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(3)アランside

3-3

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***

しかし、その夜ーーー。

「……なに?体調不良?」

「はい。スズカは今朝から体調が優れぬ為休んでおります」

オレの問い掛けに答えたのは使用人長のエルナ。
帰宅し、いつもならば玄関先に出迎えに集まる使用人達。だが、その中にあの女の姿がなかった。
何か特別な職務でもしているのかと思い、エルナに問い掛けたところ原因を知る事が出来た。

「……そうか、分かった」

そう返事をすると、オレの上着を片付けたエルナは一礼して自分の仕事へと戻って行く。

体調不良。
それは、まあ……仕方のない事だな。

仕方ないーー。
そう頭ではわかってはいる。けど、色々と可愛がってやろうとしたのに、その計画が狂った事が気に入らない。
こんな事なら出張中、真面目に仕事ばかりしないで少しくらいハメを外せば良かった、と後悔した。

別の使用人でも呼ぶか。
そもそも、"オレが求めた時はどんな時だろうがどんな時間だろうが相手をしろ"、それがあの女と結んだ約束だ。
向こうが来られない、相手を務められない、ならば、別に契約違反じゃないよな?


ーーうん。そうだ、そうしよう!

そもそもオレが使用人との約束で、この二ヶ月近く一人の女しか抱いていない事自体が奇跡に近かった。
よく今日まで約束を守った、と自分を褒めてやりたいぐらいで、オレは部屋を出ると二階の階段上から下の階で働く使用人達を見つめ、今夜の相手を物色ぶっしょくする。

久々に胸の大きさで選ぶのもいいし。
たまには勝ち気な、気の強そうな女もいい。
黒髪ではなく、金髪か茶髪の……、……。

ーーだが。
見れば見る程、選ぼうとすればする程……。あんなに"女を抱きたい"と疼いていた胸がシンッとなっていった。
どの女も、同じに見える。そして直感で感じる。
この女達を抱いても、今の自分が決して満たされる事はないと……。


オレはその場を後にして、自分が今1番顔が見たいと思っている女の部屋に足を進めた。
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