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第22章(1)スズカside
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「奥方様がご到着されました!」
到着予定のほぼ14時ピッタリに、奥様はこのお邸にやって来た。
使用人長の言葉に、通り道の左右に立ってお出迎えをする私達は「いらっしゃいませ!」と声を揃えて深く頭を下げる。
一体どんな方だろう?
きっとみんなそう思っていたが、お声がかかるまでは顔を上げてはならない。
ドキドキしながら待っていると、私の目の前を奥様が通り過ぎる。
すると、その瞬間にフワッと香る甘い匂い。
香水?
いや、違う。これは、優しいミルクのような……。
そう、甘いお菓子の匂いだ。
その匂いを嗅いだら、なんだか少し緊張が和らいだ気がした。
そして、これが奥様の香りなのだと思ったら、何故かとてもお顔を見てみたくなった。
「スズカ、こちらへおいでなさい」
「はいっ」
使用人長に呼ばれて、私は顔を少し伏せたまま奥様の元へ足を進める。
「奥様、この者が本日より専属でお世話を致します。何かございましたら遠慮なくお申し付け下さい。
……スズカ、ご挨拶を」
「はい。
ようこそいらっしゃいました、奥様。スズカと申します。至らぬ面があると思いますが、全力でお仕え致します。どうぞ、よろしくお願い致します」
「あ、そんな……固くならないで下さい。
はじめまして、アカリと申します。どうぞ、顔を上げて下さい」
私が挨拶をすると、奥様はその香りと同じくらい優しい声で返事を返してくれた。
顔を見なくても、雰囲気で分かった。
決して派手ではなく、道端に咲く一輪の花のような……。けど、地味でもない。
その美しさに、見る人は笑顔になり、きっと優しい瞳で見つめてしまうーー……。
その瞬間、私の頭の中にはマオ様が視線の先に見ている人物が想像出来た。
ゆっくりと顔を上げた先に映る、奥様。
ーーえっ?
胸がトクンッと暖かく脈を打つ。
目が合うと、恐れながらも奥方様もきっと私と同じ気持ちであろう目を見開いていた。
黒髪に、黒い瞳。
私と奥様は、容姿がとてもよく似ていたのだ。
「奥方様がご到着されました!」
到着予定のほぼ14時ピッタリに、奥様はこのお邸にやって来た。
使用人長の言葉に、通り道の左右に立ってお出迎えをする私達は「いらっしゃいませ!」と声を揃えて深く頭を下げる。
一体どんな方だろう?
きっとみんなそう思っていたが、お声がかかるまでは顔を上げてはならない。
ドキドキしながら待っていると、私の目の前を奥様が通り過ぎる。
すると、その瞬間にフワッと香る甘い匂い。
香水?
いや、違う。これは、優しいミルクのような……。
そう、甘いお菓子の匂いだ。
その匂いを嗅いだら、なんだか少し緊張が和らいだ気がした。
そして、これが奥様の香りなのだと思ったら、何故かとてもお顔を見てみたくなった。
「スズカ、こちらへおいでなさい」
「はいっ」
使用人長に呼ばれて、私は顔を少し伏せたまま奥様の元へ足を進める。
「奥様、この者が本日より専属でお世話を致します。何かございましたら遠慮なくお申し付け下さい。
……スズカ、ご挨拶を」
「はい。
ようこそいらっしゃいました、奥様。スズカと申します。至らぬ面があると思いますが、全力でお仕え致します。どうぞ、よろしくお願い致します」
「あ、そんな……固くならないで下さい。
はじめまして、アカリと申します。どうぞ、顔を上げて下さい」
私が挨拶をすると、奥様はその香りと同じくらい優しい声で返事を返してくれた。
顔を見なくても、雰囲気で分かった。
決して派手ではなく、道端に咲く一輪の花のような……。けど、地味でもない。
その美しさに、見る人は笑顔になり、きっと優しい瞳で見つめてしまうーー……。
その瞬間、私の頭の中にはマオ様が視線の先に見ている人物が想像出来た。
ゆっくりと顔を上げた先に映る、奥様。
ーーえっ?
胸がトクンッと暖かく脈を打つ。
目が合うと、恐れながらも奥方様もきっと私と同じ気持ちであろう目を見開いていた。
黒髪に、黒い瞳。
私と奥様は、容姿がとてもよく似ていたのだ。
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