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第20章(2)アランside

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***

そして、オレ達は一緒になる事を決めた。
跡継ぎ争いの件で傾きかけている彼女の祖父の会社を支えてやる、と……。
互いの利益の為だ、と持ちかけて……。


仕事に戻る別れ際。
きっと普通の恋人や婚約者ならば、口付けるのだろう。


「……アカリ様」

「!っ……」

だが。オレの手が頬に触れれば、アカリ様はビクッとして更に表情を強張らせる。
オレが彼女にしてやれる事は少ない。だから、オレも彼女に大きな事は望まない。

オレの望みは、君らしく居てほしいーー。
ただ、それだけだ。

「そんなツラで見るな、ブス」

「!っ……なっ!」

オレが手を添えていた頬に指を立て、そのままむぎゅっと摘むとアカリ様はムッとした表情で見上げてくる。

「どうせブスですよ!
さっさとお綺麗な令嬢様達に新年のご挨拶に行ってこればいいじゃない!」

オレの手を払い除け、そう言い返してくる強気な態度。
笑顔にしてやる事は出来ないが、先程の沈んだ表情よりはずっと良い。


そう思って、ついつい笑みが溢れてしまう。
オレはそんな表情を見られないよう口元を片手で覆い、フイッと背を向けた。

「じゃあな、また連絡する。
ポケ電、無視するなよ」

彼女の為なら、嫌な男で構わなかった。


お前より綺麗な令嬢なんていないーー。

決して言えない言葉を胸に秘めて、オレは車に乗り込み仕事に戻った。
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