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第26章(4)ヴァロン&アカリside
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【ヴァロンside】
「!……え、っ?」
誰かに呼ばれた気がして、思わず振り返った。
子供の頃に聴いた事があるような、懐かしいような大好きな声で呼ばれた気がしたから……。
ここはアランから受け取った招待状に記載されていた結婚式場の敷地内。
無事に到着出来たまではいいが、そこには広い庭園が広がっていて、何処に何があるのか正直分からず走り回っていた最中だった。
アカリが居ると思われる花嫁の控え室に真っ直ぐ向かいたいのに……。まるで運命の神がそれを阻止するかのようにここに着いた途端に始まった激しい頭痛。
考えてようとする度に痛みが増して、俺はただ闇雲に彷徨い続けていたんだ。
そんな最中に聞こえた声。
その先に視線を移して、見渡していると……。
ーーチリンッ!
「!……、っ……猫?」
鈴の音と共に視線の先に現れたのは1匹の猫だった。白と黒と茶の、三毛柄の猫。
"それ"は決して珍しくもない、日常にあり得る光景の筈だった。
けど、その光景を見た瞬間。俺に纏わりついていた"何か"がスッと無くなり……。頭痛が消えると同時に、ある事を思い出した。
それは脳の手術を受ける前の入院中。
父の書いた小説の続きを受け取って、白紙のページを見た時に思った事。
"続きは自分で描け"ってメッセージに気付いた俺は、自分だったらどんなラストシーンを創るか考えた。
……それは、……。
『夢か幻か。主人公が昔助けた、もうすでに亡くなっている筈の三毛猫が現れて……』
「ーーー……好きな女性の元に、連れてってくれるのか?」
呟くように尋ねると、三毛猫はタッとその場を駆け出して……。まさか、と保けて動かない俺に気付くと、足を止めて振り返り「早く」と呼び掛けるように短く「みゃう」と鳴いた。
自分が思い描いたラストシーンが実現するーー。
そんな馬鹿げた事がある筈はない。
……でも。これは間違いなく現実で、俺は導かれるように三毛猫の後を追って走り出した。
「!……え、っ?」
誰かに呼ばれた気がして、思わず振り返った。
子供の頃に聴いた事があるような、懐かしいような大好きな声で呼ばれた気がしたから……。
ここはアランから受け取った招待状に記載されていた結婚式場の敷地内。
無事に到着出来たまではいいが、そこには広い庭園が広がっていて、何処に何があるのか正直分からず走り回っていた最中だった。
アカリが居ると思われる花嫁の控え室に真っ直ぐ向かいたいのに……。まるで運命の神がそれを阻止するかのようにここに着いた途端に始まった激しい頭痛。
考えてようとする度に痛みが増して、俺はただ闇雲に彷徨い続けていたんだ。
そんな最中に聞こえた声。
その先に視線を移して、見渡していると……。
ーーチリンッ!
「!……、っ……猫?」
鈴の音と共に視線の先に現れたのは1匹の猫だった。白と黒と茶の、三毛柄の猫。
"それ"は決して珍しくもない、日常にあり得る光景の筈だった。
けど、その光景を見た瞬間。俺に纏わりついていた"何か"がスッと無くなり……。頭痛が消えると同時に、ある事を思い出した。
それは脳の手術を受ける前の入院中。
父の書いた小説の続きを受け取って、白紙のページを見た時に思った事。
"続きは自分で描け"ってメッセージに気付いた俺は、自分だったらどんなラストシーンを創るか考えた。
……それは、……。
『夢か幻か。主人公が昔助けた、もうすでに亡くなっている筈の三毛猫が現れて……』
「ーーー……好きな女性の元に、連れてってくれるのか?」
呟くように尋ねると、三毛猫はタッとその場を駆け出して……。まさか、と保けて動かない俺に気付くと、足を止めて振り返り「早く」と呼び掛けるように短く「みゃう」と鳴いた。
自分が思い描いたラストシーンが実現するーー。
そんな馬鹿げた事がある筈はない。
……でも。これは間違いなく現実で、俺は導かれるように三毛猫の後を追って走り出した。
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