお祝いしてもらえる日が来るなんて思いもしなかった。
(ていうかーーー優一さんてホモで変な事言ってきたけど、こういう所優しいよな....。最初の時も迷いなく荷物持ってくれたりしてくれたし今もだし.....。)
ホモだから。と言ってしまえば終わりなんだろうけど、そういう意味ではなくて普通にしっかりしているのだろう、と葵は感じた。
............................
家に帰ると葵はすっかりくたびれて、リビングのソファに思いきり身を投げ出した。
明日からは早速高校が始まるのだから疲れている場合ではないけれど、田舎とは圧倒的に規模が違うから身体的と言うよりも気疲れの方が強かった。
優一はテーブルにケーキを置くと着替えてくるといって自分の部屋へ入っていった。
葵は何気なくスマホを開くーーー
(ああ、そうだ。おばさんに連絡しよう。)
葵は新規メールを開くとおばさんに、無事に入学式が終わったことと黒瀬優一にケーキを買って貰ったことを伝え撮った写真を送った。
すると10分後にメールが帰ってきた。
【入学おめでとう。そしてお疲れ様。ついに葵くんも高校生になるのね。おばさん本当に嬉しいわ。
黒瀬優一さんからお祝いのケーキを頂いたのね。おばさんからもお礼伝えておいてね。
あと、写真もありがとう。それにしても黒瀬優一さんってこんなにスタイル良い人だったのね。おばさん今見てびっくりしてる、芸能人かと思っちゃったもの!なんだか隣にいるだけでドキドキしちゃいそうね!】
(ま、まあそうだよなぁ......居候先がまさか芸能人だなんて思わないよな......ていうかおばさん!優一さんのことについてばっかかよ!俺への感想はないわけ!?)
葵が悔しくなってメールをスクロールすると、メールはまだまだ下に続いていたらしく、空白の行がずらーっと画面に現れた。
(.......ん?なんで何も書いてないのにこんな下まで動かせるんだろ?)
葵が下へ思いきりスクロールすると、新たなメッセージが画面上に現れた。
そこにはこんなことが書かれていた。
【葵くん、あのね、こんな時にごめんね。でも謝りたいことがあるの。】
(俺に、謝りたいこと....?)
葵は改行された次の文に目を通す。
【中学校の入学式の時はごめんなさい。】
(え.....。)
葵は驚きつつも文章を読み続けた。
【葵くんは寂しい思いをしていたのにおじさんの事ばかりになって葵くんを一人にして、ちゃんと祝ってあげられなかったし写真も一緒に撮れなかった。
葵くんは我慢して人に気を遣うから、大丈夫だって言うけど、おばさんは未だに後悔しているの。
おばさんは遠くて祝ってあげられないけれど、また夏休みとか戻った時に改めて祝わせてね。
あと何度も言うけどーーーおばさんはいつだって葵くんのことを応援してる。葵くんは決して一人じゃないからね。
だから高校生になってもどうか、抱え込まないでね。お願いします。】
メールはそこまでで終わっていた。
(なんだおばさん....やっぱりあの時のこと気にしてたんだ。)
確かにあの時のことは今でも思い出すし、決していい思い出とは言えない。
けれど葵の中ではもう割り切っている事だった。
葵は、お礼の件と気にしていないということを打って、メールを送信した。
そのしばらく後で、優一が部屋から出てきた。
「あれ、まだ制服着ているのか。」
「あ....今、おばさんにメール打ってました。」
「そうか。ーーーケーキ、食べようか。」
「はい。あの本当に、ありがとうございます。」
「お礼なんていいよ。葵くんは律儀なんだね。」
「え、そんなことないです!俺、居候させてもらってる立場だし、家賃も払えないような子供だからまさかこうやって祝って貰えると思わなかったから、普通に嬉しくて....」
「そっか。そんなに喜んで貰えると僕も嬉しいよ。」
優一が買ってくれたケーキはショートケーキとショコラの詰め合わせだった。
お高そうな箱に詰められていて、食べるのがもったいないほど綺麗な模様がチョコで描かれている。
葵は恐る恐るショートケーキにフォークを刺して、一口食べた。
その瞬間ホイップとチョコレートといちごの絶妙な甘さが融合して口の中で広がった。
「凄く美味しいです...けどちょっと甘い?」
「ああ、甘かったかな?僕は甘い物も好きだからケーキとかパフェとかよく食べに行ったりするんだよね。そのせいで砂糖多めとか練乳多めとかとにかく太るような甘い物ばかり選んじゃうんだ。ごめんね。」
「えぇ、そうなんですか。それにしては体型がめちゃくちゃ維持されてますけど.....」
(というかむしろムカつくほどスタイル抜群....)
