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第26章(3)アンナside

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***

3月3日。
結婚式場、親族控室ーーー。


「全てを、終わらせる……?」

私の言葉に、"まさか"と察したような……。けれど、信じられない、信じたくないという想いの込もった問い掛けをアランが呟いた。
本当に、実の息子のように優しい子。

「っ、……ダメだッ」

「……」

「許さんっ……許さんぞ!
このまま兄上に会わずに去る事なんぞ、許さんッ……!」

リオに良く似た声で叱りながら、アランが私の腕を掴んで訴えて掛けてくる。


……嫌ね。
そんな声で叱られたら、気持ちが揺らいでしまいそうになるじゃない。
もう一度聴きたいと思っていた男性ひとと良く似た声で、そんな事言わないで?

嬉しさと切なさが入り混ざって、涙が出そうになった。
何も答えず顔を合わそうとしない私に、アランが更に声を上げる。


「何故、っ……貴様達親はそう勝手なんだッ!ある日自分の都合で突然消えてッ……子供達オレ達を悲しませるんだッ!!」

感情のたかぶりと腕を掴まれた事によって、触れ合った部分から分かる。
アランは私の"本当の素性"を知らない。自分の母親と父親を取り合った、ただの恋敵だと思っている。


……そうね。
知らずに済むのなら、きっとそれが1番いいわ。

この時ばかりは、シャルマに感謝した。
私達の血の事で、どうかもうヴァロンやアラン、そしてその血を受け継いでいく子供達が苦しまないようにと願わずにはいられなかった。


「……ごめんなさい」

「!っ……頬の、傷がッ……」

私が顔を上げた瞬間。先程銃弾で傷付いた筈の頬の傷が消えている事に気付いたアランが驚き、一瞬の隙が出来る。

人並み外れた自己治癒能力。
これも私の中にいつの間にか目覚めていた能力ちから。擦り傷ならば数分もあれば再生し、跡も残らない。
……私は恐ろしいの。この先、私は一体どれ程変わってしまい、"人ではいられなくなる"のか。
いつか誰とも関わる事も出来なくなり、その孤独に耐え切れず壊れてしまうのではないか。
そして、いつかこの能力ちからに目を付け欲する者が現れてしまわないか、と……。

だから、全ての元凶私自身を……この世から消す。


どうかこの天使の血が、この未来さき"悪魔の血"に変わる事がありませんようにーー……。

想いを込めて、怯んだアランの後頭部に手を回し引き寄せると……私はそっと唇と唇を重ねた。
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