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第24章(4)マオ&ヴァロンside
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しおりを挟むそんな俺に、ミネアが言う。
「……。
目覚めた、みたいね。さぁ、行って」
笑顔で、俺を送り出そうとしてくれていた。
「安心して?……婚姻届は、提出していないから」
「!っ……」
「わたくし達は、他人よ?
戸籍上も、そして今から……全くの他人」
そう言って、一緒に住む際に提出したと思われていた婚姻届を自分の上着ポケットから取り出すと、俺の目の前で破り捨てた。
俺とミネアの間で舞い落ちる紙吹雪。
「……さようなら。もう、迷ってはダメよ?」
その瞬間のミネアの笑顔が、記憶を失って初めて彼女に会った時の光景を思い浮かばせる。
そして、あの時の気持ちも……。
「ーーありがとう」
「!っ……え?」
"ありがとう"と、一礼した俺にミネアが驚く。
彼女が一体どんな言葉や態度で俺との最後を想像していたのかは分からないが、俺にはそれ以外の言葉が見つからなかった。
一緒に過ごしていた長い時間、今日まで色々な事があった。
悲しかったり、辛かったりした事がなかった訳じゃない。……けど。
「記憶を失った俺に、微笑みかけてくれてありがとう」
目覚めて何も分からなかった。
そんな時、彼女の笑顔は俺にとって光だった。
「何も出来ない俺に、好き、って言ってくれてありがとう」
辛い孤独な入院生活。
あの時の君の言葉が、どれだけ俺に力をくれたか分からない。
だから、……。
「あの時、っ……ミネア、さんが居てくれたからッ……。僕は、生きようって、思えたんですっ」
俺の中の、僕がそう訴えていた。
僕があの時、生きる事を諦めていたら、今の俺はいなかったのだと……。
今をくれた君に、伝えたい想い、言葉はたった一つ。
"ありがとう"という、感謝の言葉だった。
「っ……どこまで、ッ……お人好しなの?
よその女の旦那に優しくされても、嬉しくないわよ!」
俺の言葉を聞いて、ミネアは涙を流しながらも微笑ってくれた。
もう、大丈夫ーー。
心からそう思えて、俺は左手首にブレスレットを付け、写真を上着の内ポケットにしまうと、本を手にその場を駆け出した。
……
…………。
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