上 下
115 / 185
第26章(2)アンナside

2-2

しおりを挟む

ヴァロンの前世の恋の相手は、黒髪に黒い瞳の可愛い女の子。

……ダメよ?容姿が似てるからと言って、私とその子を勘違いしちゃ。
ヴァロン。
貴方は生きて、今度こそその子と幸せになりなさい。

「……生きなさい、ヴァロン」

希血でもまだ幼く、能力ちからが目覚めていない今ならば……。更に心を傷付けて精神を弱らせれば、私の能力ちからは少なからずとこの子に効く筈。
そう思って私は、ヴァロンに私やリオと過ごした刻を忘れる暗示をかけた。

……
…………。

それから、私もすぐにリオとヴァロンとの想い出が詰まったあの家を後にした。
一箇所に長く留まれば年老いていかない私を不審に思う人がいるかも知れないと、住処は持たず、色んな場所を転々としたわ。

良かった事二つ目。
この能力ちからを使って、私は占い師を始めた。
こんな私だけど、未来を見透せるこの能力ちかやで、迷っている人、悩んでいる人に助言をして、少しでも苦しくない道をすすめてあげる事が出来た。
もうどんなに生活に困っても、身体を売ったり、男性に媚びたりしない。どんなに離れていても、もう会う事が出来なくても、私が愛する男性ひとはリオたった一人。
真実の愛を知って、私の心はいつも暖かかった。


『月姫の祈り』
絵本も読んだし、舞台も観に行ったわ。
その、私しか知らないと思っていたヴァロンの前世を描いた作品を見て、すぐに作者はリオだと分かった。
そして確信した。

リオも、ヴァロンが運命の女の子に再び巡り逢えるように願っているのだ、と……。

私達は、離れていても息子ヴァロンへの想いで繋がっていた。
不思議と、傍にいたあの頃よりも強い絆で結ばれているような気持ちになった。


私とリオの想いに応えてくれるかのように、ヴァロンは立派に成長していった。
幼い頃に抱いた将来の夢を実現させて、夢の配達人という、人の夢を叶えるとても素敵な職業に就いた。
色んな国や町で、ヴァロンの評判を聞いて嬉しかったわ。新聞や雑誌も、ヴァロンの事が載っているものは必ず読んだ。
時には辛く悲しい日々もあっただろうに……。あの子は必死に乗り越えて、"伝説の夢の配達人"と呼ばれるようになった。

絶対にリオもその名声を聞いて喜んでいたに違いない。
『すごい!ヴァロンは天才だな!』って、一緒に暮らしていたあの時のように……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

都合のいい女は卒業です。

火野村志紀
恋愛
伯爵令嬢サラサは、王太子ライオットと婚約していた。 しかしライオットが神官の娘であるオフィーリアと恋に落ちたことで、事態は急転する。 治癒魔法の使い手で聖女と呼ばれるオフィーリアと、魔力を一切持たない『非保持者』のサラサ。 どちらが王家に必要とされているかは明白だった。 「すまない。オフィーリアに正妃の座を譲ってくれないだろうか」 だから、そう言われてもサラサは大人しく引き下がることにした。 しかし「君は側妃にでもなればいい」と言われた瞬間、何かがプツンと切れる音がした。 この男には今まで散々苦労をかけられてきたし、屈辱も味わってきた。 それでも必死に尽くしてきたのに、どうしてこんな仕打ちを受けなければならないのか。 だからサラサは満面の笑みを浮かべながら、はっきりと告げた。 「ご遠慮しますわ、ライオット殿下」

夫の様子がおかしいです

ララ
恋愛
夫の様子がおかしいです。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜

桐生桜月姫
恋愛
 シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。  だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎  本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎ 〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜 夕方6時に毎日予約更新です。 1話あたり超短いです。 毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。

王国の彼是

紗華
恋愛
作者の御心のままに、作者の都合のいい世界で、王国の緩々とした日常を綴っています。 ーーー 王位継承権を持つフランは、王立学園の入学を機に筆下ろしをしたが、見事失敗。 その後は女嫌いを喧伝し、付いて回る男色の噂も気にする事なく騎士の道へと進むが、従兄弟の王太子のやらかしで、その地位を引き継ぐ事になる。 王太子となったフランが、専属護衛の騎士ネイトと、侍従カインと共に進み始めた新しい道は、自由過ぎる国のトップ達、義務である筈の婚約者に芽生えた己の感情への戸惑い、儀式で聞こえた謎の声、側近達の恋愛模様まで… アズールオレンジは皆んなの好物…様々な彼是に翻弄される日々だった。

処理中です...