「そうかな?そう見えてるならいいんだけど。」
「見えてます見えてます。安心してください。」
(おばさんにも褒められてるほどですから!!ホモって知られなければ大概の人は惚れる容姿してますから!)
「そう、ありがとう。」
優一は嬉しそうにお礼を言うとショートケーキの最後の一口をぱくっと口に入れた。
そして幸せそうな顔を浮かべてる。
(やっぱこう見ると......完璧な王子様なんだよなぁ。)
そういえばーーー思うことがあった。
なんでこの人は男の人が好きなんだろう?
葵はそんなことをしみじみと考えながら優一の綺麗な顔を眺めた。
がーーーバチッと目が合うと、王子様の顔は突然悪魔に変貌した。
「ん?なに?もしかしてーーー見とれてた?」
「へ!?い、いやいや.....」
「あーそうだ、今日の家賃、どうする?」
「ひぇ.....な、なんのことでしょうか。」
ケーキなんかもらってちょっと嬉しくなっていたばかりに、忘れそうになっていた。
「いやまあさー、入学式だから今日の分は無しにしてあげようかなぁって思ってたけどーーー葵くんの顔見てたらキスしたくなっちゃった。」
「き、キス!?」
「うん。ーーーだめ?」
優一はそう言いながら上目遣いをしてきた。
綺麗な長い睫毛と切れ長の目がじーっと葵の目を見つめて離さない。
(こ、これが何万人の女性を落としてきた王子の上目遣い....!
でも、葵ーーーだめだ。だめなんだ。だって俺はーーー男だろうが!!)
「だ、だめです。」
「ーーーそう、わかった。」
優一は上目遣いをやめて立ち上がると、その瞬間葵の顔に一気に近付いてーーー
ちゅっ。
葵の唇に唇を重ねた。
「なぁぁあ!!!何してるんですか!俺、今だめって言ったんですけど!?もおお....したんだからそれちゃんと家賃に含めてくださいよ!」
「うん。でも家賃にするならもう少し。」
「も、もう少しって.....!?」
優一は戸惑う葵の手を握ってもう一度唇と唇を重ねた。
そしてそれは次第に舌と舌が絡むような深いキスに変わっていく。
「んんっ.....はぁ.....ちょっとっ...」
ちゅっ.....ちゅっ.....。
(だめだ.....また......)
優一の舌が熱くて、頭がボーっとしてくる。
でも、葵は優一がさっき言った言葉をちゃんと聞いていた。
(葵流されるな!この人はもう少し。って言ったんだっ!)
「んっ.....んんっ.....優一さんっ.....優一さん!!」
「.....なに。」
「もう少しが長すぎます!もう終わりっ!!」
「ああーーーごめん。んじゃ少し長くなった分は、世話分ということにしよう。」
「な、なんですかそれ.....」
「僕のお世話分。」
「だからそのお世話って....」
「ーーーじゃ、僕はちょっと仕事してくるね、小説の方の。葵くんも明日からいよいよ高校始まるんだし、支度とかやる事やっときなね。」
「い、いや.....ちょっと」
キスされていた体制のままポカーンと立っている葵をよそに、優一はそのまま部屋へ戻っていってしまった。
(思うんだけどこの人ってキスとかしたあとでも急に切り替えられる人なのかな...。)
住むためには仕方ないけど、なんだかムカつく。
葵はモヤモヤしながらも食べ終わったケーキのフォークを台所に置いて、ケーキの箱も端に片付けると部屋へと戻った。
ついに、匠南高等学校の入学式の日がやってきた。
葵は朝早くに起きると早々と支度を済ませ、遅れて起きてきた優一と共に足早に匠南高等学校への電車へ乗り込んだ。
入学式が始まるのは10時からで、まだ全然時間はあるだろうーーーと優一に言われたものの、葵は居てもたってもいられなかった。
(だって俺はこの日を待ち侘びていんだから!)
葵が電車に揺られながら何気なくスマホを開くと、おばさんからメールが届いていた。
そこには件名に「入学式おめでとう」の文字ーーーそして本題には「黒瀬優一さんがお休みなら着いていってもらってね。入学式の写真!待ってるよ~」というメッセージが書かれていた。
当たり前だが、優一の言った通りおばさんは写真を待ち望んでいた。
だから優一が来てくれることになって良かったーーーと思うのだが、一つだけ心配があった。
それは.....
