7 / 8
第1章 宵の鉄鎖、暁のぬくもり
第6話《旅立ち》
しおりを挟む
すっかり雪も溶け、草木の新芽が見え始めた頃。
そんな穏やかな季節に──“ソイツら”はやって来た。
『三人とも、早く逃げなさい!人間たちの狙いはあなたたちよ!!』
母さんの悲痛な声が聞こえた。
目の前には武装した人間の群れ。
ソイツらは……あの施設に居た者たちによく似ていた。
『早く行きなさい!ここは私と母さんで何とかするから……!』
傷ついた身体で。
それでもボクたちを庇い、人間たちを威嚇する白姉さん。
滲む涙を何とか振り払い、重たい身体を何とか持ち上げて走った。
追いかけてくる敵をライラの魔法で吊し上げて。
時に銀が鋭い氷柱で突き刺して。
途中、大きな爆発音が聞こえた。
本当は母さんたちと戦いたかった。
ボクだって森の守人たる大猫の娘なのに……。
この鎖が無ければ。
人間が持っていた嫌な気配のする結晶に……魔力を吸われる事もなかったのか。
この鎖が無ければ。
ボクと繋がっていたせいで……ライラの魔力まで奪われる事もなかったのか。
そもそも。
ボクが逃げたのが知られたからこそ、アイツらを引き寄せたのではないか?
それでも。
逃がしてくれた母さんに、姉さんに報いるために。
ひたすら走って、走って……走り続けた。
こうしてこの日、ボクたちは──家族と家を失った。
そんな穏やかな季節に──“ソイツら”はやって来た。
『三人とも、早く逃げなさい!人間たちの狙いはあなたたちよ!!』
母さんの悲痛な声が聞こえた。
目の前には武装した人間の群れ。
ソイツらは……あの施設に居た者たちによく似ていた。
『早く行きなさい!ここは私と母さんで何とかするから……!』
傷ついた身体で。
それでもボクたちを庇い、人間たちを威嚇する白姉さん。
滲む涙を何とか振り払い、重たい身体を何とか持ち上げて走った。
追いかけてくる敵をライラの魔法で吊し上げて。
時に銀が鋭い氷柱で突き刺して。
途中、大きな爆発音が聞こえた。
本当は母さんたちと戦いたかった。
ボクだって森の守人たる大猫の娘なのに……。
この鎖が無ければ。
人間が持っていた嫌な気配のする結晶に……魔力を吸われる事もなかったのか。
この鎖が無ければ。
ボクと繋がっていたせいで……ライラの魔力まで奪われる事もなかったのか。
そもそも。
ボクが逃げたのが知られたからこそ、アイツらを引き寄せたのではないか?
それでも。
逃がしてくれた母さんに、姉さんに報いるために。
ひたすら走って、走って……走り続けた。
こうしてこの日、ボクたちは──家族と家を失った。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
闇竜飛翔
星月 猫
ファンタジー
これは、“聡明なる闇竜”の血を色濃く受け継いだ先祖返りの少年と、その幼なじみの獣使い(ビーストマスター)の少女の物語。
《アルファポリス》《小説家になろう》《カクヨム》《ノベルアップ》《ツギクル》にも投稿しています!
銀の森
星月 猫
ファンタジー
遠い遠い、とある星(セカイ)で人は、様々な獣たちから進化したという。
その証拠は時々現れる。
獣の要素を持って生まれる者──獣返りとして。
人々は彼らを蔑んだりはしなかった。
──少なくとも、平和であれば。
そして生まれた、狼の先祖返の少年は……?
☆「魔女集会で会いましょう」が流行っていた頃に書いたお話です
《アルファポリス》《小説家になろう》《カクヨム》《ノベルアップ》《ツギクル》にも投稿しています!
幻と謡われし者たちよ ─もしも現実世界に“使い魔”がいたとしたら─
星月 猫
ファンタジー
“使い魔”
それはこの星(セカイ)に住まう人が、握って産まれてくる“使い魔の卵”から生まれる唯一無二の友だ。
どんな時でも傍に居て、共に泣き共に笑う自分と繋がった生き物。
そんな彼らがいる星(セカイ)のとある日常を覗いてみませんか?
《アルファポリス》《小説家になろう》《カクヨム》《ノベルアップ》《ツギクル》にも投稿しています!
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユールの祭りに六花(りっか)の詩(うた)を
星月 猫
ファンタジー
ユールは1年で最も夜が長い日から始まり、12日間続くお祭りだ。
何処かの星(セカイ)では冬至とか、クリスマスと言うらしい──
これは、とある少年と少女の“ユールの祭り”のお話。
※一部、軽微な残酷描写にも思える表現がありますのでご注意ください。
《アルファポリス》《小説家になろう》《カクヨム》《ノベルアップ》《ツギクル》にも投稿しています!
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
絶望の色は……
星月 猫
ファンタジー
ある日突然、神は言った。
『この星(セカイ)にはもう、ヒトは入り切らぬ。新たな星(セカイ)を作る事も出来ぬ。──ならば仕方なかろう』
そして星(セカイ)は2つに分かたれた。
その時の人々はこれを"ラジオの電波を合わせるように、人の半分をココとは違う周波数の星(セカイ)に送ってしまった"と考えた。
そして。
家族は、友はどこへと──絶望した。
そして、長い長い月日が流れた。
《アルファポリス》《小説家になろう》《カクヨム》《ノベルアップ》《ツギクル》にも投稿しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる