4 / 5
Case03:胡蝶舞うは夢現の狭間
しおりを挟む
木々の生い茂る森の中にある、木の生えない場所。
苔むした岩の間。
生き物や物の“隙間”から見えるもの。
──そうした場所は“あちら側”と繋がる場所であると言う。
***
一見、霧に覆われた平原に見える場所だ。
……でも、ここは何処だろう。
とにかく、辺りを見てみる事にした。
歩いて
歩いて
歩いて
はたと気が付いた。
──同じ場所をぐるぐる回っている……?
***
「またこの時期がやって来たか……」
春。
生き物たちが凍てつく季節を越えて目覚め、その生を謳歌し始める季節。
そして、とある生き物が風に乗ってやって来る季節でもある。
出逢えば夢幻に囚われ、狭間の世界を彷徨う事になるという厄介な虫。
──幻夢蝶
また今年も、少年少女を中心とした行方不明案件が増えていた。
***
ぐるぐる
ぐるぐる
歩き続けて。
でも、景色は変わらない。
結構な時間、ここに居るはずなのに、辺りは薄明るい黄昏時のまま。
でもまだ、お腹も空いていないし大丈夫。
疲れてもいないからまだ歩ける。
まだ。
まだまだ。
まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ
──ピシャッ!バーーーーン!!!
突然、閃光と共に轟音が轟いた。
次の瞬間ゴウッと強い風が吹いて、霧がみるみるうちに晴れて行った。
そして。
巨大な影が2つ、羽ばたきと共に通り過ぎて行く。
タッ!とその影──巨鳥から飛び降りたのは、幼い子供たち。
「居たね」
「生きてたね」
「「良かったね」」
交互に話すこの子たちは双子……だろうか。
黒の混じる黄色の髪と、白の混じる赤色の髪。
持ちうる色は違えど、似た雰囲気を持っていた。
「僕は兄のクサントス」
「ボクは妹のエリュテイア」
「「あなたは?」」
慌てて自分も自己紹介をしようとして──気が付いた。
あれ……じぶんってなんだっけ
「あれれ、忘れちゃってるみたいだね」
「あらら、忘れちゃったみたいだね」
「「大丈夫、ここから出れば思い出せるよ」」
不思議な雰囲気の兄妹が空を見上げた、次の瞬間。
──雷と炎が吹き荒れた。
***
雷と嵐を従える黄の大鷲──雷鳴鳥
死と再生を司る炎を従える紅の鳥──不死鳥
神話に詠われる巨鳥を従え……否、共にあるのは、まだ幼き兄妹。
“あちら側”に魅入られ、己が名を、記憶を無くした哀れなる子供たち。
しかし、運良く“あちら側”でも人間と共に生きる巨鳥たちに拾われ、その仔として名を与えられた兄妹。
“あちら側”は時の流れが異なるという。
こちらの1年があちらでは1週間であったり。
はたまた、こちらの1日があちらの10年であったり。
そんな場所に住むモノに名を。
存在を与えられた人間はどうなるのか。
『あの時、この子らに名付けたのは間違いであったのだろうか』
その翼の下で、黒の混じる黄色の髪の子供……に見える人の子、クサントスを抱く雷鳴鳥がいう。
『あの時はそれが最善でした。それは間違いのないことでしょう』
その足下で、白の混じる赤色の髪の子供……に見える人の子、エリュテイアを抱く不死鳥がいう。
永きを生きる巨鳥が守るは、人間の理を外れた哀れなる子。
時間を無くした兄妹は、末永く彼の鳥たちの雛として守られることだろう。
苔むした岩の間。
生き物や物の“隙間”から見えるもの。
──そうした場所は“あちら側”と繋がる場所であると言う。
***
一見、霧に覆われた平原に見える場所だ。
……でも、ここは何処だろう。
とにかく、辺りを見てみる事にした。
歩いて
歩いて
歩いて
はたと気が付いた。
──同じ場所をぐるぐる回っている……?
***
「またこの時期がやって来たか……」
春。
生き物たちが凍てつく季節を越えて目覚め、その生を謳歌し始める季節。
そして、とある生き物が風に乗ってやって来る季節でもある。
出逢えば夢幻に囚われ、狭間の世界を彷徨う事になるという厄介な虫。
──幻夢蝶
また今年も、少年少女を中心とした行方不明案件が増えていた。
***
ぐるぐる
ぐるぐる
歩き続けて。
でも、景色は変わらない。
結構な時間、ここに居るはずなのに、辺りは薄明るい黄昏時のまま。
でもまだ、お腹も空いていないし大丈夫。
疲れてもいないからまだ歩ける。
まだ。
まだまだ。
まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだまだ
──ピシャッ!バーーーーン!!!