「ねぇ、優一さん。」
「どうしたの?葵くん。」
車内の椅子に座っていた葵は、真ん前で吊革を持って立っている優一の全身コーデを改めて上から下へと拝見した。
見事なまでに高そうな黒いスーツとピシッと決めた赤いネクタイ。
相変わらずのロングコートはお気に入りのようだが今日の天気には少し暑そうではある。
そして顔にはマスクと目元の見えない濃い色のサングラス。
これどっからどう見ても.......
「やっぱり芸能人だってわかりますよ....」
「え、そう....?」
葵の居候先である黒瀬優一は別名【王子様】という愛称で慕われる今を輝く一流のイケメン俳優(裏では激ホモ)であるがために普段は外では顔を晒せないのだ。
けれど、身長百八十五センチに股下九十三センチ(葵がネットで調べた)という抜群のスタイルに完璧に着こなしたスーツとサングラスとマスクという組み合わせのせいか、現在進行形で周りから物凄く注目を浴びているのである。
周りの声を翻訳するのであればとりあえず「あのスタイルの良いお兄さんの顔が見たい!」「絶対芸能人だけどあの男(葵)は誰?!」といった感じであろうか。
「ーーーごめんね。でも折角の入学式だから邪魔はしないようにするつもりだよ?」
「はい...。俺は本当に平穏でいきたいのでほんと頼みます....」
真面目に高校に通いたい葵にとって、実際はいくら居候先相手でも芸能人を入学式に連れていくというのはあまり気の進まない話なのである。がーーーおばさんの頼みならば仕方ないということで受け入れたのだ。
おばさんは黒瀬優一が俳優だということも知らないみたいだし顔も見たことがないらしいので、イメージ的には上京して高校に通う知り合いの子供を親切に受け入れてくれた寛大なお兄さんといった感じなのだろう。
(くっ....輝子おばさんは俺が家賃の代わりにホモにあれやこれやと命令されることになってるなんて知りもしないんだろうなぁ....はぁ....。)
葵は色々と泣き出したい思いを我慢して、暫く電車に揺られた後、優一と共に学校の最寄り駅で電車を降りた。
それから改札を抜け通学路に入ると、そこにはもう葵と同じ真新しい制服を着た新一年生達がぞろぞろと匠南高等学校へと向かっていた。
「わぁなんか俺どきどきしてきた......。」
ついに自分が東京の高校生になるのだと思うと、このどきどきはいつまで経っても覚めることは無い。
真新しい環境の中で、新しいことばかりが葵を取り囲んでいる。
「ああほんと懐かしいなぁ。少し道は改装されたけどあのまんまだ。」
「あ、そういえば優一さん、ここに通ってる時は芸能活動してたって言ってましたけど、いくつから芸能の世界に入ったんですか?」
「丁度高校一年生のときにスカウトされてそこからかな。」
「へぇーそうだったんですか。」
「うん。それでモデルとか色々やりながらドラマとかも出るようになった。」
「スカウトなんですね。なんか表情の作り方とか演技とか凄いからてっきり俳優を目指していたのかと....」
「はは、そうなの?それは嬉しいな。ーーーでも僕は正直、なんで今自分が俳優をやっているのかわからないんだよね。」
「えぇ.....じゃあ優一さんの本当の夢はなんだったんですか?」
葵の問いに優一は少し首を傾げた。
「.......なんだろうね。」
「え?」
(ないの.....?)
「ていうか、もう着くよ。あそこで写真撮ろう。」
「あ、はいっ」
(なんかテレビでも言われてたけど、この人って本当にミステリアスだな....)
それから二人は入学式の会場の前の立て看板の前に向かった。
もう既に会場は開いているが、看板の前には長蛇の列が出来ていた。
列に並ぶ新入生の子達は、スーツ姿の両親と一緒にワイワイ写真を撮りながら入学式を心待ちにしているようだった。
葵はその光景を見ながら、ふと小学校の時の記憶を思い出した。
(ああーーーまた、思い出してしまう。)
もう何年も前のことだし、自分は高校になったというのに。
それはいつもすぐに、葵の中で蘇ってくるのだ。
「ーーーくん」
(俺は......)
