169 / 185
(3)アランside
3-3
しおりを挟む
***
しかし、その夜ーーー。
「……なに?体調不良?」
「はい。スズカは今朝から体調が優れぬ為休んでおります」
オレの問い掛けに答えたのは使用人長のエルナ。
帰宅し、いつもならば玄関先に出迎えに集まる使用人達。だが、その中にあの女の姿がなかった。
何か特別な職務でもしているのかと思い、エルナに問い掛けたところ原因を知る事が出来た。
「……そうか、分かった」
そう返事をすると、オレの上着を片付けたエルナは一礼して自分の仕事へと戻って行く。
体調不良。
それは、まあ……仕方のない事だな。
仕方ないーー。
そう頭ではわかってはいる。けど、色々と可愛がってやろうとしたのに、その計画が狂った事が気に入らない。
こんな事なら出張中、真面目に仕事ばかりしないで少しくらいハメを外せば良かった、と後悔した。
別の使用人でも呼ぶか。
そもそも、"オレが求めた時はどんな時だろうがどんな時間だろうが相手をしろ"、それがあの女と結んだ約束だ。
向こうが来られない、相手を務められない、ならば、別に契約違反じゃないよな?
ーーうん。そうだ、そうしよう!
そもそもオレが使用人との約束で、この二ヶ月近く一人の女しか抱いていない事自体が奇跡に近かった。
よく今日まで約束を守った、と自分を褒めてやりたいぐらいで、オレは部屋を出ると二階の階段上から下の階で働く使用人達を見つめ、今夜の相手を物色する。
久々に胸の大きさで選ぶのもいいし。
たまには勝ち気な、気の強そうな女もいい。
黒髪ではなく、金髪か茶髪の……、……。
ーーだが。
見れば見る程、選ぼうとすればする程……。あんなに"女を抱きたい"と疼いていた胸がシンッとなっていった。
どの女も、同じに見える。そして直感で感じる。
この女達を抱いても、今の自分が決して満たされる事はないと……。
オレはその場を後にして、自分が今1番顔が見たいと思っている女の部屋に足を進めた。
しかし、その夜ーーー。
「……なに?体調不良?」
「はい。スズカは今朝から体調が優れぬ為休んでおります」
オレの問い掛けに答えたのは使用人長のエルナ。
帰宅し、いつもならば玄関先に出迎えに集まる使用人達。だが、その中にあの女の姿がなかった。
何か特別な職務でもしているのかと思い、エルナに問い掛けたところ原因を知る事が出来た。
「……そうか、分かった」
そう返事をすると、オレの上着を片付けたエルナは一礼して自分の仕事へと戻って行く。
体調不良。
それは、まあ……仕方のない事だな。
仕方ないーー。
そう頭ではわかってはいる。けど、色々と可愛がってやろうとしたのに、その計画が狂った事が気に入らない。
こんな事なら出張中、真面目に仕事ばかりしないで少しくらいハメを外せば良かった、と後悔した。
別の使用人でも呼ぶか。
そもそも、"オレが求めた時はどんな時だろうがどんな時間だろうが相手をしろ"、それがあの女と結んだ約束だ。
向こうが来られない、相手を務められない、ならば、別に契約違反じゃないよな?
ーーうん。そうだ、そうしよう!
そもそもオレが使用人との約束で、この二ヶ月近く一人の女しか抱いていない事自体が奇跡に近かった。
よく今日まで約束を守った、と自分を褒めてやりたいぐらいで、オレは部屋を出ると二階の階段上から下の階で働く使用人達を見つめ、今夜の相手を物色する。
久々に胸の大きさで選ぶのもいいし。
たまには勝ち気な、気の強そうな女もいい。
黒髪ではなく、金髪か茶髪の……、……。
ーーだが。
見れば見る程、選ぼうとすればする程……。あんなに"女を抱きたい"と疼いていた胸がシンッとなっていった。
どの女も、同じに見える。そして直感で感じる。
この女達を抱いても、今の自分が決して満たされる事はないと……。
オレはその場を後にして、自分が今1番顔が見たいと思っている女の部屋に足を進めた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【完結】で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?
Debby
恋愛
キャナリィ・ウィスタリア侯爵令嬢とクラレット・メイズ伯爵令嬢は困惑していた。
最近何故か良く目にする平民の生徒──エボニーがいる。
とても可愛らしい女子生徒であるが視界の隅をウロウロしていたりジッと見られたりするため嫌でも目に入る。立場的に視線を集めることも多いため、わざわざ声をかけることでも無いと放置していた。
クラレットから自分に任せて欲しいと言われたことも理由のひとつだ。
しかし一度だけ声をかけたことを皮切りに身に覚えの無い噂が学園内を駆け巡る。
次期フロスティ公爵夫人として日頃から所作にも気を付けているキャナリィはそのような噂を信じられてしまうなんてと反省するが、それはキャナリィが婚約者であるフロスティ公爵令息のジェードと仲の良いエボニーに嫉妬しての所業だと言われ──
「私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
そう問うたキャナリィは
「それはこちらの台詞だ。どうしてエボニーを執拗に苛めるのだ」
逆にジェードに問い返されたのだった。
★★★
覗いて頂きありがとうございます
全11話、10時、19時更新で完結まで投稿済みです
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
ランプの令嬢は妹の婚約者に溺愛され過ぎている
ユウ
恋愛
銀髪に紫の瞳を持つ伯爵令嬢のフローレンスには社交界の華と呼ばれる絶世の美女の妹がいた。
ジェネットは幼少期の頃に病弱だったので両親から溺愛され甘やかされ育つ。
婚約者ですらジェネットを愛し、婚約破棄を突きつけられてしまう。
そして何もかも奪われ社交界でも醜聞を流され両親に罵倒され没落令嬢として捨てられたフローレンスはジェネットの身代わりとして東南を統べる公爵家の子息、アリシェの婚約者となる。
褐色の肌と黒髪を持つ風貌で口数の少ないアリシェは令嬢からも嫌われていたが、伯爵家の侮辱にも顔色を変えず婚約者の交換を受け入れるのだが…。
大富豪侯爵家に迎えられ、これまでの生活が一変する。
対する伯爵家でフローレンスがいなくなった所為で領地経営が上手くいかず借金まみれとなり、再び婚約者の交換を要求するが…
「お断りいたします」
裏切った婚約者も自分を捨てた家族も拒絶するのだった。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
【完結】王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく
たまこ
恋愛
10年の間、王子妃教育を受けてきた公爵令嬢シャーロットは、政治的な背景から王子妃候補をクビになってしまう。
多額の慰謝料を貰ったものの、婚約者を見つけることは絶望的な状況であり、シャーロットは結婚は諦めて公爵家の仕事に打ち込む。
もう会えないであろう初恋の相手のことだけを想って、生涯を終えるのだと覚悟していたのだが…。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる