上 下
23 / 185
第20章(4)マオside

4-2

しおりを挟む
***

ミネアさんが倒れたーー。

ハンク様からの電話でそう聞かされた僕は、すぐに教えられた病院に向かってた。
別れ話をしようと思っていた矢先だったけど、報せを受けた時は正直そんな事は忘れて必死に、とにかく少しでも早くミネアさんの元に行かなきゃ、って思った。

「っ……ハンク様!
そのッ、ミネアさんはっ……?!」

駆け付けた病室前の廊下。
白衣を着た医師らしい人物と話すハンク様を見付けた僕は、息を切らしながら尋ねた。
すると、予想をしていた反応とは全く違って……。

「おおっ、マオ君!喜べ!!」

喜べ?
笑顔のハンク様が声を弾ませて言う。

「ミネアが、おめでただそうだ!」

「……え?」

「ミネアに子供が出来たそうだ!
良かったなぁ~!君も嬉しいだろう!」

ーーえ?
今、おめでたって……。ミネアさんに子供が出来た、って……言った?

信じられない言葉に、走ってきて上がっていた筈の呼吸もあっという間に静かになって。
身体の熱も、一気に冷めていくようだった……。


ミネアさんの妊娠は、僕にとって全く身に覚えのない事だった。


避妊がどうとか、周期が合わないとか、そういう問題ではなくて……。
だって僕は、彼女を抱いた事なんて一度もないのだから……。

ならば、何故?
医師がそう診断したのだから、間違いなんて事はおそらくないだろう。
でも、それなら……ミネアさんのお腹の子供の父親は一体誰?


……考えても考えても、僕には全く分からなくて。
ミネアさんに聞こうにも、なかなか話せるタイミングがなくて……数日が経った。

「騒がしくしてすまなかったね。
ミネアと二人きりで喜びを分かち合いたいだろう?医師に許可をもらってあるから、今夜は泊まってやっておくれ」

親戚の人や仕事で親しい人がミネアさんの懐妊の噂を聞きつけてお祝いに訪れる日が続く中。気を遣ってくれたハンク様の配慮で、ようやく二人きりになる機会がやってきた。


でも、何から話せばいいのか正直分からないままハンク様達が帰られて……。夜、僕とミネアさんは個室の病室に二人きりになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽りの結婚生活 ~私と彼の6年間の軌跡

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
偽りの結婚をした男性は決して好きになってはいけない私の初恋の人でした― 大手企業に中途採用された「私」。だけどその実態は仮の結婚相手になる為の口実・・。 これは、初恋の相手を好きになってはいけない「私」と「彼」・・そして2人を取り巻く複雑な人間関係が繰り広げられる6年間の結婚生活の軌跡の物語—。 <全3部作:3部作目で完結です:終章に入りました:本編完結、番外編完結しました> ※カクヨム・小説家になろうにも投稿しています

ごめんなさい。俺の運命の恋人が超絶お怒りです。

しーぼっくす。
恋愛
救世主として異世界召喚された少女、里上愛那。 神託により【運命の恋人】の相手だという王太子に暴言を吐かれ、キレた愛那は透明人間となって逃亡する。 しかし愛那の運命の相手は別の人物だった。 カクヨムさんでも連載しています。

【完結】ヒロインに婚約者を攻略して欲しかったのですが断られてしまいました

Debby
恋愛
侯爵令嬢のショコラは前世で読むか見るかした物語の世界にヒロインに攻略される第二王子の婚約者として転生した。 物語の内容はほとんど覚えていないけど、ヒロインに第二王子を攻略して貰い円満に婚約破棄、慰謝料を貰って悠々自適生活を送ろうと弟を巻き込み人生計画を立てる。 そこへ王太子である第一王子の婚約者シャルロットも第一王子を攻略して欲しいと現れるが二人ともヒロインに食い気味に断られてしまう。 彼女によるとショコラとシャルロットで「ヒロイン」と声をかけてきたのは三人目なのだという。 ヒロインには断られたが諦めていないショコラの前にどうやら前世の記憶があるらしいピンク色の髪をした男爵令嬢が現れた──これはチャンスなのでは?! 気持ちを口に出せない第二王子と年下なのに大人な記憶を持つショコラの婚約の行方は?! ★ 更新は10時と19時で完結まで予約投稿済みです

王妃の鑑

ごろごろみかん。
恋愛
王妃ネアモネは婚姻した夜に夫からお前のことは愛していないと告げられ、失意のうちに命を失った。そして気づけば時間は巻きもどる。 これはネアモネが幸せをつかもうと必死に生きる話

平凡なる側室は陛下の愛は求めていない

かぐや
恋愛
小国の王女と帝国の主上との結婚式は恙なく終わり、王女は側室として後宮に住まうことになった。 そこで帝は言う。「俺に愛を求めるな」と。 だが側室は自他共に認める平凡で、はなからそんなものは求めていない。 側室が求めているのは、自由と安然のみであった。 そんな側室が周囲を巻き込んで自分の自由を求め、その過程でうっかり陛下にも溺愛されるお話。

後悔はなんだった?

木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。 「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」 怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。 何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。 お嬢様? 私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。 結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。 私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。 その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの? 疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。 主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。

夫に捨てられた私は冷酷公爵と再婚しました

香木陽灯(旧:香木あかり)
恋愛
 伯爵夫人のマリアーヌは「夜を共に過ごす気にならない」と突然夫に告げられ、わずか五ヶ月で離縁することとなる。  これまで女癖の悪い夫に何度も不倫されても、役立たずと貶されても、文句ひとつ言わず彼を支えてきた。だがその苦労は報われることはなかった。  実家に帰っても父から不当な扱いを受けるマリアーヌ。気分転換に繰り出した街で倒れていた貴族の男性と出会い、彼を助ける。 「離縁したばかり? それは相手の見る目がなかっただけだ。良かったじゃないか。君はもう自由だ」 「自由……」  もう自由なのだとマリアーヌが気づいた矢先、両親と元夫の策略によって再婚を強いられる。相手は婚約者が逃げ出すことで有名な冷酷公爵だった。  ところが冷酷公爵と会ってみると、以前助けた男性だったのだ。  再婚を受け入れたマリアーヌは、公爵と少しずつ仲良くなっていく。  ところが公爵は王命を受け内密に仕事をしているようで……。  一方の元夫は、財政難に陥っていた。 「頼む、助けてくれ! お前は俺に恩があるだろう?」  元夫の悲痛な叫びに、マリアーヌはにっこりと微笑んだ。 「なぜかしら? 貴方を助ける気になりませんの」 ※ふんわり設定です

王子は真実の愛に目覚めたそうです

mios
恋愛
第一王子が真実の愛を見つけたため、婚約解消をした公爵令嬢は、第二王子と再度婚約をする。 第二王子のルーカスの初恋は、彼女だった。

処理中です...