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第20章(4)マオside
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しおりを挟む「ふぅ、これでひと段落だ。
マオ君、新年の気分も味わえないままずっと付き合わせてすまなかったね。疲れただろう?」
「いえ、これくらい平気です。
何か僕に出来る事があれば何でもお申し付け下さい」
1月の半ばーー。
いつの間にか、新しい年になっていた。
でも新年だからと言って浸っている暇なんて全くなくて、僕はずっとハンク様に付いて仕事に励んでいた。
婿として、暫く働けないミネアさんの代わりに少しでも早くなれるように……。
アランの下で働くのを辞めて、会社も住む場所も移った。去年の12月、ミネアさんの妊娠をきっかけに変わり始めた僕の生活は、これからますます変わっていく事だろう。
先方の都合で急遽今日契約の話をする事になったのはかなり焦ったけど、上手くいって本当に良かった。
「うんうん、頼もしいな。
まるで以前のマオ君に戻ったみたいで嬉しいよ。これからもよろしく頼むね」
「っ……はい」
片付けをしている僕の肩をポンポンッと叩くと、上機嫌のハンク様は応接間を出て行った。
扉がパタンッと閉まりようやく一人きりになれた空間にホッとして、僕はため息を吐きながら叩かれた肩に触れた。
「やっぱり、相手から触れられた瞬間の感情を読み取らないようにするのは難しいな……」
突如僕の中に目覚めた、不思議な能力。
触れ合った瞬間にその時の相手の感情が分かるのは、上手く使えば便利だったが同時に不便な面もたくさんあった。
僕の一族には変わった能力を持って生まれる人が稀にいるんだって、ディアスから聞いた。
でもその能力は人それぞれで、たくさん持つ人もいれば一つしかない人もいる。強い人もいれば弱い人もいる……。謎で未知数な能力。
目覚めた当初は、触れ合えばその人物の全てが僕の意志とは関係なしに流れ込んできてしまって……。つまり、聞きたくない、知りたくもない事まで分かってしまって辛かった。
今では何とか、自分から触れる時は制御出来るようになったけど、相手から触れられた際の感情を防ぐのは難しい。
だから、さっきも分かってしまった。
『やれやれ、ようやく使えるようになってきたな。
これくらい熟してもらわなければ婿として困るわ』
肩を叩かれた瞬間、表面上は笑顔だったハンク様はそう思っていた。
「……もっともっと、頑張らなきゃ」
人の表面からは分からない内面を知られる事は傷付く事や辛い事も多かったけど、僕はこの能力のお陰で仕事が出来るようになった。
相手が思ってる事、望みや願望、不安や不満。それが分かるだけで、話し合いや取り引きがとてもスムーズに行える。
そして、僕はこの能力があったから……ミネアさんの命を救う事が出来た。
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