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第23章(1)マオside
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「マオ様、おかえりなさいませ」
「只今帰りました。……ミネアさんは?」
「いつものように寝室で横になっていらっしゃいます」
「……そうですか。ありがとうございました」
帰宅し、毎日家事やミネアさんの様子を診ていてくれる使用人と言葉を交わすと、僕は手袋を外しながら寝室に向かい静かに扉を開けた。
早く夫婦らしく、家族らしくなれるように僕とミネアさんは二人の家を買って今年から一緒に暮らし始めた。
それに、体調もイマイチで、精神的にも情緒不安定だった彼女が少しでもストレスを感じないように……。
薄暗い寝室に足を踏み入れて歩み寄ると、ミネアさんはベッドで布団に包まりながら静かに寝息を立てていた。その姿に、ホッとする。
少し前までつわりが酷くて横になっていても辛そうに見えたが、今日は大丈夫そうだ。
その寝顔を見たら何だかすごく安心してしまった。
気が緩むと、どっと疲れと眠気が襲ってきて、僕は床に座り込むとベッドの脇で壁にもたれながらつい眠ってしまった。
……
…………。
夢の中で、子供と遊んだ。
黒髪で黒い瞳のヨチヨチ歩きの女の子が、掴まり立ちをしてゆっくりこっちに向かって歩いてくるんだ。
僕を見付けると嬉しそうに微笑って、ワザと掴んでいるものを放してよろけて……。僕が「危ない」って、慌てて支えると、また嬉しそうに微笑って……。
可愛くて、可愛くて……仕方がなかった。
そしてそんな僕達を見て、隣に居る女性が「ぱぱの事が大好きなのね」って、微笑ってるんだ。
幸せな幸せな、家族の夢……。
……
…………。
「……オ様?……マオ様、起きて下さい」
「!……っ、……ミネア、さん?」
身体を揺すられゆっくりと目を開けると、ベッドから上半身を起こしたミネアさんが僕の顔を覗き込んでいた。
「あ、っ……すみません。つい寝てしまって……、っ?」
ボヤけている視界。
寝起きのせいだと思って目を擦ると、その手が濡れている事に気付いた。
僕は、夢を見て泣いていたのだ。
「マオ様、おかえりなさいませ」
「只今帰りました。……ミネアさんは?」
「いつものように寝室で横になっていらっしゃいます」
「……そうですか。ありがとうございました」
帰宅し、毎日家事やミネアさんの様子を診ていてくれる使用人と言葉を交わすと、僕は手袋を外しながら寝室に向かい静かに扉を開けた。
早く夫婦らしく、家族らしくなれるように僕とミネアさんは二人の家を買って今年から一緒に暮らし始めた。
それに、体調もイマイチで、精神的にも情緒不安定だった彼女が少しでもストレスを感じないように……。
薄暗い寝室に足を踏み入れて歩み寄ると、ミネアさんはベッドで布団に包まりながら静かに寝息を立てていた。その姿に、ホッとする。
少し前までつわりが酷くて横になっていても辛そうに見えたが、今日は大丈夫そうだ。
その寝顔を見たら何だかすごく安心してしまった。
気が緩むと、どっと疲れと眠気が襲ってきて、僕は床に座り込むとベッドの脇で壁にもたれながらつい眠ってしまった。
……
…………。
夢の中で、子供と遊んだ。
黒髪で黒い瞳のヨチヨチ歩きの女の子が、掴まり立ちをしてゆっくりこっちに向かって歩いてくるんだ。
僕を見付けると嬉しそうに微笑って、ワザと掴んでいるものを放してよろけて……。僕が「危ない」って、慌てて支えると、また嬉しそうに微笑って……。
可愛くて、可愛くて……仕方がなかった。
そしてそんな僕達を見て、隣に居る女性が「ぱぱの事が大好きなのね」って、微笑ってるんだ。
幸せな幸せな、家族の夢……。
……
…………。
「……オ様?……マオ様、起きて下さい」
「!……っ、……ミネア、さん?」
身体を揺すられゆっくりと目を開けると、ベッドから上半身を起こしたミネアさんが僕の顔を覗き込んでいた。
「あ、っ……すみません。つい寝てしまって……、っ?」
ボヤけている視界。
寝起きのせいだと思って目を擦ると、その手が濡れている事に気付いた。
僕は、夢を見て泣いていたのだ。
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