「ーーー葵くん?」
「えっ!あ、はい!?」
「どうしたの?さっきからボーッとして。写真次だよ。」
「あ、はい。」
(いけない。こんなめでたい時に...優一さんもいるのに.....でも。)
ーーー正直羨ましく思えてしまう。ーーー
中学の入学式の時はおばさんがいてくれたけど.....あの時も丁度、おばさんの旦那さんーーー安彦おじさんが亡くなって1週間しか経っていない時だったからあまりお祝いって感じでもなかったし。
そう考えたら俺って.......。
「葵くん、写真。」
「一人.....ーーーえ?ああ....!そうですね!」
「ん?」
(やば、今の.....声に出てた...かな?)
「え?なに?どうしました?」
「え、いや.....」
優一はそれから少し考え込むようにして腕を組んだ。
そして暫くして何かを思いついたように顔をあげる。
「.....葵くん。写真さ、僕も一緒に映ったらだめかな?」
(え?)
「え!な、なんでですか!?それに写真とか、優一さん顔隠したまま撮るんですか?」
(それは不審に思われてしまうんですけど...!)
「うん、顔は隠すけどサングラスだけ外して目元だけ....とか。だめかな?」
「え.....で、でもそれじゃあ誰に撮って貰うんですか?」
「それは後ろの人に頼めばいいよ。」
「は、はぁ....なんでまた急に....」
「ん?まあ特に深い意味はないけどさ。おばさんだって僕がどんな感じの人か分かった方が安心するかなーって思ってね。」
「まあ、そうですけど....。」
(でもなんでまた急にそんなこと言い出したんだろう?
この人カメラ係やるんじゃなかったのか.....?このめでたい空気に一緒に映りたくなったのかな?)
葵は次々に疑問を浮かべながらも立て看板の隣に立った。
優一は後ろの人にお願いしてカメラを渡すと、葵と立て看板を挟むようにして端の方に立った。
「それじゃあいきますよー!」
後ろの新入生の母親がそう言いながらカメラのボタンを2回ほど押した。
「ーーーありがとうございます。」
優一は撮り終えると即座にカメラを取りに行く。
葵は写真を撮ってくれた母親にぺこりとお辞儀をすると、優一と共に会場の中へ入っていった。
けれど、新入生は会場のロビー手前で待機することになっていて、優一とはその中で分かれることになった。
「またあとでね、優一さん。この後は移動になると思うんでーーーあ、入学式終わったら帰りますか?」
「帰らないよ。このロビーで待ってる。」
「わかりました。」
「うん。」
優一は小さく頷くと、先に会場の中へ入っていった。
(入学式終わったあともいてくれるんだ。)
写真も一緒に撮りたがった程だし、内心では懐かしくてウキウキしてるんだろうなぁ。
葵はそんなことを思いながら、入学式までの間新入生達と待機していた。
..............
それから15分後に入学式が始まった。
新入生は一部に固められ、前の席の方に座った。
保護者やその他の人は後ろの方で見守る形となっていた。
「暖かい春の兆しが訪れた今日この日ーーーーーー」
匠南高等学校の校長先生の挨拶から始まって、各先生からの祝辞、在校年の先輩方からの歓迎の言葉、新入生代表宣誓、国歌斉唱ーーーときて、入学式が終わった。
この後は各自教室で生徒手帳を受け取ったり、新しい教科書を受け取ったりーーーと色々した。
葵のクラスは1年の3組でクラスは35人いた。
葵は説明が終わると同時にロビーに向かった。
ロビーの椅子には他の親も子供を待っていたりして、結構人がいる。
「優一さん、終わりました。」
「もう教科書来たのか。荷物、持つよ。」
「え?このくらい大丈夫ですよ!」
「持つからーーー葵くん。」
優一は葵から教科書やら資料やら入った袋を受け取ると、ふと、葵の名前を呼んだ。
「はい?」
葵が優一の顔を見ると、マスク越しに優しい声が響いた。
「高校入学、おめでとう。」
「あっ.....ありがとうございます。」
「おばさんにはもう写真送ったのかい?楽しみにしていると思うから早めに送ってあげてね。」
「あ、はい!帰ったら送ります!ーーーとりあえず駅に向かいましょう。」
「そうだね。」
こうして優一と葵は駅に向かった。
そこからまた20分かけて優一の住む高層マンションの最寄り駅に着くと、優一が何やら足を止めた。
「優一さん?」
「葵くんて、ケーキ好き?」
「え、好きですけど」
「お祝いに買ってあげようか」
「え!?」
(ケーキ!!めっちゃ食べたい!!)
