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(4)アランside

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「ーーおい!これ、どういう事なんだよっ!!」

女への想いを自覚してから1週間後の朝。
オレの社長室で待機していて、出社した早々に週刊誌片手に詰め寄ってきたのは兄上。

確か、今日は会う約束はしていなかった筈ーー。

珍しく不機嫌そうな兄上の様子に、オレが「はい?」と首を傾げると、週刊誌の開いたページを顔面に突き付けられる。
何事かと、全く訳が分からずそのページを見ると…………。

『ついにあの人が結婚?!』
『婚約指輪を購入する姿を目撃!お相手は先月お見合いをした社長令嬢か?!』

そんな見出しと共にページに貼られていたのは、この間の出張の際に宝石店で店主に婚約指輪を見せられた時の写真と、先月どうしても断れなくて一緒に食事をした社長令嬢とのツーショット写真。

何だこれはーーッ?!

心の中で叫びながらも驚きと動揺から言葉にならなかったオレに、更に兄上が詰め寄ってくる。

「お前、スズカの事が好きなんじゃないのか?あの子とは遊びなのかよっ?」

「!っ……そ、それは……」

「"それは"?何だよ。
もし遊びで手ぇ出したんなら、俺はお前を弟だろうと許さねぇからな!」

「っ、……」

この記事は全くのデマだーー。

そう否定したい。
けど、かと言って"あの女と真面目に付き合うのか?"と問われたらハッキリ返事も出来なくて……、……。

……ーーん?
ちょっと、待てよ。兄上、今……、っ……。


「っーー!!
何でオレとあの女の関係を知ってるんですか?!」

兄上は確かにハッキリ、"スズカ"とあの女の名を口にした。
いくら兄上の勘が鋭いと言っても、自分の中では相手を特定されるような発言をこれまでした覚えがなかったオレは驚きを隠せない。
すると、そんなオレを見てふうっと溜め息を吐くと、兄上は口調を落ち着いたものに戻して言った。

「言っとくけど、スズカが俺に言った訳じゃねぇからな?
相談に乗って暫くしてから、お前の邸に遊びに行っただろ?あん時に、俺がお前にやった香水の香りがスズカからしたんだよ」

!っ……あの時、か。

そう言えば、と以前兄上が自分の邸に遊びに来た時の事を思い出す。
兄上は屈託なく、アカリ様と同様使用人と会話をするから特に気には止めなかったが……。あの時確かにあの女も、あの場に居た。

と、言う事は……。
もう1か月以上前から、自分の気持ちは兄上にバレていたのだ、とオレは悟った。
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