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第23章(1)マオside
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しおりを挟む「マオ君、今日も遅くまでお疲れ様だったね」
「いえ、上手くいって良かったです」
2月中旬の深夜。
取り引き先との契約を済ませた僕は、ハンク様の迎えの車で一緒に自宅まで送ってもらう事になった。
後部座席に義父であるハンク様と隣り同士。
ハンク様と一緒に仕事をして共に過ごす時間が多くなったと言っても、やっぱりその存在は未だに緊張するもので……。仕事が終わったのにまだ終わっていないような、そんな感じがする車内だった。
それに……。
「ミネアの、調子はどうだ?」
その質問に僕は"またきたか"と思いながらも、顔には出さず笑顔で対応する。
「日によって、って感じです。
でも、お医者様は順調だって言って下さっていますし。お腹も目立ってきて、時々胎動も……」
「ーー医者の話では、子供は女だそうだな」
「っ……。はい」
溜め息混じりに話を途中で遮られて、僕は答えながら見えないように拳をギュッと握り締めた。
聞きたくない話が、また始まる。
僕がそう思っている事を知ってか知らずか、ハンク様はいつものように語り始めた。
「いくら優秀でも、女はやはりダメだ。
後継ぎと仕事のパートナーはやはり男の方が良い。マオ君、早く次の子供を作りなさい。優秀な男の子をな」
「っ……」
何故、そんな事を言えるんですかーー?
喉まで出かかった言葉を、僕は必死で飲み込んだ。
ハンク様は、子供が出来た事で体調を崩し仕事が出来なくなったミネアさんに対して態度が変わった。
以前はあんなに大事にしているように見えた。ミネアさんを溺愛しているように、見えたのに……。
僕はハンク様と共にする内に、その本心を知った。
そして改めて気付いたんだ。
ミネアさんがどれ程の孤独を抱えて、必死に必死に、自分が存在出来る場所を保ってきたのか……。
僕の前で見せてくれていたあの少女のような笑顔が、どれ程貴重で、大切にしなければいけなかったものなのかを……。
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