突然、閃光と共に轟音が轟いた。
次の瞬間ゴウッと強い風が吹いて、霧がみるみるうちに晴れて行った。
そして。
巨大な影が2つ、羽ばたきと共に通り過ぎて行く。
タッ!とその影──巨鳥から飛び降りたのは、幼い子供たち。
「居たね」
「生きてたね」
「「良かったね」」
交互に話すこの子たちは双子……だろうか。
黒の混じる黄色の髪と、白の混じる赤色の髪。
持ちうる色は違えど、似た雰囲気を持っていた。
「僕は兄のクサントス」
「ボクは妹のエリュテイア」
「「あなたは?」」
慌てて自分も自己紹介をしようとして──気が付いた。
あれ……じぶんってなんだっけ
「あれれ、忘れちゃってるみたいだね」
「あらら、忘れちゃったみたいだね」
「「大丈夫、ここから出れば思い出せるよ」」
不思議な雰囲気の兄妹が空を見上げた、次の瞬間。
──雷と炎が吹き荒れた。
***
雷と嵐を従える黄の大鷲──雷鳴鳥
死と再生を司る炎を従える紅の鳥──不死鳥
神話に詠われる巨鳥を従え……否、共にあるのは、まだ幼き兄妹。
“あちら側”に魅入られ、己が名を、記憶を無くした哀れなる子供たち。
しかし、運良く“あちら側”でも人間と共に生きる巨鳥たちに拾われ、その仔として名を与えられた兄妹。
“あちら側”は時の流れが異なるという。
こちらの1年があちらでは1週間であったり。
はたまた、こちらの1日があちらの10年であったり。
そんな場所に住むモノに名を。
存在を与えられた人間はどうなるのか。
『あの時、この子らに名付けたのは間違いであったのだろうか』
その翼の下で、黒の混じる黄色の髪の子供……に見える人の子、クサントスを抱く雷鳴鳥がいう。
『あの時はそれが最善でした。それは間違いのないことでしょう』
その足下で、白の混じる赤色の髪の子供……に見える人の子、エリュテイアを抱く不死鳥がいう。
永きを生きる巨鳥が守るは、人間の理を外れた哀れなる子。
時間を無くした兄妹は、末永く彼の鳥たちの雛として守られることだろう。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
S級騎士の俺が精鋭部隊の隊長に任命されたが、部下がみんな年上のS級女騎士だった
ミズノみすぎ
ファンタジー
「黒騎士ゼクード・フォルス。君を竜狩り精鋭部隊【ドラゴンキラー隊】の隊長に任命する」
15歳の春。
念願のS級騎士になった俺は、いきなり国王様からそんな命令を下された。
「隊長とか面倒くさいんですけど」
S級騎士はモテるって聞いたからなったけど、隊長とかそんな重いポジションは……
「部下は美女揃いだぞ?」
「やらせていただきます!」
こうして俺は仕方なく隊長となった。
渡された部隊名簿を見ると隊員は俺を含めた女騎士3人の計4人構成となっていた。
女騎士二人は17歳。
もう一人の女騎士は19歳(俺の担任の先生)。
「あの……みんな年上なんですが」
「だが美人揃いだぞ?」
「がんばります!」
とは言ったものの。
俺のような若輩者の部下にされて、彼女たちに文句はないのだろうか?
と思っていた翌日の朝。
実家の玄関を部下となる女騎士が叩いてきた!
★のマークがついた話数にはイラストや4コマなどが後書きに記載されています。
※2023年11月25日に書籍が発売しています!
イラストレーターはiltusa先生です!
※コミカライズも進行中!
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
冷遇された第七皇子はいずれぎゃふんと言わせたい! 赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていました
taki210
ファンタジー
旧題:娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件
『穢らわしい娼婦の子供』
『ロクに魔法も使えない出来損ない』
『皇帝になれない無能皇子』
皇帝ガレスと娼婦ソーニャの間に生まれた第七皇子ルクスは、魔力が少ないからという理由で無能皇子と呼ばれ冷遇されていた。
だが実はルクスの中身は転生者であり、自分と母親の身を守るために、ルクスは魔法を極めることに。
毎日人知れず死に物狂いの努力を続けた結果、ルクスの体内魔力量は拡張されていき、魔法の威力もどんどん向上していき……
『なんだあの威力の魔法は…?』
『モンスターの群れをたった一人で壊滅させただと…?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ…?』
『あいつを無能皇子と呼んだ奴はとんだ大間抜けだ…』
そして気がつけば周囲を畏怖させてしまうほどの魔法使いの逸材へと成長していたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる