君に恋したあの瞬間

☆リサーナ☆

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今も、忘れられない

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『まもなく、一番線に電車が参ります……』

ホームに彼が乗る電車が来るアナウンスが響いて、私はベンチから立ち上がった。


「んじゃ、また週末ね。またメールとかするわ」

結局、キスはやはりまだ彼には無理だったかーー。

少し残念な気もしたが、ここで私からしてしまうのは……やはりちょっと、と思った。

彼にとって、私は初めての彼女。……らしい。
ファーストキスかは知らなかったが、やはり彼にとっては特別な気がしたし、焦る事でもないしね。


いつも通り、彼が電車に乗って、その電車の窓から彼が見えなくなるまで私が見送る。

そう、思っていた。


「……リサ」

「ん?」

名前を呼ばれたと思ったら、大きな手が私の右手首を掴んで、ホームから改札口がある下の階に続く階段まで連れて行かれる。

誰もいない階段。
不意に抱き締められて、トキメキよりも驚いてしまった。


女性を抱き締めるのを明らかに慣れていない、ぎこちない緊張したような腕の中。
身体に感じる心臓の音が本当に早くて、実感した。

彼は、本当に私の事が大好きなんだってーー。


ゆっくり緩んだ、私を包む腕の力。
顔を上げて彼の顔を見ようと思ったら……。

キス、された。


……。
でもね、唇じゃなかった。

柔らかい、震えた唇がそっと触れたのはーー。

私の、おでこ。


「……じゃ。また」

ダッと逃げるように彼が階段を駆け上がって行った直後に、ホームから聞こえる電車の扉が閉まるプシューッという音。

階段で一人残された私は、彼の乗った電車がガタンガタンッと走り去る音を聴きながら……。
思わず、熱くなった頬を押さえてニヤけてしまった。


キスなんて、私からしたら今更だった。
しかも、唇ではなく額。

それなのに、私は恋を覚えたての少女のように飛び上がりたいくらいに嬉しかったのだ。

彼の気持ちの込もった、自分を心から大切に想っていると感じた、あの瞬間がーー。


すぐに携帯をポケットから取り出して、彼にメールを送る。
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