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最終章(2)ヴァロン&アカリside

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【ヴァロンside】

シュウからの言葉に、思わず素に戻りかけた。
思いがけなかった提案に、どういう意味か?と混乱する俺にシュウが言葉を続ける。

「私と、もう一度友達になって下さい」

「……」

「私は、嫌なんです」

「……」

「君と他人行儀なの。以前まえのようになりたいんです。
……駄目、ですか?」

「っ……」

それ、は以前、俺がシュウに言った言葉とよく似ていた。

『俺は嫌なんだよ。
お前とこう、なんかモヤモヤしてんの。
いつもみたいに、いたいんだよ……ずっと。
……。それじゃ、駄目なのか?』

喧嘩した後、俺がシュウに言った仲直りの言葉。

シュウ。お前、気付いてるんだな?
今の俺の事を知ってて、理解してて、黙ってて……。
「ごめん」の言葉を言えない俺に、"もういいよ"って、言ってくれてんのか?
俺の事、許してくれんのか?

心の中で問い掛ければ、ゆっくりと近付いてきたシュウが、微笑って俺を抱き締めた。


「無事に帰って来てくれて良かった」

「っ……」

「おかえりなさい。……お疲れ様でした、ヴァロン」

「っ……、っ……シュウ」

昔仕事から帰って来た俺にしてくれたように、シュウが言った。
懐かしい温もりと言葉に俺の口から名前が溢れると、背中を心地良いテンポでポンッポンッと叩いてくれる。

すると、足りなかった"何か"が心にカチッとハマッたように暖かくなったーー。

その直後。フワッと吹く春風に乗って桜の花びらが俺とシュウの周りにヒラヒラと降り注ぐ。

「!っ……お、おい!待てよッ、少し早いッーー……」

「えっ??」

俺が慌てて木の方を向いて声を上げると、シュウは頭に?マークを浮かべて首を傾げる。

実はさっき、能力ちから能力を使って桜の木にお願いした。
"今日は特別な日だから、大切な人が来たら花を咲かせてくれないか?"って……。
まだ咲くには少し早い時期だからお願いしたんだけど、どうやら桜の木達は"大切な人"を勘違いしてしまったようだ。

……、……いや。勘違いじゃ、ねぇか。

桜の花びらを浴びるシュウを見て、俺はそう思った。
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