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第26章(2)アンナside
2-2
しおりを挟むヴァロンの前世の恋の相手は、黒髪に黒い瞳の可愛い女の子。
……ダメよ?容姿が似てるからと言って、私とその子を勘違いしちゃ。
ヴァロン。
貴方は生きて、今度こそその子と幸せになりなさい。
「……生きなさい、ヴァロン」
希血でもまだ幼く、能力が目覚めていない今ならば……。更に心を傷付けて精神を弱らせれば、私の能力は少なからずとこの子に効く筈。
そう思って私は、ヴァロンに私やリオと過ごした刻を忘れる暗示をかけた。
……
…………。
それから、私もすぐにリオとヴァロンとの想い出が詰まったあの家を後にした。
一箇所に長く留まれば年老いていかない私を不審に思う人がいるかも知れないと、住処は持たず、色んな場所を転々としたわ。
良かった事二つ目。
この能力を使って、私は占い師を始めた。
こんな私だけど、未来を見透せるこの能力で、迷っている人、悩んでいる人に助言をして、少しでも苦しくない道をすすめてあげる事が出来た。
もうどんなに生活に困っても、身体を売ったり、男性に媚びたりしない。どんなに離れていても、もう会う事が出来なくても、私が愛する男性はリオたった一人。
真実の愛を知って、私の心はいつも暖かかった。
『月姫の祈り』
絵本も読んだし、舞台も観に行ったわ。
その、私しか知らないと思っていたヴァロンの前世を描いた作品を見て、すぐに作者はリオだと分かった。
そして確信した。
リオも、ヴァロンが運命の女の子に再び巡り逢えるように願っているのだ、と……。
私達は、離れていても息子への想いで繋がっていた。
不思議と、傍にいたあの頃よりも強い絆で結ばれているような気持ちになった。
私とリオの想いに応えてくれるかのように、ヴァロンは立派に成長していった。
幼い頃に抱いた将来の夢を実現させて、夢の配達人という、人の夢を叶えるとても素敵な職業に就いた。
色んな国や町で、ヴァロンの評判を聞いて嬉しかったわ。新聞や雑誌も、ヴァロンの事が載っているものは必ず読んだ。
時には辛く悲しい日々もあっただろうに……。あの子は必死に乗り越えて、"伝説の夢の配達人"と呼ばれるようになった。
絶対にリオもその名声を聞いて喜んでいたに違いない。
『すごい!ヴァロンは天才だな!』って、一緒に暮らしていたあの時のように……。
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