「あっ....で、でもそんな....良いんですか?お祝いだなんて俺は別に....。」
「良いんだよ。というか、僕自身もケーキが食べたい気分だから。」
「それならいいんですけど....でも、ありがとうございます!!嬉しいです!」
(そういえば入学式に誰かからこんな風にお祝いされるなんて無かったな。中学校の入学式の時はおばさんが参加してくれたけど、その時はおじさんのこともあって思い詰めてたし...)
だから葵は高校になった今、こんなふうにお祝いしてもらえる日が来るなんて思いもしなかった。
(ていうかーーー優一さんてホモで変な事言ってきたけど、こういう所優しいよな....。最初の時も迷いなく荷物持ってくれたりしてくれたし今もだし.....。)
ホモだから。と言ってしまえば終わりなんだろうけど、そういう意味ではなくて普通にしっかりしているのだろう、と葵は感じた。
............................
家に帰ると葵はすっかりくたびれて、リビングのソファに思いきり身を投げ出した。
明日からは早速高校が始まるのだから疲れている場合ではないけれど、田舎とは圧倒的に規模が違うから身体的と言うよりも気疲れの方が強かった。
優一はテーブルにケーキを置くと着替えてくるといって自分の部屋へ入っていった。
葵は何気なくスマホを開くーーー
(ああ、そうだ。おばさんに連絡しよう。)
葵は新規メールを開くとおばさんに、無事に入学式が終わったことと黒瀬優一にケーキを買って貰ったことを伝え撮った写真を送った。
すると10分後にメールが帰ってきた。
【入学おめでとう。そしてお疲れ様。ついに葵くんも高校生になるのね。おばさん本当に嬉しいわ。
黒瀬優一さんからお祝いのケーキを頂いたのね。おばさんからもお礼伝えておいてね。
あと、写真もありがとう。それにしても黒瀬優一さんってこんなにスタイル良い人だったのね。おばさん今見てびっくりしてる、芸能人かと思っちゃったもの!なんだか隣にいるだけでドキドキしちゃいそうね!】
(ま、まあそうだよなぁ......居候先がまさか芸能人だなんて思わないよな......ていうかおばさん!優一さんのことについてばっかかよ!俺への感想はないわけ!?)
葵が悔しくなってメールをスクロールすると、メールはまだまだ下に続いていたらしく、空白の行がずらーっと画面に現れた。
(.......ん?なんで何も書いてないのにこんな下まで動かせるんだろ?)
葵が下へ思いきりスクロールすると、新たなメッセージが画面上に現れた。
そこにはこんなことが書かれていた。
【葵くん、あのね、こんな時にごめんね。でも謝りたいことがあるの。】
(俺に、謝りたいこと....?)
葵は改行された次の文に目を通す。
【中学校の入学式の時はごめんなさい。】
(え.....。)
葵は驚きつつも文章を読み続けた。
【葵くんは寂しい思いをしていたのにおじさんの事ばかりになって葵くんを一人にして、ちゃんと祝ってあげられなかったし写真も一緒に撮れなかった。
葵くんは我慢して人に気を遣うから、大丈夫だって言うけど、おばさんは未だに後悔しているの。
おばさんは遠くて祝ってあげられないけれど、また夏休みとか戻った時に改めて祝わせてね。
あと何度も言うけどーーーおばさんはいつだって葵くんのことを応援してる。葵くんは決して一人じゃないからね。
だから高校生になってもどうか、抱え込まないでね。お願いします。】
メールはそこまでで終わっていた。
(なんだおばさん....やっぱりあの時のこと気にしてたんだ。)
確かにあの時のことは今でも思い出すし、決していい思い出とは言えない。
けれど葵の中ではもう割り切っている事だった。
葵は、お礼の件と気にしていないということを打って、メールを送信した。
そのしばらく後で、優一が部屋から出てきた。
「あれ、まだ制服着ているのか。」
「あ....今、おばさんにメール打ってました。」
「そうか。ーーーケーキ、食べようか。」
「はい。あの本当に、ありがとうございます。」
「お礼なんていいよ。葵くんは律儀なんだね。」
「え、そんなことないです!俺、居候させてもらってる立場だし、家賃も払えないような子供だからまさかこうやって祝って貰えると思わなかったから、普通に嬉しくて....」
「そっか。そんなに喜んで貰えると僕も嬉しいよ。」
優一が買ってくれたケーキはショートケーキとショコラの詰め合わせだった。
お高そうな箱に詰められていて、食べるのがもったいないほど綺麗な模様がチョコで描かれている。
葵は恐る恐るショートケーキにフォークを刺して、一口食べた。
その瞬間ホイップとチョコレートといちごの絶妙な甘さが融合して口の中で広がった。
「凄く美味しいです...けどちょっと甘い?」
「ああ、甘かったかな?僕は甘い物も好きだからケーキとかパフェとかよく食べに行ったりするんだよね。そのせいで砂糖多めとか練乳多めとかとにかく太るような甘い物ばかり選んじゃうんだ。ごめんね。」
「えぇ、そうなんですか。それにしては体型がめちゃくちゃ維持されてますけど.....」
(というかむしろムカつくほどスタイル抜群....)
