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第24章(1)アカリside
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しおりを挟む3月3日、結婚式場の花嫁控え室ーー。
準備の為に早めに式場に訪れた私はマネキンに飾られた美しいウェディングドレスの前に立ち、昔の事を思い出していた。
「……まさか、もう一度着る事になるなんて想像してなかったなぁ」
五年前の今日、私はヴァロンとの結婚式でウェディングドレスを身に纏い、幼い頃から憧れていたお嫁さんになった。
その日の事は今でも昨日の事のように思い出せる。
夢の配達人白金バッジのヴァロンとの結婚はおおやけに出来なくて、夢の配達人の隠れ家を借りて行った。
きっと世間一般的な結婚式にしたら少人数で小規模なのものだったけど、それでも充分に幸せだった。暖かいみんなに囲まれて、何よりも心から愛する人が1番傍に居てくれたから……。
『ギル!みんなの前で誓う!
俺は絶対にアカリを離さねぇ!
俺の一生をかけて守り続けると誓う!
……だから、安心して見てろよなーッ!!』
目を閉じれば心の中で、あの日のヴァロンの誓いの叫びが聴こえる。
光景も、言葉も、声も、全て鮮明に思い出せるのに……。それはもう戻る事の出来ない過去。
「……アカリ様。ご準備を始めても大丈夫ですか?」
ウェディングドレスの前から動く気配のない私に、気遣ったスズカが少し離れた背後から語り掛けてくれる。
スズカ。
アラン様のお邸に来てから、彼女には本当に色々と助けてもらった。身の回りの世話はもちろん、心のケアも……。
彼女がヴァロンの事を話してくれて、そして聞いてくれた事が、私にとってどれだけ救いになったか分からない。
スズカがいなければ、私はきっと今でも泣いていた。
溜め込まず、彼女に話せたから、その時間が私に冷静さを取り戻させてくれて、自らの運命を受け入れる勇気をくれたの。
私は思った。
私がアラン様に嫁ぐ、という運命はきっとどう足掻いても変えられないんじゃないか?って……。
ヴァロンに出逢った事によって、私の18歳の誕生日にその運命は一度変わったように見えたけど、きっとこれは私に決められた運命。
5年という時を経て、私はここに居るのだ。
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