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Case04:龍神の巫女は舞う
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山と積み重なる紙。
無造作に置かれた本。
煌々と光るモニター。
そんな部屋の最奥にあるのは魔法特殊案件特務部、事務課の長のデスク。
……なのだが。
「あれ、巫女さまは?」
「あら、巫女さんは?」
よく似た双子が、その場に居た職員達に問う。
「あー、課長ならしばらくお休みですよ」
「奉納の時期ですからねぇ」
「前日まで散々、面倒だ!ってグチりながら仕事してましたっす」
「ほんとこの時期だけは課長が“少女”って言える年齢なんだよなーって実感できる」
「「「それなー」」」
あぁ……と遠い目をした双子。
結局、手にした報告書はサボりなのか不在な係長のデスクに置いておく事にしたようだ。
***
一方その頃。
とある山奥にある社では、慌ただしく面布を付けた人々が動いていた。
その音が遠くに聞こえるここは、この社の主たる土地神……龍神の神域にほど近い繋ぎの間。
『やはりこの時期は良い。賑やかだ』
「引きこもり神がよく言う……」
むくれながら胡座をかき、龍神に供えられたはずの煎餅を齧るのは──毛先が紅い白髪に、朱い瞳を持った少女。
和装と洋装の中間にあるような服の隙間からは、鱗のような痣が右腕から首にかけて巻き付くように見えている。
その痣こそ、少女がこの神域で、彼の神に対して気安く過ごせる理由だ。
──龍神の愛し子。
それが、巫女と呼ばれる彼女であった。
『……うまそうだな。我にもくれ』
「自分で取れ」
『口に放り込んでくれればそれで良いのだが』
「人型に変化するのが面倒なだけだろう。動け駄神」
ちょっかいを掛けてくる太い髭を、ぴしゃりと叩き落とす。
すると今度は頭が近付いて来た。
『……南天』
………………私の真名を呼ぶ……いや。
呼べるのは、この龍だけ。
今は私がこの土地から離れているからこそ、年に何回も呼ばれることは無い……ソレ。
私は大きなため息をひとつ吐いて、側にあった煎餅を手に取った。
***
それから時間は過ぎ、満月が天高く登る頃。
私は社の中にある高舞台の上で片膝を付いている。
この社において、私が傅き頭垂れるのは龍神のみ。
唯一の音であるパチパチと爆ぜる松明がパン!と、ひときわ大きく音を鳴らした瞬間、私は口を開いた。
「《──来い》」
次の瞬間、手元に現れたのは一振の刀。
スラリと抜けば、紅と浅葱の刀身があらわになった。
短く息を吸い、ソレで空気を割くように振う。
──嗚呼、やはりコレが1番手に馴染む。
踊るように剣舞を舞う巫女。
首に揺れるは赤々とした玉飾り。
鱗のような痣はうっすらと光を帯びて。
月明かりはその白き髪を輝かせ。
朱い瞳は爛々と燃える。
その姿はまさに、龍神の
──仔であり
──友であり
──妻であり
──対なる者であり
愛し子であるに相応しい、怪しさと神々しさを放っていたという。
無造作に置かれた本。
煌々と光るモニター。
そんな部屋の最奥にあるのは魔法特殊案件特務部、事務課の長のデスク。
……なのだが。
「あれ、巫女さまは?」
「あら、巫女さんは?」
よく似た双子が、その場に居た職員達に問う。
「あー、課長ならしばらくお休みですよ」
「奉納の時期ですからねぇ」
「前日まで散々、面倒だ!ってグチりながら仕事してましたっす」
「ほんとこの時期だけは課長が“少女”って言える年齢なんだよなーって実感できる」
「「「それなー」」」
あぁ……と遠い目をした双子。
結局、手にした報告書はサボりなのか不在な係長のデスクに置いておく事にしたようだ。
***
一方その頃。
とある山奥にある社では、慌ただしく面布を付けた人々が動いていた。
その音が遠くに聞こえるここは、この社の主たる土地神……龍神の神域にほど近い繋ぎの間。
『やはりこの時期は良い。賑やかだ』
「引きこもり神がよく言う……」
むくれながら胡座をかき、龍神に供えられたはずの煎餅を齧るのは──毛先が紅い白髪に、朱い瞳を持った少女。
和装と洋装の中間にあるような服の隙間からは、鱗のような痣が右腕から首にかけて巻き付くように見えている。
その痣こそ、少女がこの神域で、彼の神に対して気安く過ごせる理由だ。
──龍神の愛し子。
それが、巫女と呼ばれる彼女であった。
『……うまそうだな。我にもくれ』
「自分で取れ」
『口に放り込んでくれればそれで良いのだが』
「人型に変化するのが面倒なだけだろう。動け駄神」
ちょっかいを掛けてくる太い髭を、ぴしゃりと叩き落とす。
すると今度は頭が近付いて来た。
『……南天』
………………私の真名を呼ぶ……いや。
呼べるのは、この龍だけ。
今は私がこの土地から離れているからこそ、年に何回も呼ばれることは無い……ソレ。
私は大きなため息をひとつ吐いて、側にあった煎餅を手に取った。
***
それから時間は過ぎ、満月が天高く登る頃。
私は社の中にある高舞台の上で片膝を付いている。
この社において、私が傅き頭垂れるのは龍神のみ。
唯一の音であるパチパチと爆ぜる松明がパン!と、ひときわ大きく音を鳴らした瞬間、私は口を開いた。
「《──来い》」
次の瞬間、手元に現れたのは一振の刀。
スラリと抜けば、紅と浅葱の刀身があらわになった。
短く息を吸い、ソレで空気を割くように振う。
──嗚呼、やはりコレが1番手に馴染む。
踊るように剣舞を舞う巫女。
首に揺れるは赤々とした玉飾り。
鱗のような痣はうっすらと光を帯びて。
月明かりはその白き髪を輝かせ。
朱い瞳は爛々と燃える。
その姿はまさに、龍神の
──仔であり
──友であり
──妻であり
──対なる者であり
愛し子であるに相応しい、怪しさと神々しさを放っていたという。
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