「そうかな?そう見えてるならいいんだけど。」
「見えてます見えてます。安心してください。」
(おばさんにも褒められてるほどですから!!ホモって知られなければ大概の人は惚れる容姿してますから!)
「そう、ありがとう。」
優一は嬉しそうにお礼を言うとショートケーキの最後の一口をぱくっと口に入れた。
そして幸せそうな顔を浮かべてる。
(やっぱこう見ると......完璧な王子様なんだよなぁ。)
そういえばーーー思うことがあった。
なんでこの人は男の人が好きなんだろう?
葵はそんなことをしみじみと考えながら優一の綺麗な顔を眺めた。
がーーーバチッと目が合うと、王子様の顔は突然悪魔に変貌した。
「ん?なに?もしかしてーーー見とれてた?」
「へ!?い、いやいや.....」
「あーそうだ、今日の家賃、どうする?」
「ひぇ.....な、なんのことでしょうか。」
ケーキなんかもらってちょっと嬉しくなっていたばかりに、忘れそうになっていた。
「いやまあさー、入学式だから今日の分は無しにしてあげようかなぁって思ってたけどーーー葵くんの顔見てたらキスしたくなっちゃった。」
「き、キス!?」
「うん。ーーーだめ?」
優一はそう言いながら上目遣いをしてきた。
綺麗な長い睫毛と切れ長の目がじーっと葵の目を見つめて離さない。
(こ、これが何万人の女性を落としてきた王子の上目遣い....!
でも、葵ーーーだめだ。だめなんだ。だって俺はーーー男だろうが!!)
「だ、だめです。」
「ーーーそう、わかった。」
優一は上目遣いをやめて立ち上がると、その瞬間葵の顔に一気に近付いてーーー
ちゅっ。
葵の唇に唇を重ねた。
「なぁぁあ!!!何してるんですか!俺、今だめって言ったんですけど!?もおお....したんだからそれちゃんと家賃に含めてくださいよ!」
「うん。でも家賃にするならもう少し。」
「も、もう少しって.....!?」
優一は戸惑う葵の手を握ってもう一度唇と唇を重ねた。
そしてそれは次第に舌と舌が絡むような深いキスに変わっていく。
「んんっ.....はぁ.....ちょっとっ...」
ちゅっ.....ちゅっ.....。
(だめだ.....また......)
優一の舌が熱くて、頭がボーっとしてくる。
でも、葵は優一がさっき言った言葉をちゃんと聞いていた。
(葵流されるな!この人はもう少し。って言ったんだっ!)
「んっ.....んんっ.....優一さんっ.....優一さん!!」
「.....なに。」
「もう少しが長すぎます!もう終わりっ!!」
「ああーーーごめん。んじゃ少し長くなった分は、世話分ということにしよう。」
「な、なんですかそれ.....」
「僕のお世話分。」
「だからそのお世話って....」
「ーーーじゃ、僕はちょっと仕事してくるね、小説の方の。葵くんも明日からいよいよ高校始まるんだし、支度とかやる事やっときなね。」
「い、いや.....ちょっと」
キスされていた体制のままポカーンと立っている葵をよそに、優一はそのまま部屋へ戻っていってしまった。
(思うんだけどこの人ってキスとかしたあとでも急に切り替えられる人なのかな...。)
住むためには仕方ないけど、なんだかムカつく。
葵はモヤモヤしながらも食べ終わったケーキのフォークを台所に置いて、ケーキの箱も端に片付けると部屋へと戻った。
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